これからはじめる細胞内代謝

「キャンペーン」と「学べる動画」で 細胞内代謝実験 のこれからをサポート!期間限定(10月7日~11月6日)


細胞内の代謝システムである、解糖系やTCA回路、電子伝達系の解析は、細胞状態を理解する上で重要であり、グルコースや乳酸、NAD(P)/NAD(P)H、グルタミン、グルタミン酸などのエネルギーおよび代謝産物を指標に評価されています。

 

 

各疾患における細胞内代謝の変化

がんや糖尿病などの疾患モデルの細胞内代謝について近年注目されています。 各疾患における代謝指標の変化をご紹介します。

 

各項目の学術情報・関連情報に移動します。

 


がん

がん細胞は、活発な細胞増殖を維持するため迅速に大量の栄養素を取り込み、代謝することによってタンパク質や核酸の合成、ATPなどのエネルギー産生を行っています。また、細胞にとって不利な環境(低酸素や低栄養)下であっても、がん細胞は代謝系を変化させて生存しています。そのため、近年、がん細胞の代謝系を解明する研究が活発に進められています。

 

 

特徴的な代謝として、がん細胞はミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも非効率な解糖系を用いてATPを産生します(ワールブルグ効果)。そのため、がん細胞は糖を大量に取り込みます。また解糖系の亢進によって乳酸を大量に産生します。解糖系を用いたATP産生には酸素は必要ないため、低酸素下でもがん細胞は増殖することができます。一方、がん細胞のミトコンドリアは、アミノ酸や脂肪を用いてNADH産生を行います。がん細胞のミトコンドリア内NADHはATP産生以外に主にレドックス制御に利用されている、と考えられています。がん細胞のミトコンドリアは異常な機能を有しており、その結果としてミトコンドリア膜電位の上昇(過分極)および過剰な活性酸素の産生を引き起こします。そのため、多くのグルタチオンを産生してレドックスバランスを維持しています。グルタミンやシステインはグルタチオン産生に必須な栄養素となるため、がん細胞ではこれらアミノ酸を過剰に取り込んでいます。また、還元型グルタチオンを維持するためにはNAPDHが必要となるため、解糖系から続くペントースリン酸経路やミトコンドリアのNADHを利用して高いNADPH濃度を維持しています。

(注意)上述の内容は、がん細胞の一般的な代謝特性を示すものであり、がん細胞の種類や環境によって異なります。

 

参考文献

下記文献は、がん細胞の代謝研究に関する総説となります。ご研究をはじめる際の参考文献としてご参照ください。

1) 解糖系:
M. G. Vander Heiden, L. C. Cantley, and C. B. Thompson, “Understanding the Warburg Effect: The Metabolic Requirements of Cell Proliferation”, Science, 2009, 324, 1029.
2) アミノ酸代謝、ROS :
P. Koppula, Y. Zhang, and B. Gan, “Amino Acid Transporter SLC7A11/xCT at the Crossroads of Regulating Redox Homeostasis and Nutrient Dependency of Cancer”, Cancer Commun., 2018, 38, 12.
3) アミノ酸代謝
E. L. Lieu, T. Nguyen, S. Rhyne, and J. Kim, “Amino Acids in Cancer”, Exp. Mol. Med., 2020, 52, 15
4) ミトコンドリア、ROS、NADPH:
F. Ciccarese and V. Ciminale, “Escaping Death: Mitochondrial Redox Homeostasis in Cancer Cells”,  Front. Oncol. 2017 7, 117.
5) NADH:
A. Chiarugi, C. Dolle, R. Felici, and M. Ziegler, “The NAD Metabolome-A Key Determinant of Cancer Cell Biology”, Nat. Rev. Cancer, 2012, 12, 741.有料

 


学術情報

  • グルコース代謝阻害と抗がん作用
  • アミノ酸代謝阻害と抗がん作用
  • 1つのキットで、ホモジニアス測定、ノンホモジニアス測定の選択が可能
  • がん免疫と代謝

グルコース代謝阻害と抗がん作用

がん細胞は主に解糖系を用いてATP産生を行うため、解糖系をターゲットとした抗がん剤の開発が古くから進められています。未だ有効な抗がん剤の開発には至っていませんが、現在でも解糖系はがん細胞の主要な薬剤ターゲットです。そのため解糖系は、がん細胞の代謝を理解する上で最も重要な経路です。

創薬において解糖系の標的タンパク質として、グルコーストランスポーター(GLUT)が挙げられます。がん細胞はグルコーストランスポーターを介して糖を大量に取り込んでいるため、グルコーストランスポーターを直接的に阻害することによって解糖系を抑制することが可能です。またグルコース飢餓、解糖系を担う酵素群(ヘキソキナーゼ: HK、乳酸脱水素酵素:LDHなど)の活性阻害や解糖系の最終産物である乳酸の細胞外への流出抑制も有効な手段です。

