ポナールキット-Cu(PONAL KIT-Cu)とは
銅(Cu)は産業上種々の用途があり、大切な金属の一つですが、その毒性も強く古くは銅山付近の人々や自然に与えた害の大きさ、恐ろしさなどの例も多くあります。銅は水質汚濁防止法での排水の許容限度が3 mg/l(3 ppm)、水道法での上水道の基準は1 mg/l(1ppm)以下と定められています。
ポナールキット-Cu は銅による汚染監視のために極めて簡易に水中のCuイオンを測定できるように開発されたキットです。
*本キットではmg/L =ppmとして表記している。
ポナールキット-Cuの主な特長
- 薬品は1種類で、しかも錠剤化されているので取扱いやすく、迅速に操作ができます。
- キット内に収めてある器具のほかには機器類を必要としませんから、現場分析、野外分析にも最適です。
- 標準色が実際の発色と極めてよく似たプラスチック製ですから、判定に個人差が生じません。
- 測定範囲は 0、0.3、1、3、6、および15 ppm です。15ppm以上のときは検水を純水でうすめることにより同様に測定できます。
標準操作法
- 検水を試験管のメモリまでスポイトでとります。
- 発色試薬錠を1錠加え振りまぜて溶解し静置します。
- 少量の不溶性物質が沈んだら、検水の発色の度合いを標準色と比較し、最も近い濃さのppm値を読みとります。
操作上の注意点
- 検水が強酸性あるいは強アルカリ性のときは希アンモニア水または希塩酸でpH約2~10の範囲に調節したのち測定してください。
- 検水が濁っているときは濾紙または脱脂綿などでろ過したのち測定してください。
- 発色試薬錠には少量の不溶性物質を含んでいますが、測定値には影響ありませんので安心してご使用ください。
- また、錠剤はやや吸湿性がありますので、使用後は容器の栓をよくしめて、なるべく冷暗所に保存してください。
共存イオンの影響
本キットに用いてある発色試薬はCuイオンとのみ選択的に反応しますから、他の多くの金属イオンの影響は極めて少ないものです。たとえばCu 1ppmと共存する多くの金属イオン500~1000ppmの影響はほとんどありませんから、ほとんどの排水に十分適用できます。ただ、EDTA(キレート試薬類)、CN-などのCuと強く結合する薬品や成分が共存する場合は常温では低値を示すことがあります。もし、このような薬品類の共存が予測される検水については、発色試薬錠を加えたのち約80度の水浴中で5分間加熱すると正常な発色となります。
本法の精度
本法による測定値はJIS法、あるいは原子吸光法による結果とよく近似した値が得られます。表1に示す値は実際の排水を本法と原子吸光法により分析した結果の一部です。
表1 本法と原子吸光法による測定値の比較(単位:ppm)
試料 | 本法 | 原子吸光法 |
メッキ工場排水 |
1 0.3 6 15 |
1.3 0.32 5.4 14.7 |
一般的注意事項
- 簡易キット取り扱い上の誤った概念として、少しぐらいラフに扱っても、また記載してある方法と少々違った方法で行っても構わないと受け取られている面もあるようです。しかし、これは大きな誤解です。たしかに操作法は簡便化され、測定しやすい条件になっていますが、定められた方法、注意は正しく守って初めて期待した結果が得られます。
- 試薬は医薬品とよく似た包装形態になっていますので、誤ってのみこんだりしないよう、特に幼児、子供の手の届かないところへ保管してください。
- 本法はJIS法によく一致した測定値が得られますが、あくまでも簡易法であり、法律にもとずく官公庁への報告などはJIS法による数値を提出してください。
よくある質問/参考文献
PK10: ポナールキット-Cu
Revised Apr., 03, 2024