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はじめに

 リソソームは細胞内小器官の一つで生体膜に囲まれた酸性小胞であり、様々な分解酵素を内包しております。 リソソームは不要な物質を分解することで生体内恒常性の維持に寄与しています。リソソームの機能不全は神経変性疾患等の発症・進展に深く関与していることから、リソソームを詳細に解析することが病態の解明や治療薬の開発に有用であると考えられております。
 pHLys Redは細胞内の正常なリソソームに集積し、酸性環境下で蛍光が増強します。一方、リソソーム機能が下がり、リソソームのpHが中性化すると、リソソームpH依存的に蛍光強度が減少します。初めてpHLys Redをご使用の際は、pH非依存的リソソーム染色試薬(LysoPrime Green) が同梱されたLysosomal Acidic pH Detection Kit(品コード: L266)にてリソソームpHを検出することをお勧めします。リソソームのpHに非依存的もしくは依存的な集積性を示す2種類の色素を組み合わせることで、リソソーム量とリソソームpHを測定し、正確なリソソームpHの変化を検出できます。
 

pHLys Red

図1. リソソームpHに依存的な集積性を示す蛍光色素 pHLys Red

蛍光特性

pHLys Redの蛍光特性

λex: 562 nm
λem: 586 nm
<観察条件>
Ex : 561 nm, Em : 560 – 650 nm

内容

pHLys Red x 1 (35 mm dish 10枚分)
x 3 (35 mm dish 30枚分)
  • pHLys Redは極少量であるため、内容物が見え難くなっております。取扱いにご注意下さい。

保存条件

冷暗所にて保存してください。

必要なもの

  • 培地
  • Hanks’ Balanced Salt Solution (HBSS)
  • マイクロピペット
  • マイクロチューブ

溶液調製

pHLys Red DMSO stock solution の調製

pHLys Redを含むチューブに 20 μlのDMSOを加え、ボルテックスミキサーにより溶解し、DMSO stock solutionを調製する。

  • 調製後は-20℃で保存してください。調製後1ヶ月間安定です。

pHLys Red working solution の調製

pHLys Red DMSO stock solutionを培地またはHBSSで1,000 倍希釈し、pHLys Red working solutionを調製する。

  • 細胞種によって最適濃度が異なります。はじめてご使用される際には最適条件をご検討ください。(推奨希釈域: 250 – 1,000倍)
  • pHLys Red working solutionは保存できません。調製したその日のうちに、ご使用ください。

操作

  1. 細胞をディッシュに播種し、5% CO2存在下、37 ℃で培養する。
  2. 培地を取り除き、培地もしくはHBSSを用いて細胞を2回洗浄する。
  3. pHLys Red working solutionを加え、5% CO2存在下、37 ℃で30分インキュベートする。
  4. 上澄みを取り除き、培地もしくはHBSSを用いて細胞を2回洗浄する。
  5. 培地を加え、蛍光顕微鏡で観察する。

実験例

共焦点蛍光顕微鏡を用いたリソソーム中pH変化の観察

  1. μ-slide 8 well plate (ibidi社) にHeLa細胞 (1.0 x 104 cells/well) を播種し、5%CO2存在下、37℃で一晩培養した。
  2. HBSSで2回洗浄後、pH非依存性リソソーム染色色素 (品コード: L261) LysoPrime Green (2,000倍希釈)もしくは(品コード: L264) LysoPrime Deep Red (1,000倍希釈) working solutionをwellに200 μl加え、37 ℃で30分インキュベートした。
  3. 上澄みを取り除き、細胞をHBSSで2回洗浄した。
  4. HBSSで希釈したBafilomycin A1 (Baf. A1: リソソーム酸性化阻害剤)を含んだpHLys Red working solution (1,000倍希釈) をwellに200 μl加え、37 ℃で30分インキュベートした。
  5. 上澄みを取り除き、細胞をHBSSで2回洗浄した。
  6. 新しい10% FBS含有MEM培地をwellに200 μl加え、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。


図2. Bafilomycin A1によるリソソームpHへの影響

CTRL: 通常培養条件、Baf A1: リソソーム酸性化阻害条件 (50 nmol/l)
pHLys Red 検出波長 : 561 nm (Ex), 560 – 650 nm (Em)
LysoPrime Green 検出波長 : 488 nm (Ex), 500 – 570 nm (Em)
LysoPrime Deep Red 検出波長 : 633 nm (Ex), 640 – 700 nm (Em)

L265: pHLys Red - Lysosomal Acidic pH Detection
Revised May., 24, 2023