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GMBS  [code: G005]
CAS No. 80307-12-6
molecular weight: 280.23
spacer length: 6.9 Å
Sulfo-GMBS [code: S025]
CAS No. 185332-92-7
molecular weight: 382.28
spacer length: 6.9 Å

はじめに

クロスリンカー(架橋剤)は2つの官能基を有する試薬でその名のとおり2つの分子/構造体を結合する化合物であり、イムノアッセイに用いられる酵素と抗体の結合体の作成やタンパク質修飾等に広く用いられている。GMBSはクロスリンカーの1つであり、一級アミノ基(-NH2)と反応するNHSエステル基と、チオール基(-SH)と反応するマレイミド基を有している。例えば、ペルオキシダーゼ(POD)等の酵素のアミノ基とGMBSを反応させ、その後、SH基を有するFab’と反応させることにより、酵素標識抗体を作製することができる。その他、BSA (bovine serum albumin)やKLH (keyhole limpet hemocyanin)とGMBSを反応させ、その後SH基を持つハプテンと反応させることにより、ハプテン-キャリアタンパク質複合体を作製することも可能である。また、基板への分子の固定化にも用いられている。Sulfo-GMBSはスルホン酸基を有する活性エステル基が導入されているため、試薬を溶解するためのDMFやDMSOなど有機溶媒を用いることなく標識反応を行うことが可能である。

保存条件

0 - 5 ℃にて保存してください。

  • GMBS、Sulfo-GMBSを溶解した溶液は保存できません。用時調製でご使用ください。

必要なもの

  • マイクロピペット(10 μl, 200 μl)
  • マイクロチューブ
  • 精製用ゲルなど
  • 有機溶媒 (dimethylsulfoxideなど)
  • 反応用緩衝液(PBSなど)
  • インキュベーター

複合体の作製例

【タンパク質-細胞】

Staphylococcal enterotoxins B (SEB)Sulfo-GMBSによりマレイミド化する

  1. SEB (220 μg/220 μl, Sigma)とPBSで溶解したSulfo-GMBS (30 μl;1.5 mg/ml)を30°Cの水浴で70分間穏やかに撹拌しながら反応させる。
  2. 上記反応液を等量に分割し、フィルトレーションチューブ(Ultrafree C3 plus; Mr=10,000; Millipore製)に移し、 0.7 mlのPBSを加え、 遠心分離(130分, 3000 x g)し、過剰のSulfo-GMBSを除去する。
  3. ろ液を捨て、0.7 mlのPBSを加え、再度、遠心分離(130分, 3000 x g)する。
  4. 濃縮した反応液をPBS 0.3 mlで回収する。 (maleimide化SEB)

 

maleimideSEBと細胞(Meth A細胞)をつなぐ

  1. マイトマイシンCで処理したMeth A細胞の懸濁液(2.2×107 cells)を遠沈管に入れ、遠心分離し、 上清を除去する。
  2. 細胞ペレットにmaleimide化SEBを0.3 ml加え、良く懸濁し、30°Cの水浴で80分間穏やかに撹拌しながら反応させる。
  3. 2 mlのPBSを加え、細胞懸濁液を遠心分離し、上清を除去した後、7.5 mlのPBSで二回遠心分離し、Meth A細胞を洗浄する。

 

【酵素-酵素】

PSI complex, subunit IV (PsaE)Sulfo-GMBSによりマレイミド化する

  1. 50 mmol/lホウ酸塩緩衝液(5 mmol/l EDTA, 20%スクロース, pH7.6)中で、Sulfo-GMBS (5 mmol/l)とPsaE (100 μmol/l)を4°Cで2時間反応する。(GMBS-PsaE)
  2. PBS (5 mmol/l EDTA, 20%スクロース)で、ゲルろ過し、Sulfo-GMBSを除く。

