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はじめに

ICG Labeling Kit-NH2は、アミノ基を有するタンパク質、特に抗体へICG(Indocyanine green)を標識するためのキットです。ICG は肝機能検査のための色素負荷試験にも用いられているシアニン色素で、近赤外領域に蛍光を持ちます。励起波長は774 nm付近、蛍光波長は805 nm付近であり、生体内で用いた場合でも、ヘモグロビンなどによる妨害を受けにくいという蛍光特性があり、近赤外蛍光を利用した蛍光内視鏡やin vivo 蛍光イメージングへの応用が期待されています。キット付属のNH2-Reactive ICGは、その分子内に活性エステル基を有しているため、アミノ基を有する標的分子と混合するだけで安定な共有結合を形成します。タンパク質にICGを標識する場合、標識反応を阻害するような低分子化合物(トリスなど)や未反応のNH2-Reactive ICG は付属のFiltration Tubeを用いて容易に除去することができます。

キット内容

【3 samples】
NH2-Reactive ICG 3 tubes
WS Buffer 4 ml × 1
Reaction Buffer 500μl × 1
Filtration Tube 3 tubes

保存条件

0~5℃で保存してください。ご購入後、未開封の状態で1年間安定です。

注意

アルミラミジップを一旦開封した後は、未使用のNH2-Reactive ICGは、アルミラミジップに入れたままチャックをしっかりと閉め、-20℃で保存してください。NH2-Reactive ICG以外は、0~5℃で保存してください。

必要なもの(キット以外)

  • 10 μl, 200 μlマイクロピペッタ-
  • インキュベーター(37℃)
  • DMSO
  • マイクロチューブ(標識体保存用)
  • 遠心機(マイクロチューブ用)
  • PBS

使用上のご注意

  • 分子量が50,000以上で、反応性のアミノ基を有するサンプルへ標識することができます。
  • 試料溶液中に標識対象以外の分子量10,000以上の物質が含まれる場合は、標識反応を阻害する恐れがあります。あらかじめ試料溶液を精製して、ご使用ください。
  • 試料溶液に不溶性の低分子物質が含まれる場合は、遠心して上清のみを標識反応に用いてください。
  • 冷蔵保存中もしくは室温に戻した際に、Filtration Tubeに水適様の液粒が見られることがあります。これはメンブランの乾燥防止剤が液粒化したもので、製品の性能に問題はございません。
  • 本キットには溶液の入ったマイクロチューブのコンポーネントが含まれています。チューブ内壁やキャップに溶液が付着していることがありますので、 開封前に振り落としてからご使用ください。

プロトコール


操作1.
タンパク質 50 ~ 200 μg を含むサンプル溶液とWS Buffer 100 μlをFiltration Tube に入れ、ピペッティングにより軽く混合するa)

操作2.
8,000 x g で10 分間遠心するb)

操作3.
NH2-Reactive ICG に10 μl のDMSO を加え、ピペッティングにより溶解するc)

操作4.
Filtration Tube のメンブレン上にReaction Buff er 100 μl を加えた後、NH2-Reactive ICG を含むDMSO 溶液 8 μl d) を加える。

操作5.
ピペッティングによりメンブレン上のタンパク質と混合した後、37°Cで10 分間反応させる。


操作6.
WS Buff er 100 μl をFiltrationTube に入れ、8,000 x g で15 分間遠心するb)。遠心後、ろ液を捨てる。


操作7.
WS Buff er 200 μl をFiltrationTube に入れ、8,000 x g で15分間遠心するb)。 この操作をもう一度繰り返す。


操作8.
PBS 200 μl をFiltration Tube に入れ、10 回程度ピペッティングし、標識体を回収するe)。マイクロチューブに移し、0 ~ 5℃で保存する。

a) 100 μl 以下の液量を使用してください。タンパク質濃度が0.5 mg/ml 未満である場合は、操作 1. と2. を繰り返し、タンパク質量が50 ~ 200 μg となるようにしてください。

b) 溶液がメンブレン上に残っている場合は、さらに5 分間遠心してください。

c) NH2-Reactive ICG はチューブの底に入っています。DMSO を加える際はチューブの底に入れ、軽くピペッティングして溶解してください。また、NH2-Reactive ICG はDMSO 中の水分により加水分解しやすいので、DMSO に溶解後は直ちに操作 4. へ進んでください。

d) タンパク質 200 μg に標識する場合、NH2-Reactive ICG 溶液は10 μl 全量を加えてください。

e) 標識体を回収する際はPBS の他、必要に応じて各種の溶液をご使用ください。

標識率の決定

タンパク質1分子あたりに標識されたICGの数(標識率)を算出したい場合は、ICG 標識タンパク質溶液を中性バッファーで5倍希釈し、280 nm、800 nmの吸光度を測定してください。標識率は次式で計算できます。IgG の場合はεとして216,000 を使用してください。ICGのPBS中でのモル吸光係数は147,000です。

標識率(ICG/ タンパク質比)= A800 /147,000 (A280 - A800 x 0.075)/(ε of protein)

A800: 800 nm の吸光度
A280: 280 nm の吸光度
ε : タンパク質の 280 nm でのモル吸光係数

標識反応


 ICG の励起スペクトルと蛍光スペクトル

Q&A

市販の抗体を用いて標識できますか?

標識できます。ただし、安定化剤としてゼラチンや血清アルブミンなどの高分子が添加されている抗体では、標識反応が阻害されます。このような抗体をご使用の場合は、あらかじめアフィニティーカラムなどにより精製してご使用ください。精製方法につきまして御不明な点がございましたらお問い合わせください。

ICG標識体はどのくらい安定ですか?

標識体の安定性はタンパク質自身の安定性に依存します。標識体調製後は、なるべく早くご使用ください。長期保存する場合には、少量小分け後、-20℃で保存することをお勧めします。

タンパク質1分子あたりにICGはいくつ導入できますか?

導入数はタンパク質中の反応性のアミノ基の数に依存します。rabbit IgGの場合、IgG 1分子あたり約1個のICG が導入されます。

このキットを使ってタンパク質以外のオリゴヌクレオチドやペプチドにICGをラベル化することはできますか?

オリゴヌクレオチドやペプチドは、Filtration Tubeのメンブレンフィルター孔より分子量が小さく、メンブレンフィルター上に保持することができないため、ラベル化することはできません。

LK31: ICG Labeling Kit - NH2
Revised Nov., 24, 2023