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25thフォーラム・イン・ドージン開催後記
「温故知新のミトコンドリア学− Revisiting Mitochondriology−」

 25 回目の節目となる本年度のフォーラム・イン・ドージンは、ミトコンドリアをメインテーマとして、11 月 14 日熊本市で開催された。ミトコンドリアは古くから細胞の酸素呼吸による ATP 産生を司る細胞内小器官として広く知られているが、近年、従来知られていなかった様々な機能が次々と明らかにされ、ミトコンドリア研究の新たな展開が注目されるようになった。そこで、ミトコンドリア学(Mitochondriology)を新たな視点で問いなおしてみよう(Revisiting)という企画が今回のフォーラムの主題である。つまり、古くからの知識を整理し直し(温故)、新たな体系を知る(知新)という訳である。最近ミトコンドリアといえば、活性酸素や酸化ストレスの関連で何かと話題になっていることも多く、予約参加者以外に当日参加者数も予想以上であった。全体として例年になく多数の参加者で会場が狭く感じられるほどであった。会場からの質問・コメントも学生から現役の研究者まで幅広い層から出され、活発な討論が展開された。

 演者の先生方は、新進気鋭の若手研究者やミトコンドリア学を牽引する現役の研究者で、いずれの講演も分かりやすい中に、目を見張るばかりの最新の結果が盛り込まれていて、フォーラム全体としてはまとまりのある引き締まった内容であった。

 講演は、筑波大学の中田和人先生による基調講演を兼ねたプレゼンテーションで幕を開けた。ご自身のミトコンドリアセントラルドグマと核セントラルドグマから成る細胞内の二重支配理論を展開され、ミトコンドリア DNA 変異による病態について述べられた。今村博臣先生(京都大学)は巧妙に設計・開発された ATP イメージング用バイオセンサー分子を用いて、細胞内画分とくにミトコンドリア内の ATP レベルがその機能・作用に応じて時間空間的に変動することを示された。ランチブレークの後、小柴琢己先生(九州大学)が午後のセッションの最初の講演をされた。ミトコンドリアは RNA ウイルスに対する宿主の自然免疫に密接に関与することを、宿主細胞に感染したウイルスによって活性化される細胞内シグナル伝達経路によって詳しく説明された。岡敏彦先生(立教大学)は、ミトコンドリアの機能がどのような形態によって裏付けられているかを、内膜の形態(変動)とくにクリステ構造の形成・維持に基づいて形態学的・細胞生理学的に示された。江崎雅俊先生(熊本大学)は、ご自身の研究テーマである AAA シャペロン分子種の一つがミトコンドリアの形態と機能を制御していることを述べられた。最後の演者の岡本浩二先生(大阪大学)は、ミトコンドリアの品質管理システムについて、ミトコンドリアの選択的分解過程(マイトファジー)の作動原理を中心に講演された。
 同仁化学の関係部署の若手の人々による支援作業によってフォーラムの進行はスムーズに行われた。講演後に催されたミキサーでは、演者/座長の先生方・参加者・同仁化学関係者の相互の交流がなごやかに行われ、盛会裡にフォーラムを終えることができた。(三浦洌)

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