第9回フォーラム・イン・ドージン開催報告

「しのびよる化学汚染と生態系」
−外因性内分泌撹乱物質(環境ホルモン)から地球温暖化まで−

 各地から雪の便りが聞かれる中、「第9回フォーラム・イン・ドージン」が12月4日に開催されました。今年は熊本市の熊本テルサをメイン会場として、前年に引き続き東京会場のタケダ本町ビルにTV会議システムによる中継を行いました。

 今回は熊本大学医学部 前田浩教授、長崎大学環境科学部 有薗幸司助教授にお世話いただき「しのびよる化学汚染と生態系」をテーマとし、副題を−外因性内分泌撹乱物質(環境ホルモン)から地球温暖化まで−として、環境問題に関する幅広い講演・最先端の研究内容を総勢12名の先生方にお話しいただいた。今話題の環境問題に関するテーマだけあって、熊本会場で約350名、東京会場ではほぼ定員の50名の参加者があった。

 講演プログラムは以下の通り。(敬省略)

○村松 秀(NHK科学番組部)
 「番組から見た日本の環境ホルモン研究の動向」
○吉成 正(ニューヨーク州立大学)
 「グローバルウォーミングと大気組成」
○田辺信介(愛媛大学農学部)
 「残留性有機汚染物質の生態影響」
○長山淳哉(九州大学医療技術短期大学部)
 「ダイオキシン類と農薬:ヒトへの影響の可能性」
○大嶋雄治(九州大学農学部)
 「内分泌撹乱が魚類の繁殖に及ぼす影響」
○堀口敏宏(国立環境研究所)
 「有機スズ化合物が誘導する海産巻貝類のインポセックス」
○大村 実(九州大学医学部)
 「トリブチルスズは哺乳動物にとっても内分泌撹乱物質か?」
○原 彰彦(北海道大学水産学部)
 「外因性内分泌撹乱物質:生体応答(2)
  (マーカーとしてのビテロジェニン)」
○高田秀重(東京農工大学農学部)
 「外因性内分泌撹乱物質:環境計測」
○山内兄人(早稲田大学人間科学部)
 「性行動と性分化」
○岩本晃明(聖マリアンナ医科大学泌尿器科)
 「ヒトへの影響−精子への影響−」
○井口泰泉(横浜市立大学理学部)
 「外因性内分泌撹乱物質:生体応答(実験内分泌学の見地から)」

 セッションIは基調講演として、NHK科学番組部の村松氏が「環境ホルモン」という言葉の誕生秘話から、ここ数年のTV番組を通じての環境ホルモン研究の移り変わりについて紹介した。

 セッションIIではグローバル環境汚染をテーマに、まずニューヨーク州立大学の吉成先生が地球温暖化に関し、その原因気体と現状、および今後の温室効果ガスを抑制する対策に関し分かりやすく解説した。愛媛大学の田辺先生は海洋汚染したPCBやPCDDなどの有機塩素化合物が生態、特に海棲哺乳動物へ与える特異な汚染について、九州大学の長山先生はダイオキシン類や農薬がヒトに与える影響、特に母乳による乳幼児への影響の可能性に関し報告した。

 セッションIIIでは外因性内分泌撹乱物質をテーマとした講演が行われた。九州大学の大嶋先生は環境ホルモンが魚類に及ぼす影響について、国立環境研究所の堀口先生は有機スズが引き起こす雌雄異常について巻貝を例に紹介し、九州大学の大村先生は有機スズ化合物が哺乳動物に与える影響について講演した。さらに北海道大学の原先生は雌に特異的に見られる蛋白質「ビテロジェニン」に注目した内分泌撹乱物質汚染の検出について、東京農工大学の高田先生はアルキルフェノール類の影響および、その検出について実際の河川のデータなどを基に紹介した。

 セッションIVは環境変化と人への影響をテーマとして、早稲田大学の山内先生が環境ホルモンが性行動に及ぼす影響に関して講演した。聖マリアンナ医科大学の岩本先生はここ数年話題となっている男性の精子減少に関し、内分泌撹乱物質がどのように関わっているのか、また、実際に影響を与えているのかについて報告した。最後に横浜市立大学の井口先生が総括的な内容で、内分泌撹乱物質に関する報告を行った。

 セッションVでは村松氏の総合司会により、講演者ならびに世話人も含めたパネルディスカッションが行われた。一般の主婦からも質問が出るなど活発な質疑応答がなされ、予定時間を大きく超過する程で、その後のミキサーへと会場を移し、引き続き討議が行なわれた。主催者としては、ご講演いただいた先生方に十分な講演時間をとることが出来ずご迷惑をおかけしたが、通常であれば一日では得られない内容の詰まった講演会であったと感じている。また、今回のフォーラムは東京会場でもより鮮明な画像を見ていただくため、コンピュータ画像を用いたテレビ会議システムで行った。ご講演いただいた先生方のご協力に感謝します。

 なお、本講演要旨集の残部が幾分ございますのでご希望の方は弊社マーケティング部までご連絡ください。