※印刷が必要ない項目は、タイトルバーを閉じるを押して省略できます。

はじめに

 正常細胞は、分裂を繰り返すことや、酸化ストレス等によりDNA に損傷を生じます。損傷DNA が修復されない場合には、不可逆的に細胞分裂を停止することにより細胞の癌化を抑制します。不可逆的な細胞分裂の停止は細胞老化と呼ばれており、老化細胞にはSA-β-gal (senescence-associated β-galactosidase) が過剰発現しています。このため、SA-β-gal は、老化マーカーのひとつとしてその判別に汎用されています1, 2)
 本製品は、β-galactosidaseと反応し発蛍光するSPiDER-βGal を蛍光基質とし3)、マイクロプレートを用い細胞溶解液中のSA-β-gal 量を簡便に測定するキットです。本製品により得られた測定値は、細胞数カウント、タンパク質量測定または核酸量測定などの一般的な手法で補正可能です。

 

図1 SA-β-gal の検出操作

キット内容

  20 tests 100 tests
SPiDER-βGal 1 tube 5 tubes
Lysis Buffer 40 mL×1 100 mL×2
Assay Buffer 1.5 mL×1 7.5 mL×1
Stop Solution 3 mL×1 15 mL×1

 

保存条件

遮光し0–5 ℃で保存して下さい。

必要なもの ( キット以外)

  • 蛍光プレートリーダー
  • 96 穴ブラックプレート
  • インキュベーター(37 ℃ )
  • マルチチャンネルピペット (20–200 μL)
  • マイクロピペット(100–1000 μL, 20–200 μL)
  • Phosphate buffered saline (PBS)
  • Dimethylsulfoxide (DMSO)
  • コニカルチューブ

使用上のご注意

  • キット中の試薬は、室温に戻してからご使用下さい。
  • 輸送中の振動等により、内容物がスクリューキャップマイクロチューブ壁面やキャップ裏面に付着している場合がありますので、開封前に内容物を底面に落としてからご使用下さい。
  • 正確な測定値を得るために、ひとつの測定試料につき複数(n=3 以上) のウェルを使用下さい。
  • SPiDER-βGal working solution をサンプルに加えると直ちに反応が始まります。各ウェル間のタイムラグによる測定誤差を少なくするためにマルチチャンネルピペットをご使用下さい。

溶液調製

SPiDER-βGal DMSO stock solution の調製

SPiDER-βGal を含むチューブにDMSO 125 μL を加え、ボルテックスミキサー等により溶解し、SPiDER-βGal DMSO stock solution を調製する。

  • チューブ内容物は極少量のため目視では確認できません。DMSO 添加後は、チューブ内が均一になるようボルテックスミキサー等で溶解操作を行って下さい。
  • DMSO stock solution 調製後は遮光にて( アルミラミジップに入れ)、冷凍保存 (-20 ℃ ) して下さい (1 カ月間安定)。

SPiDER-βGal working solution の調製

SPiDER-βGal DMSO stock solution をAssay Buffer で10 倍希釈し、SPiDER-βGal working solution を調製する。

  • SPiDER-βGal working solution は保存できません。その日の内にお使い下さい。
  • working solution 調製後も出来る限り遮光にて( アルミラミジップに入れ) 使用して下さい。
  • 96 穴ブラックプレートをご使用の場合、1 ウェルあたりSPiDER-βGal working solution 50 μL が必要です。

操作

SA-β-gal アッセイ

  1. 細胞をプレートもしくはディッシュに播種し、37 ℃、5% CO2 インキュベーター内で一晩培養する。
  2. 実験系に合った細胞数補正を行う。
    • 細胞数補正について情報をお探しの場合は、弊社テクニカルサポートにお尋ね下さい。
  3. 上清を吸引除去し、PBS で1 回洗浄する。
  4. Lysis Buffer を添加し、室温で10 分間インキュベートする。
    • 実験に用いるディッシュのサイズによってLysis Buffer の添加量は異なります。表1 を参照して下さい。

