ライブセルイメージング技術講座 4

〜コントラストをあげる〜

浜松医科大学光量子医学研究センター
櫻井 孝司

浜松医科大学・21世紀COEプログラム
「メディカルホトニクス」の活動として掲載

1.はじめに

 雑誌の表紙には一目で魅かれるような美しい画像が選ばれる。 一体どのような絵を印象的と感じるのであろうか?模様・配色・モ チーフなどもあるだろうが、ピントの合ったコントラストの高い 画像であることが多い。ライブセルイメージング研究においても、 光信号はより大きく、背景光はより低くした画像の方が良い結果 と判断される。つまり光学的な効率が高いほど得られる情報量が 多く、学術的に価値のある画像となる。前回はピントの意味につ いてレンズの基礎から解説したが、今回は取得する画像の質まで こだわってみたい。蛍光のような比較的暗い対象を扱う場合を主 体にして、蛍光信号を高めながらノイズを下げて、高コントラス ト画像を取得するための基本的な技術を紹介する。

2.S/N比とコントラスト

 “より細かく”、“より早く”、“より明るく” 細胞のライブ画像を録りたい。これらの要望は空間分解能(spatial resolution)、時間分解能(temporal resolution)、S/N比(signal/noise ratio)を高めれば実現できる。三者の間ではそれぞれ相補的な関係があり、 明るさが向上すれば他の二つもあがる。ところで明るさとは何で 規定されるか?単純に強い光を適用すれば良いのだろうか?そこ でS/N比とコントラストについて考えてみる。

2.1 S/N比

 S/N比は信号とノイズの比率で音質や画質の評価に利用され、 単位はdBであらわされる1)。S/N比が大きいほど高音質・高画質 になる。高画質を得るためには、信号を上げてノイズを下げれば よい。顕微鏡などの観察系は信号にもっとも影響を与える因子で あり、特に光の当て方、ピントの合わせ方が重要である。他方、ビ デオカメラなどの撮像系はノイズに多く関与する因子であり、ノ イズを軽減しつつ信号を上げたい。フォトンレベルのような極微 弱光検出では光信号の増幅ができないため、照明光や検出器由来のノイズをいかに下げるかが大事になる。

2.2 コントラスト

 コントラストはCRTモニタ上などにおける表示画素の暗部から 明部までの幅(許容量)のことである1)。 コントラストが上がると黒い部分はより黒く、白い部分はより白くなり、全体では硬調な 表現になる。逆にコントラストが下がると暗部から明部までの幅 が広くなり、軟調な表現になる。コントラストを大きく変えても 画像自体の信号量やノイズ量は一定であるが、調整効果はS/N比 に依存する。S/N比の大きい画像ほど情報を多く抽出でき、人為 的に美しく見せるときにも加工しやすい。

2.3 S/N比をあげるには?

 光源のパワーは必要量を安定的に扱い、対象からの光信号はロ スなく捉える。これらはイメージングに限らず全ての光学分野で 共通の留意点である。光の利用効率(efficiency)をあげることが S/N比向上の第一要件になり、これを意識するだけで相当良い画 像を得られるはずである。具体的にどうしたら良いか?光の当て 方と録り方に分けて次項に続ける。

3.光の当て方

3.1 ピントを合わせる

 ピント合わせについては前回の解説と重複する部分もあるが、 信号量を上げるための最重要項目であるので再度簡単に触れる。 信号を向上するためのピント合わせには2つの意味がある。1 つは対物レンズの前側焦点(front focus)を見たい標本対象に合わせることであり、もう一方は光源を対物レンズ後側焦点面(back focal plane)へ適切に入射することである。

@通常のピント合わせ;観察対象の輝度が最大となるようにする、 または関心領域(region of interest, ROI)のエッジが明瞭になるようにするとよい。ROIの大きさ(厚さ)とレンズの焦点 深度の関係に留意してほしい。焦点深度は対物レンズの開口数 (NA)と波長(λ)からλ/NA2に比例する。従って、比較的 小さな対象から信号を効率よく得る場合はできるだけ高いNA のレンズと短い波長を適用したほうがよい(Fig. 1)。補正環つきのレンズであれば適切に調整する。低いNAのレンズを用い る利点もある。例えばピントのズレに対して輝度の変化を小さ くしたい場合であり、動きや振動の大きな対象を追跡する場合 に低NAレンズが有利になる。ピントを一定に保つことは常識 のことに思えるが意外と難しい。高NAのレンズの焦点深度は1 ミクロン前後になるが、この程度の深度ではわずか数度の温度 変化による熱膨張で大きくずれてしまう。フォーカスのシフト 調整部において発生する固有の滑り(ドリフト)も影響大であ る。このようなピントズレを補正する装置が最近になって主要 顕微鏡メーカで装備されるようになった*1, 2)。ピントの自動補正により信号ロスを抑えることができるだけでなく、長時間の 安定記録も手軽になってきた。

