金属酸化物表面処理用ホスホン酸誘導体
<特長> |
有機シラン(シランカップリング剤)に比べ、
・試薬の安定性が高い
・高密度な SAM が形成される
・安定な SAM が形成される
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ホスホン酸誘導体は、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコン酸化膜(SiO2)、マイカ、ステンレス(SS316L)、ニチノール、ヒドロキシアパタイト、ZnO、ITO 等の種々金属酸化物の表面処理・改質剤として、近年、注目されています。
金属酸化物の表面処理には古くから有機シラン系の自己組織化単分子膜(SAM)が用いられていますが、安定性が低く、試薬同士の重合が起こるなど必ずしも使い易いものではありませんでした。ホスホン酸誘導体はそれ自身は非常に安定な化合物であるにもかかわらず、有機シラン同様に金属酸化物表面に SAM を形成します。また、ホスホン酸誘導体は有機シランに比べ、密度が高く安定な SAM を形成すると報告されています。
Schwartz らは、Ti 酸化膜上に 11-HUPA の SAM を形成して蛍光分子を修飾し、ホスホン酸 SAM が有機シランよりも 4 倍高密度で、アルカリ溶液中で安定性が高いことを示しています。有機シランが Ti 酸化膜上に存在する OH 基としか反応できないのに対し、ホスホン酸誘導体は基板にプロトンを供給することで OH を産生し、高密度に結合すると考えられています。
<ホスホン酸SAM 作製例> |
1.基板を界面活性剤水溶液(0.5%SDS)に浸漬し、20 分間超音波洗浄する。
2.純水、アセトン、エタノールで順次、20 分間超音波洗浄する*1)。
3.1 mmol/l ホスホン酸誘導体のエタノール溶液に 1 時間浸漬する。
4.エタノールで洗浄後、窒素で風乾する。
5.120℃ で 1 時間加熱処理する*2)。
*1)基板の洗浄は、酸素/プラズマ、UV/オゾン処理などで代替できる。
*2)加熱処理により基板の水酸基とホスホン酸の脱水縮合が進み、SAM が安定化する。
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品名 |
容量 |
希望納入価格(¥) |
メーカーコード |
11-AUPA |
10 mg |
13,800 |
A517 |
100 mg |
38,200 |
A517 |
10-CDPA |
10 mg |
11,000 |
C490 |
100 mg |
30,000 |
C490 |
FHPA |
10 mg |
9,800 |
F340 |
100 mg |
28,000 |
F340 |
FOPA |
10 mg |
9,800 |
F329 |
100 mg |
28,000 |
F329 |
FDPA |
10 mg |
13,000 |
F330 |
100 mg |
36,000 |
F330 |
M-EG3-UPA |
10 mg |
13,800 |
M457 |
100 mg |
38,200 |
M457 |
11-NUPA |
10 mg |
11,000 |
N468 |
100 mg |
30,000 |
N468 |
11-HUPA |
10 mg |
11,000 |
H399 |
100 mg |
30,000 |
H399 |
ODPA |
10 mg |
11,000 |
O407 |
100 mg |
30,000 |
O407 |
11-PIUPA |
10 mg |
11,000 |
P463 |
100 mg |
30,000 |
P463 |
<ホスホン酸 SAM 接触角測定例>
前ページの方法で ITO 基板*3) をホスホン酸誘導体で修飾し、水の接触角を測定した例を表 1 に示します。
製品の FOPA、ODPA、M-EG3-UPA、11-HUPA、11-PIUPA、10-CDPA、11-PUPA 及び試作品の MC-PUPA、DF-PUPA、DC-PUPA の 10 種類のホスホン酸修飾 ITO 基板のそれぞれ 2 点で接触角を測定しました。
*3) ジオマテック株式会社の FLAT ITO 膜付きガラスを 20 mm × 20 mm に切断したものを使用した。
ホスホン酸 SAM の安定性は標識する基板によって変わります。
TiO2 や Al2O3 上では比較的安定性の高い SAM が形成されますが、シリコン酸化膜(SiO2)上のホスホン酸 SAM は加水分解されやすいことが知られています。Thissen らはこの安定性の低さを解決するべく、SiO2 上に Al2O3 層を形成し、その上にホスホン酸 SAM を形成して安定な皮膜を形成させることに成功しています。
<ホスホン酸 SAM 作製例: SiO2 基板に Al 層形成後、SAM 修飾>
1) シリコンウェハーを Piranha 溶液に 80℃ で 30 分浸漬する。
2) 純水で洗浄後、1 mmol/l AlCl3 水溶液に数時間浸漬する。
3) 純水で洗浄後、1 mmol/l ホスホン酸メタノール溶液に 12 時間浸漬する。メタノールで洗浄後、窒素で風乾する。
*図 2 は上記方法で作製した基板と、 AlCl3 水溶液浸漬を省いた基板上に落とした水滴の接触角の経時変化を測定した結果である。
Al 層形成をしない場合は接触角が数十分の単位で劇的に減少するのに対し、Al 層形成を行った基板では劣化が抑えられている。
<試作品> ご興味のある方は小社までお問合せ下さい
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