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はじめに

G6PD 異常症 (G6PD Deficiency) とは、グルコース 6 リン酸脱水素酵素 (G6PD) の活性が著しく 低いため、酸化作用を防御する還元型グルタチオン (GSH) の補充が不十分となり、ヘモグロビ ンの変性による Heinz 小体の形成、細胞膜の透過性異常の結果、主として血管内溶血をきたす 疾患である。G6PD 異常症患者は、平素は無症状であるが、マラリア薬として使用されているプリマキンを服用すると、溶血性貧血を引き起こしてしまう。従って、マラリア流行地域における住民の G6PD 異常症診断は、大変重要な課題である1)。 


図 1 測定原理

また、WST-8 のホルマザンは水溶性で 460 nm に最大吸収を有し、強い橙色を呈するため目視で発色結果を確認できる。従って、マラリア流行地のような電気が供給されていない地域でも、電源や高価な機器類を一切必要とすることなく、その場で確認ができることになる2)。 更に本法は、MTT ホルマザン法では測定できなかった 20‐50% 程度の欠損者に対しても確認できるようになり、少量の試薬で正確な酵素活性を測定することも可能である。

キット内容

100 assays
・Substrate mixture
・Dye mixture
2 ml x 1
​2 ml x 1
500 assays
・Substrate mixture 
・Dye mixture
2 ml x 5
2 ml x 5

保存条件

冷凍、遮光で保存してください。

必要なもの (キット以外)

  • 200 μl と 1000 μl のマイクロピペットとチップ
  • 1.5 ml マイクロチューブ
  • 蒸留水
  • 1 mol/l HCl

測定操作

  1. 1.5 ml マイクロチューブに蒸留水 760 μl を入れ、これに Substrate mixture 20 μl と Dye mixture 20 μl をそれぞれ添加し、よく振り混ぜる。
  2. 操作1. のチューブに被験者の血液を 5 μl 添加し、5 秒間よく振り混ぜる。
  3. 25-37°Cで 20-30 分間インキュベートし、目視で溶液の発色を、ポジティブコントロール 溶液※1 及び、ネガティブコントロール溶液※2 と比較し、活性を判定する。
  4. 1 mol/l HCl を 10 μL 添加すると、反応の停止と測定結果の保存が可能である。
  1. ポジティブコントロール溶液は上記操作の中で操作 2. の血液に正常者 (G6PD の活性が正常 値を有する者 ) の血液を使用して用時調製する。
  2. ネガティブコントロール溶液は上記操作の中で操作 1. で Substrate mixture は添加せずに 用時調製する。操作 2) で使用する血液は正常者、被験者の何れでもよい。
  1. ネガティブコントロール
    G6PD 活性 0%
    基質なし ; 正常血液添加
  2. 男性異常症 G6PD 活性 0%
  3. 女性異常症 G6PD 活性 50%
  4. 正常血液  G6PD 活性 100%

図2 発色画像 : 25°C , 30分発色。塩酸含まず。

注意事項

  1. 本キットは、冷凍保存し、購入後 6 ヵ月以内に使用して下さい。品質の劣化を防ぐ為に、 融解後は冷蔵の場合は 1 ヶ月以内に、常温の場合は 10 日以内に使用して下さい。
  2. 多くの検体を測定する場合、操作 1) を簡略化するために Substrate mixture 2 ml と Dye mixture 2 ml を 76 ml の蒸留水で希釈し (Total 80 ml)、1.5 ml のマイクロチューブに 800 μl ずつ小分けして保存して下さい。希釈後は冷凍・遮光で保存して下さい。冷凍で 2 週間保存可能です。もし、冷蔵で保存する場合は、必ず遮光し、3 日以内に使用して下さい。
  3. マイクロプレートリーダーを用いれば、450 ~ 460 nm の吸光度を測定することで、「吸光 度の変化率」を「活性 %」として数値化することができます。その際、より正確な分析の為 に、血液中のヘモグロビン量を測定することをお薦めします。
  4. 本品は試験研究用です。診断や他の用途で使用しないで下さい

参考文献

  1. A. Ishii, et al., Japanese Journal of Parasitology, 1994, 43, 312.
  2. A. Jalloh, et al., Trop. Med. Int. Health, 2004, 9(5), 615.
  3. E. Beutler, Blood, 1966, 28, 553.
  4. E. Beutler and M. Mitchell, Blood, 1968, 32, 816.
  5. V. Fairbanks and E. Beutler, Blood, 1962, 20, 591.
  6. H. Fujii, et al., Acta Haematologica Japonica, 1984, 47, 185.
  7. A. Hirono, et al., Jpn. J. Trop. Med. Hyg., 1998, 26, 1.
  8. I. S. Tantular, et al., Trop. Med. Int. Health, 1999, 4, 245.
  9. A. Pujades, et al., Int. J. Hematol., 1999, 69, 234.

G256: G6PD Assay Kit-WST
Revised Nov., 30, 2023