 

 

各阻害剤による細胞内代謝の変化・参考文献

細胞 薬剤・刺激 細胞内代謝の状態 文献

卵巣がん(SKOV3、OVCAR3、HEY、A2780)

GLUT1阻害剤:BAY-876

ATP、​Lactate

Cancer, 2019, 11, 33

肺がん(H1299、H460、H2030)

GLUT1発現抑制:Apigenin

Glucose consumption

Lactate、ATP

NADPH、GSH/GSSG

ROS

Int. J. Oncol., 2016, 48, 399

大腸がん (HCT116)

HK阻害剤:2-DG

Glucose uptake

Lactate、Acetyl-CoA

H3K27Ac

Cancer Metab., 2015, 3, 10

卵巣がん(SKOV3、HEY)

HK阻害剤:2-DG + Metformin

ATP、Lactate

Am. J. Transl. Res., 2016, 8, 4821

結腸がん(CT26)

Complex I阻害剤:Phenformin、

LDH阻害剤:Oxamate

Glucose uptake

Lactate、ATP

ROS

PLoS One., 2014, 9, e85576

ヒトリンパ腫(P493)

LDH阻害剤:FX11

ATP、Lactate

NADH/NAD、ROS

ミトコンドリア膜電位

Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2010, 107(5), 2037

ヒトリンパ腫 (Raji)

MCT阻害剤:AZD3965

Glucose uptake

細胞内Lactate

(細胞外Lactate

Cancer Res., 2017, 77(21), 5913

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
グルコース代謝測定キット Glucose Assay Kit-WST G264
乳酸測定キット Lactate Assay Kit-WST L256
NAD/NADH 測定キット NAD/NADH Assay Kit-WST N509
NADP/NADPH 測定キット NADP/NADPH Assay Kit-WST N510
ミトコンドリア膜電位検出キット JC-1 MitoMP Detection Kit MT09

 


アミノ酸代謝阻害と抗がん作用

増殖が活発ながん細胞において、アミノ酸はタンパク質や核酸の合成に必須な栄養素です。また、がん細胞では解糖系からのアセチルCoAの供給が低下するため、TCAサイクルの栄養源としてアミノ酸を積極的に利用しています。そのため、がん細胞ではアミノ酸トランスポーターの発現量を増やして、多くのアミノ酸を取り込んでいることが明らかとなっています。特にグルタミンは、グルタチオンの原料、およびTCAサイクルに必須なα-ケトグルタル酸の供給源であり、グルタミンの取り込みや代謝(グルタミノリシス)をターゲットとした薬剤開発が注目されています。また、多くの必須アミノ酸の取り込みに関与するアミノ酸トランスポーターLAT(L-type amino acid transporter)が多くのがん細胞で過剰発現していることがわかり、新しい創薬ターゲットとして期待されています。

 レドックス制御に必要なシステインは、他のアミノ酸とは異なり、主にシスチントランスポーターであるxCTによって細胞内に取り込まれています。がん細胞では活性酸素が大量に発生しているため、抗酸化物質であるグルタチオン産生を高めてレドックスバランスを維持しています。そのため、グルタチオン産生に関与する経路を阻害することで細胞内レドックスバランスを変化させ、フェロトーシスなどの細胞死を誘導することが可能です。またグルタチオンは薬剤耐性にも寄与しているため、グルタチオン産生に関与する経路は薬剤開発の主要なターゲットとなっています。特に最近では抗炎症薬として古くから用いられているスルファサラジンやがんの分子標的治療薬であるソラフェニブがxCTを阻害することが明らかとなり、 xCT阻害によるフェロトーシスを介した抗がん作用に注目が集まっています。

 

 

各阻害剤による細胞内代謝の変化・参考文献

細胞 薬剤・刺激 細胞内代謝の状態 文献

T細胞リンパ腫(KO99L)

LAT1阻害剤:JPH203

ミトコンドリア膜電位

オートファジー

Leukemia, 2015, 29, 1253

ヒト結腸がん細胞(LS174T)

ヒト肺がん細胞(A549)

LAT1阻害剤:JPH203

Glutamine uptake

Leucine uptake

J. Biol. Chem., 2018, 293(8), 2877

ヒト子宮頸がん細胞(HeLa)

LAT1阻害剤:BCH

Tryptophan uptake

J. Immunol., 2011, 187(4), 1617

ヒト肺がん細胞(A549)

ASCT2阻害剤:GPNA

Glutamine uptake

ROS

Clin. Cancer Res., 2013, 19(3), 560

ヒト骨肉腫(MG63.3)

GLS阻害剤:CB839

Glutamine

Glutamate↓、GSH

Cancer&Metab., 2020, 8:4

白血病細胞(OCI-AML3)