A対物レンズに入射する光のピント合わせ;対物レンズの瞳にお ける光の集光状態に留意する。現在汎用されている無限遠光学 系顕微鏡では、照明光は視野か瞳のどちらかに集中している。落 射照明のときは光源のフィラメントやアーク像を瞳に映すよう に調整し、クリティカル(スポット)照明のときは瞳には平行 光束を入射させる。光をできるだけ一点に集中させるためには、 輝点が安定している光源と収差の少ない集光光学系を採用する。 好ましくない具体例を1つあげる。それは新タイプの対物レン ズと旧タイプの照明装置を組み合わせることである。旧タイプ 投光管では可視域でさえ十分な色補正がなされていないことが ある。新旧混合で使用する場合は対物レンズの性能が十分に発 揮できるかどうか色補正を中心に収差をチェックいただきたい。

3.2 余分な光を排除する

 強い光を標本に当てれば信号は簡単にあげるわけだが、光と色 素の反応や、光パワーの集中によって標本がダメージを受けるの で、利用できる光量のパワーには限界がある。できるだけ弱い光 をROIだけにあてたほうがよく、必要ない光はできるだけ排除し たい。

@共焦点法(confocal microscope);発明から50年であり2)、S/ N比向上が効率よく達成できる手法である3) 。スポット位置を制御することで標本のROIだけに光照射できる。光検出ではピン ホール効果により、ピントの合った光だけを集めることができ ノイズ(暈け)を抑えている。多光子法(multi-photon excitation, MPE)3)では色素の励起自体を局所に集中でき、励起光波 長が長いので標本への光透過性が高い。色分散の少ないレンズ や高出力長波長レーザーが登場してきており*4、MPE法も随分手軽となってきている。

A全反射法(total internal reflection)4);屈折率の異なる界面に発生する薄い光の層領域にエネルギーを集中できる。 ガラスと接着している部分、たとえば細胞膜領域だけを観察する場合は 最適な照明法となる。光パワーは全反射界面から離れるにした がって急激に減衰し、背景光がほとんどなくなる。従って一分 子の観察がノイズのない高S/N比検出ができる。全反射法をさ らに発展させた方法として薄層光法(thin-layered illumination)5)がある。スリットなどを用いて出射光を幅数ミ クロン程度まで狭めることで、迷光成分の軽減ができ背景光が 下がる(Fig. 2)。薄層光を界面に対して斜めに進行させるようにしたところ、カバーガラス表面から1ミクロン遠ざかった位 置にある単一蛍光分子の検出が可能であった。

3.3 迷光を抑え透過率は上げる

 迷光(stray light)は乱反射や裏面反射による散乱光であり、悪条件が重なると10%以上の背景光上昇になる。原因となる光学 パーツはほぼ全部といっていい。光酸化、サビやカビへの対策が 十分に施されていないので、普通に使用していても自然に劣化す る。対物レンズ、カメラ用チューブレンズと蛍光用フィルタ類の 劣化は影響が大きいので、性能を定期チェックしてほしい。

 通常の蛍光用キューブは干渉フィルタ2枚とダイクロイックミ ラー1枚から構成される。分解など滅多にしないだろうが、次に 留意点をあげるのでチェックしてみてほしい。

@波長特性;透過率や反射率をデータシート参照するなどして調 べてほしい。励起光と蛍光は高透過率で、不要な帯域がきちん とカットできるか確認する。ピークの立ち上がりが急峻でかつ ピーク性能が安定したフィルタ(Fig. 3a)やビームスプリッタ (Fig. 3b)が登場している。高性能フィルタはDAPI、FITC、Texas Redのような汎用色素の多重観察をする場合に威力が大きい(Fig. 3c)

Aコーティング;光選択膜と反射防止(anti-reflection, AR)膜の2種から成る。光選択用の薄膜コーティングが格段に進歩しイオ ンビーム蒸着法によるハードコート(hard-coating, HC)*3)と呼ばれる手法がある。従来法よりシンプルな干渉膜構造であり、 透過率などの波長特性が優れている(Fig. 3)。裏面反射によるゴースト発生の対策としてはダイクロイックミラーの裏面への ARコート処理がある。良いフィルタ類を採用しても設置に注意 してほしい。誘電体多層膜などのコート面を光源側に向けない と散乱が増大する。