 

maleimidePsaEcytochrome c3 (cytc3)をつなぐ

  1. 調製した100 μmol/l GMBS-PsaE 4 mlを、アルゴンガスで脱気しながら、脱気した50 μmol/l cytc3を含むPBS (2 mmol/l TCEP, 20%スクロース, 5 mmol/l EDTA) 7 mlを加え、それを4°Cにて終夜で撹拌する。
  2. PBS (20%スクロース, pH6.8)を用い、0~500 mmol/l NaClのグラジュエントをかけた陽イオン交換カラムで精製する。
  3. 抽出されたタンパク質を50 mmol/l Tris-HCl (500 mmol/l NaCl, 10%スクロース, pH7.6)でゲルろ過した。
    得られた溶液を50 mmol/l Tris-HCl (500 mmol/l NaCl, 10%スクロース, pH7.6)でNi-NTAカラムで精製した。
  4. 0~500 mmol/lのイミダゾールのグラジュエントをかけて溶出させた後、50 mmol/l Tris-HCl (100 mmol/l NaCl, pH7.3)で、ゲルろ過精製する。

 

【アミノ基修飾基板-DNA】

アミノ基修飾基板GMBSによりマレイミド化する

  1. TFT (薄膜トランジスタ)光センサー基板に酸素プラズマを流速40 ml/minで40秒間当てる。
  2. プラズマ処理した光センサー基板を30秒間、1% APTES (γ-アミノプロピルトリエトキシシラン)トルエン溶液に浸し洗浄する。その後、10分間110℃で処理する。
  3. 表面をアミノ化した光センサー基板を1 mmol/l GMBSエタノール溶液へ60分間室温で浸漬させる。


maleimide化した基板DNAをつなぐ

  1. エタノールで基板を洗浄後、DMSOで溶解したチオール化オリゴヌクレオチド溶液をインクジェットディスペンサーにて光センサー基板へ滴下する。
  2. 滴下後、光センサー基板を室温、湿度65%で60分間インキュベートする。

参考文献

【小社のGMBS、Sulfo-GMBSを用い、複合体を作製した使用例】

詳細な実験条件につきましては該当する参考文献をご覧ください。

複合体の種類 GMBS の反応対象物 文献番号
NH2 SH基
タンパク質-細胞 Staphylococcal enterotoxins B Meth A細胞 1)
タンパク質-タンパク質 PSI complex, subunit IV (PsaE) cytochrome c3 2)
アミノ基修飾基板-DNAオリゴマー アミノシランをコートしたTFT基板 DNA (5'チオール修飾)

3)

  1. M. Shimizu et al., Mol. Biotechnol., 2003, 25(1), 89.
  2. M. Ihara et al., Photochem. Photobiol., 2006, 82(6), 1677.
  3. K. Hatakeyama et al., Lab Chip, 2009, 9, 1052.

FAQ

Q: EMCS、Sulfo-EMCSの使用条件を教えてください。

A: 活性エステルと反応対象物のアミノ基との反応は、弱アルカリ条件(pH7 ~ 9)で行ってください。
その後の還元や他のチオールとの置換反応は中性条件で行ってください。

関連製品

○クロスリンカー試薬

製品名 製品コード 容量

距離(Å)

EMCS E018 50 mg  9.4
100 mg 
GMBS G005 50 mg  6.9
100 mg 
DSP D629 1 g 8.5
SPDP S291 100 mg  4.1

○水溶性クロスリンカー試薬(有機溶媒使用不可の実験系向け)

製品名 製品コード 容量 距離(Å)
Sulfo-EMCS S024 50 mg 9.4
Sulfo-GMBS S025 50 mg 6.9
Sulfo-HMCS S026 50 mg 13.0
Sulfo-KMUS S250 50 mg 16.7
Sulfo-SMCC S330 50 mg 8.0
BS3 B574 50 mg 8.9
DTSSP D630 50 mg 8.5
Sulfo-AC5-SPDP S359 50 mg 12.6

G005_S025: GMBS / Sulfo-GMBS
Revised Apr., 11, 2024