GLS阻害剤:CB839

ATP↓、NADH/NAD

GSH/GSSG↓、Alanine

Glutamate

Mol. Cancer Ther., 2019, 18(11), 1937

ヒト非小細胞肺がん(H1299)

ヒト乳腺がん(MDA-MB231 )

GDH阻害剤:R162

ROS

GPx activity

Cancer Cell, 2015, 27, 257

ヒト卵巣がん(A2780)

xCT阻害剤:Erastin

Cystine uptake

GSH

Sci. Rep., 2018, 8(1), 968

マウスメラノーマ(B16-F10)

xCT阻害剤:Sulfasalazine

GSH

ROS

PLoS One., 2018, 13(4), e0195151.

ヒト繊維肉腫(HT-1080)

xCT阻害剤:Sorafenib

Cystine uptake↓、GSH

Lipid peroxidation

Elife, 2014, 3, e02523

ヒト膵臓腺がん(PANC-1)

GCL阻害剤:BSO

GSH

Lipid peroxidation

Oncol. Lett., 2018, 15(6), 8735

ヒト肺がん細胞(A549)

GCL阻害剤:BSO

Cystine uptake↓、GSH

Toxicol. Appl. Pharmacol., 1985, 381

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
NAD/NADH 測定キット NAD/NADH Assay Kit-WST N509
ミトコンドリア膜電位検出キット JC-1 MitoMP Detection Kit MT09
グルタミン測定キット Glutamine Assay Kit-WST G268
グルタミン酸測定キット Glutamate Assay Kit-WST G269
グルタチオン定量キット GSSG/GSH Quantification Kit G257
過酸化脂質検出試薬 Liperfluo L248
ミトコンドリア過酸化脂質検出試薬 MitoPeDPP M466
オートファジー検出試薬 DAPGreen - Autophagy Detection D676

 


脂肪酸代謝阻害と抗がん作用

細胞増殖が活発ながん細胞では、当然ながら多くの脂質を必要とします。そのため、細胞内における脂肪酸合成や細胞外からの脂肪酸取り込みが活発です。そのため、多くのがん細胞では脂肪滴の蓄積が亢進しています。がん細胞に対する治療標的は主に脂肪酸産生に関わる経路であり、多くの阻害剤が開発されています。また一方でがん細胞は、解糖系による非効率なエネルギー産生を補うため、脂肪酸のβ酸化を利用して効率的なエネルギー産生を行っています。そのため、脂肪酸のβ酸化をターゲットとした薬剤開発も行われています。

 

 

各阻害剤による細胞内代謝の変化・参考文献

細胞 薬剤・刺激 細胞内代謝の状態 文献

CD36高発現乳がん細胞(MCF7、

SUM159)

CD36阻害剤:SSO

Fatty acid uptake

Lipid droplet

Cancers, 2019, 11, 2012

ヒト悪性黒色腫(A375、SKMel28)

FATP阻害剤:Lipofermata

Fatty acid uptake

Lipid droplet

Cancer Discov., 2018, 8(8), 1006

ヒト乳がん細胞(BT474、MCF7、T47D)

ACACA阻害剤:TOFA

Lipid droplet

FA oxidation

J. Clin. Med., 2020, 9, 87

淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)

SREBP阻害剤:Betulin

ACACA阻害剤:TOFA

FASN阻害剤:C75

Lipid droplet

Mol. Cell Biol., 201737(22), e00265-17

ヒト肺がん細胞(NCI-H1703)

ACSL阻害剤:Triacsin C

Lipid droplet

Int. J. Cancer, 2020, 147, 1680

ヒト膀胱がん細胞(UM-UC-3)

FAO阻害剤:Etomoxir

Lipid droplet

ATP、NADPH

Clin. Sci., 2019, 133 (15), 1745

ヒト脳腫瘍細胞(SF188)

FAO阻害剤:Etomoxir

ATP、NADPH

GSH

ROS

Biochim. Biophys. Acta, 2011, 1807(6), 726

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
脂肪滴測定キット Lipid Droplet Assay Kit - Blue LD05
Lipid Droplet Assay Kit - Deep Red LD06
脂肪滴染色蛍光色素 Lipi-Blue LD01
Lipi-Green LD02
Lipi-Red LD03
Lipi-Deep Red LD04
NADP/NADPH 測定キット NADP/NADPH Assay Kit-WST N510
グルタチオン定量キット GSSG/GSH Quantification Kit G257

 


がん免疫と代謝

がん細胞を排除するための免疫システムの中心的な役割を果たしているのがT細胞です。近年、T細胞の分化や活性化などの機能制御にも代謝が関与していることが明らかとなり、がん免疫における代謝研究が活発になっています。がん細胞は大量の栄養素を取り込み増殖活性を維持していますが、活性化T細胞もがん細胞を排除するため大量の栄養素、特にグルコースを必要としています。そのため、活性化T細胞とがん細胞は腫瘍局所で“グルコースの奪い合い”という戦いを繰り広げています。