B光吸収帯;ダイクロイックミラーで光をわけて反射成分を励起 用に用いる場合、不要光をアルマイトなどで吸収することで蛍 光キューブ内の乱反射を少なくすることができる。

3.4 光源もこだわる

 S/N比は光源でも左右されるので、次の点に留意してほしい。

@必要な輝線のパワーが十分で調光が容易

Aパワーが安定

B強度分布が安定

連続波レーザー光(CW laser)が条件をよく満たし、シングル横モードTEM00で安価な固体式レーザーが利用できるようになっ てきた*4)。レーザー光の欠点は干渉縞や回折格子発生だが、可干 渉性(coherence)を軽減する対策を施すとよい。HIDなど高圧 水銀灯は紫外領域を用いるときは明らかに有用だが、輝度変化率 や光発生点が不安定と欠点も多い。可視光領域による落射照明用 で大きな光パワーを必要としない場合は、ハロゲン光の採用をす すめる。オリンパスからはハロゲンとHID両用のランプハウスが でている。レーザーとランプ光両方の長所を持ち合わせた光源と して、高輝度LED(light emitting diode)*5)の普及が進んでいる。LEDは調光が容易、長時間耐用、熱発生が少なく、小型化が容易、 しかも安価と長所が多い。ニコンの病理標本観察システム(Cool Scope)やオリンパス小型倒立式顕微鏡(MIC-D)など透過型シ ステム顕微鏡で採用されている。

4.光の録り方

4.1 CCDカメラをつかう

 光センサによる検出の流れは、光→電子→増倍→転送→電流変 換→データとなる。光検出器には光電子増倍管のような受光素子 とCCD(charge-coupled device)カメラのような光/LSI複合素子の2種類があり、両者の違いは検出チャンネル数である。 CCDカメラは縦横それぞれで128〜1,000チャネルが標準的でありイ メージ形成に優れる。微弱光検出のための感度という点で光電子 増倍管のほうが優れていたが、CCDカメラの飛躍的進歩により両 者の差はほとんどなくなってきている。CCDカメラは機種によっ て差があるので注意して選択してほしい。

4.2 量子効率の高いCCDカメラを選ぶ

 CCDカメラにおける信号は次式で規定される通り、量子効率 (quamtum efficiency, QE)、感度と入射フォトン数の積となる(1式)。

 信号=量子効率X感度X入射フォトン数 ・・・・・・・・(1)

@量子効率は光電面で光が電子に変わる効率(%、mA/W)のこ とである。波長や電子検出の電極配置(前面照射;front- illuminated、背面照射式;back-illuminated)によって効率が ことなる(Fig. 4)。背面照射型はウエルにたまった電子を検出する電極が光電面の反対側にあり、入射光を効率よく検出でき る。そのため量子効率が飛躍的に上がり、500 nm付近では90%以上まで達成できている。

A感度(ゲイン)は電子と電流比の調整できまる。極端な話、感 度は何倍でもあげることができるが、信号といっしょにノイズも一緒に増えるのでS/N比が上がるわけではない。

B入射フォトン数はCCDサイズと関係があり、一般にCCDのサ イズが大きく、画素のサイズが大きいほうが有利である。また 転送方式は受光面における有効面積の目安になり、フレームト ランスファ方式が有利である。

4.3 ノイズを減らす

 CCDカメラにおけるノイズは主に読出しノイズ(reading noise, Nr)、暗電流(dark current, Nd)、ショットノイズ(shot noise, Ns)があり(Fig. 5)、全ノイズは2式で表される。

 全ノイズ=(Nr2+Nd2+Ns21/2・・・・・・・・・・・・(2)

@Nr;ランダムノイズとも呼ばれ、そのノイズ量は感度に比例、 温度の影響少、露光時間と無関係である。Nrの値からダイナ ミックレンジ(dynamic range, D-range)や感度が概算できる。D-rangeは入射できる光強度の範囲(ビット数)を規定し ており、CCDのウエルサイズとNrの比率できまる。ウエルサ イズとは1つの素子において保持できる電子の数である。要す るにNrが小さければD-rangeが大きくとれるので、感度も上 げやすい。複数の画素を1つと見立てて検出する方法をビニン グ(binning)という。ビニングによりNrは減少し、信号が上 がる。

ANd;熱ノイズともいわれ、そのノイズ量は感度にやや比例、温 度の影響大、露光時間に比例する。微弱光検出で高感度CCDカ メラを用いるときは最大ノイズ源となるので、液体窒素やペル チェ素子で冷却してノイズ量を抑制する必要がある。−90度付 近に冷却すれば信号に対して10-4程度にすることができ、長時 間露光でもノイズが目立たなくできる。−90度以下に冷やすと 量子効率が下がり始めるので注意が必要である。