    表1 Lysis Buffer 添加量

      96-well plate 24-well plate 6-well plate 10 cm dish
    Lysis Buffer 50 μL 400 μL 1 mL 1.5 mL
  5. 細胞溶解液50 μL を96 穴ブラックプレートの各ウェルに添加する。
  6. SPiDER-βGal working solution 50 μL を各ウェルに添加し、37 ℃で30 分インキュベートする。
    • コントロール細胞と老化細胞の SA-β-gal 活性に差が見られない場合は、インキュベーション時間を長く(30 分から一晩まで)してください。
  7. 各ウェルにStop Solution 100 μL を添加する。
  8. 蛍光プレートリーダーで測定する (Ex: 500–540 nm, Em: 540–580 nm)。

実験例1

継代数の違いで老化誘導したWI-38 細胞中のSA-β-gal アッセイ

  1. 継代数3 回および継代数19 回のWI-38 細胞( 1 x104 cells/well、10% fetal bovine serum、1% penicillin-streptomycin を含むMEM 培地) をそれぞれ96 穴ブラックプレート( 透明底) に播種し、37 ℃、5% CO2 インキュベーター内で一晩培養した。
  2. 細胞数による補正のため、Cell Count Normalization Kit [ コード: C544] を使用し核酸染色を行い、蛍光値を測定した。
  3. 上清を吸引除去し、PBS 100 μL で1 回洗浄した。
  4. Lysis Buffer 50 μL を各ウェルに添加し、室温で10 分間インキュベートした。
  5. SPiDER-βGal working solution 50 μL を各ウェルに添加し、37℃で30 分間インキュベートした。
  6. 各ウェルにStop Solution 100 μL を添加した。
  7. 蛍光プレートリーダーでSPiDER-βGal 由来の蛍光値を測定した (Ex: 535nm, Em: 580 nm)。
  8. 得られたSPiDER-βGal の蛍光値を核酸染色の蛍光値で補正し、SA-β-gal 量を算出した。

図2 WI-38 細胞中のSA-β-gal 活性 ( プレートアッセイ)

実験例2

Doxorubicin 処理で老化誘導したWI-38 細胞中のSA-β-gal アッセイ

  1. 継代数3 回のWI-38 細胞( 1 x106 cells/dish、10% fetal bovine serum、1% penicillin-streptomycin を含むMEM 培地)を10 cm ディッシュに播種し、37 ℃、5% CO2 インキュベーター内で一晩培養した。
  2. 培地を吸引除去し、PBS 10 mL で1 回洗浄後、無血清MEM 培地で希釈した0.2 μmol/L のDoxrubicin 溶液10 mLを添加し、37 ℃、5% CO2 インキュベーター内で3 日間培養した。
  3. 上清を吸引除去し、PBS 10 mL で1 回洗浄後、10% fetal bovine serum、1% penicillin-streptomycin を含むMEM培地を10 cm ディッシュに添加し、37 ℃、5% CO2 インキュベーター内で3 日間培養した。
  4. 培地を吸引除去し、PBS 10 mL で1 回洗浄した。
  5. Doxorubicin 処理あり、なしのWI-38 細胞( 1 x104 cells/well、10% fetal bovine serum、1% penicillin-streptomycin を含むMEM 培地) をそれぞれ96 穴ブラックプレート( 透明底) に播種し、37 ℃、5% CO2 インキュベーター内で一晩培養した。
  6. 細胞数による補正のため、Cell Count Normalization Kit [ コード: C544] を使用し核酸染色を行い、蛍光値を測定した。
  7. 上清を吸引除去し、PBS 100 μL で1 回洗浄した。
  8. Lysis Buffer 50 μL を各ウェルに添加し、室温で10 分間インキュベートした。
  9. SPiDER-βGal working solution 50 μL を各ウェルに添加し、37 ℃ で30 分間インキュベートした。
  10. 各ウェルにStop Solution 100 μL を添加した。
  11. 蛍光プレートリーダーでSPiDER-βGal 由来の蛍光値を測定した (Ex: 535nm, Em:580 nm)。
  12. 得られたSPiDER-βGal の蛍光値を核酸染色の蛍光値で補正し、SA-β-gal 量を算出した。

図3 WI-38 細胞中のSA-β-gal 活性( プレートアッセイ)

参考文献

  1. Dimri, G. P. et al., Cell Biology, 1995, 92, 9363–9367.
  2. Park, A. M. et al., J. Biol. Chem., 2018, 293, DOI: 10.1074/jbc.RA118.003310
  3. Doura, T. et al., Angew. Chem., 2016, 55, 9620–9624.

SG05: Cellular Senescence Plate Assay Kit - SPiDER-βGal
Revised Apr., 03, 2024