BNs;シリコン光電面で発生し、一般に光電面に入射する光量の 平方根になる。

4.4 I.I.とEMCCDカメラの活用へ

 高S/N比検出のためのカメラ性能とは、1および2式から次の 5点となる。

@量子効率が高い(波長特性が安定している)

ANdが小さい(十分に冷却できる)

BD-rangeが大きい(Nrが小さい)

CCCD素子が大きい(インチ数に比べて画素数が少ない)

D感度が安定している(ゲインに直線性がある)

 CCDカメラで微弱光を検出するときはイメージインテンシファ イア(image intensifier, I.I.)と組合わせる方法が標準的である6)。 I.I.はイメージ増倍管であり、第三世代と通称される現行機では光 電面・MCP(multi channel plate)・蛍光面の構造をとる。光電面(GaAsP)における量子効率が60%まで上がり、MCP部でも 表面性質・解像度向上・パルス高速制御化など改良が進んでいる (浜松ホトニクスC8600)*6)。I.I.で信号を増幅し、冷却式CCD カメラでノイズを減らすことで、高S/N比の画像取得が達成でき る。近年、イメージ増倍・低ノイズの両機能を持ち合わせた電子 増倍式CCD(Electron-multiplying CCD, EM-CCD)が登場した*6, 7, 8)。CCD検出面における電子増倍率(EM gain, EMG)をあげることができ、iXon(ANDOR)*8) では−70度までのペルチェ冷却により「砂の嵐」が鎮まったクリアな背景で一分子蛍光 画像を取得することができる(Fig. 6 & 7)7, 8)。高速イメージングもEM-CCDカメラの特色であり、Nipkow式共焦点法9)と組み合わせることで相乗効果がある。リアルタイム全焦点画像取得 装置(横河電機CSULS-1)としてシステム化されている(最速 1,000フレーム/秒)。

5.画質改善と画像復元

 第4項までに述べてきたとおり、光の使い方と捉え方でS/N比 のほとんどが決まる。では記録したあと、画像だけからS/N比を 上げることは不可能なのだろうか?状況によるが汎用画像処理ソ フト*10)で解決できることもあるので、ごく簡単に紹介する。

5.1 コントラストを改善する

 単なるコントラスト強調だけではS/N比アップの効果は低い。 画質をより改善できる方法としていくつか紹介する(Fig. 8)

@積算(accumulation);画像の輝度を積算して信号値を高める。 ノイズレベルも増えるが、相対的に滑らかな画像となる。ビッ ト数の高いカメラのほうが飽和(saturation)しにくい。露光時 間を増やしたこととほぼ同じ効果がある。

Aアベレージング(averaging);画像を積算してから平均化する ことで、輝度を変えずにもともと存在するものは強調され、ラ ンダムノイズは軽減される。対象の動きが平均化速度よりも早 いと残像が発生する。

Bエッジ検出;エッジとはROIの外を縁取る線で,エッジ検出に より物体の抽出やパターン認識が容易になる。輝度変化の2次 微分によって検出され、ラプラシアンフィルタとも呼ばれる。

5.2 ノイズを除去する

 画像処理の上ではノイズには規則性のあるものと不規則なもの の2種類に分類でき、それぞれに適した手法がある。成功すれば ノイズの除去によりS/N比は相対的にあがる。失敗して画質改悪 となってしまう場合もある。

@Mean Filter;正規分布ノイズを取り除くのに適した論理フィル タ。あるROIに集中したスポットノイズの除去に効果的。

A高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT);周波数解析を行うことで、特定周波数ノイズを除去することができる。縞 や網目模様の除去などに効果的。

BMedian Filter;ランダムノイズを取り除くのに適した非線形式論理フィルタ。ROIとその近傍領域の輝度値を並べ替えて中央 値を出力することで、ごま塩ノイズの除去に効果的。

5.3 ボケを除去する

 レンズで光を集光するとき完全な一点に絞り込めるわけではな い。対物レンズのNAが小さいほど点の絞りこみが低下し、暈け が大きくなる。NAに依存した暈けを予測したアルゴリズムを用い て、理想的な光学条件で取得した画像を人工的に求めることがで き、総称としてデコンボリューション法と呼ばれる。

@No neighbor;2次元デコンボリューション法で、1枚の画像に おけるXY平面のボケを改善できる。

AMulti neighbor;2次元デコンボリューション法で、Z軸方向の異なる複数枚の画像からピントぼけを演算しXY平面のボケや ノイズを抑制する。

BConstrained interactive;3次元デコンボリューション法で、Z軸方向の異なる複数枚の画像から点拡がり関数(point spread function, PSF)を求めてピントぼけを改善し、バーチャルセクショニング画像を取得することができる。

6.S/N比を評価する

6.1 スタンダード画像を取得する

 装置の要素や構成に留意しただけでは、必ずしも見えの良い画 像が得られるとは限らず、得られる画像を見ながら最終調整をす る必要がある。画質を比較するためには、標準標本として蛍光ビー ズの適用が推奨される。市販の蛍光ビーズはほとんどの励起波長 に対応しており、粒子径も50 nm〜数十 μmまである。蛍光ビーズは褪色がほとんど起きないので、蛍光強度の定量化に汎用され る。

6.2 画像の評価例

 実際の画質評価実験は蛍光ビーズを(コーティング剤を用いて) ガラスに接着させて観察するとよい。通常の蛍光顕微鏡を用いた 観察なら直径1 μm程度のサイズ適用が推奨される。この程度の大きさになると、わずかな光学条件の変化でも画質から判断しやす くなる。より小さな粒子を用いた測定が必要な場合(一分子イメージング用)には、量子ドット(quantum dot)*11)が有効である。画質の定量には、ラインプロファイル法による輝度分布解析や FFT法による周波数解析が用いられる。Z方向の空間分解能は、 フォーカスを変えながら輝度値をプロットし、50%輝度における プロットの幅(半値幅)から定量できる(Fig. 1参照)

7.おわりに

 今回は美しい蛍光画像の取得にこだわり、S/N比をあげる基礎 技術について光の使い方や録り方の2方向から紹介した。「注意点 が多い」という印象を抱かれたかもしれないが、対物レンズやカ メラの選択が適切であれば、妥当な画像を得られるはずである。ま た用いるイメージング装置の“スタンダード画像”を取得してお けば、機器性能の変化に鋭敏となるだろうし、蛍光画像における 定量精度も高まる。実際のイメージング研究に則してS/N比を深 く考察すると、最も大事な点が未解説のまま残っている。それは 標本の調製や染色法である。そこで次回からは細胞イメージング にピントを合わせる。

謝辞

本稿執筆において、株式会社ニコン・陸川克二氏、株式会社オプ トライン・岩井亮一氏、アンドールテクノロジーリミテッド・谷 治正敏氏から情報提供ならびに助言をいただいた。

参考文献

1) 光と光の記録, 産業開発機構 (2003).

2) Minsky M: U.S. Patent, No. 3013467 (1961).

3) 共焦点顕微鏡活用プロトコル, 羊土社 (2003).

4) バイオ高性能機器・新技術利用マニュアル, 蛋白質核酸酵素, 49, 共立出版(2004).

5) T. Sakurai, Y. Wakazono Y, S. Yamamoto, S. Terakawa, Proc.SPIE., 5322, 108 (2004).

6) in vivoで見るイメージング,バイオテクノロジージャーナル, 5,羊土社 (2005).

7) DJ. Denvir, CG. Coates, Proc. SPIE., 4626, 502 (2002).

8) CG. Coates, DJ. Denvir, NG. McHale, KD. Thornbury, MA. Hollywood, J. Biomed. Opt., 9, 1244 (2004).

9) T. Tanaami, S. Otsuki, N. Tomosada, Y. Kosugi, M. Shimizu, H. Ishida, Appl. Opt., 41, 4704 (2002).

製品情報HP;

*1) 潟jコン http://www.nikon-instruments.jp/jpn/products/list/model1.aspx

*2) オリンパス梶@http://www.olympus.co.jp/jp/lisg/bio-micro/

*3) 潟Iプトライン http://www.opto-line.co.jp/jp/index.htm

*4) 鞄本レーザー http://www.japanlaser.co.jp/

*5) 日亜化学工業梶@http://www.nichia.co.jp/jp/product/led_top.html

*6) 浜松ホトニクス梶@http://www.hpk.co.jp/Jpn/products/SYS/BioJ.htm

*7) 鞄本ローパー http://www.roper.co.jp/

*8) アンドールテクノロジーリミテッド http://www.andor-tech.com/

* 9) 横河電機梶@http://www.yokogawa.co.jp/SCANNER/

*10) 潟\ルーションシステムズ http://www.solution-systems.com/

*11) 住商バイオサイエンス梶@http://www.scbio.co.jp/products/quantumdot/index.html





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