 免疫チェックポイント分子である活性化T細胞表面上のPD-1に対し、がん細胞はPD-L1を発現してT細胞の活性を抑制していることはよく知られていますが、この相互作用がT細胞のグルコース取り込みを抑制していることが近年の研究によって明らかとなっています。がん細胞はこのように免疫系から回避するために免疫細胞の代謝をも制御しており、がん免疫の研究分野ではがん細胞だけでなく、免疫細胞の代謝を理解することが重要となっています。

 

参考文献

1)

Z. Yin, L. Bai, W. Li, T. Zheng, H. Tian, and J. Cui, “Targeting T cell metabolism in the tumor microenvironment: an anti-cancer therapeutic stratety”, J. Exp. Clin. Cancer Res. 2019, 38, 403.

2) L. Almeida, M. Lochner, L. Berod, and T. Sparwasser, “Metabolic pathways in T cell activation and linear differentiation”, Semin. Immunol. 2016, 28(5), 514.
3) A. Kumar and K. Chamoto, “Immune metabolism in PD-1 blockage-based cancer immunotherapy”, Int. Immunol., 2020 Jul 5;dxaa046.
4) D. G. Franchina, F. He, and D. Brenner, “Survival of the fittest: Cancer challenges T cell metabolism”, Cancer Lett., 2018, 412, 216.
5) N. Patsoukis, K. Bardhan, P. Chatterjee, D. Sari, B. Liu, L. N. Bell, E. D. Karoly, G. J. Freeman, V. Petkova, P. Seth, L. Li, and V. A. Boussiotis, “PD-1 alters T-cell metabolic reprogramming by inhibiting glycolysis and promoting lipolysis and fatty acid oxidation”, Nat. Commun., 2015, 6, 6692.

 

各阻害剤による細胞内代謝の変化・参考文献

細胞

抗原刺激

細胞内代謝の状態

文献

T cell

活性化

Glucose uptake

J. Immunol., 2008, 180, 4476

CD8(+) T cell

活性化

Glucose uptake
FAO

J. Clin. Invest., 2013, 123, 4479

CD4(+) T cell

活性化

Glucose uptake

Lactate 、ATP

eLife, 2018, 7, e30938

CD4(+) T cell

活性化

Glucose uptake 、Lactate

Glutamine uptake

FAO

Nat. Commun., 2015, 6, 6692
CD4(+) T cell

活性化

(PD-1とPD-L1の相互作用)

Glucose uptake 、Lactate

Glutamine uptake

FAO

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
グルコース代謝測定キット Glucose Assay Kit-WST G264
乳酸測定キット Lactate Assay Kit-WST L256
グルタミン測定キット Glutamine Assay Kit-WST G268
グルタミン酸測定キット Glutamate Assay Kit-WST G269

 


糖尿病

高血糖状態によるポリオール代謝の亢進

高血糖状態では、細胞内グルコース濃度が上昇しポリオール経路の代謝が亢進します。これによりNADPHが過剰に消費され、還元型グルタチオン(GSH)が減少します。
この結果、酸化ストレスが増加し細胞損傷が促進します 。

 


参考文献

M. Brownlee, “The pathobiology of diabetic complications: a unifying mechanism”, DIABETES200554, 1615.

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
NAD/NADH 測定キット NAD/NADH Assay Kit-WST N509
NADP/NADPH 測定キット NADP/NADPH Assay Kit-WST N510
グルタチオン定量キット GSSG/GSH Quantification Kit G257


老化

学術情報

  • 老化関連疾患と乳酸、NAD+の関係
  • DNA損傷により老化した細胞
  • グルタミン代謝と細胞老化

老化関連疾患と乳酸、NAD+の関係

近年、NAD+と老化との関係性が注目を集めています。マウスの個体老化モデルでは肝臓等でNAD+量の減少が認められ1)、NAD+合成酵素の阻害は老化様の細胞機能低下を惹起することが報告されています2)。また、NAD+量の減少はミトコンドリア機能低下を招き3)、一方でミトコンドリア機能の低下はNAD+量の減少、ひいては老化様の細胞機能低下を招くことが示唆されています4) 。
ミトコンドリア機能低下により増加した乳酸は老化関連疾患であるがんや糖尿病の病態進展とも密接に関わっており5), 6)、老化との関係を紐解くのに、NAD+および乳酸の変化を解析することが重要視され始めています。

 


DNA損傷により老化した細胞

 

老化細胞ではミトコンドリア機能低下に伴い、嫌気的解糖系によるATP産生を主とするため、乳酸産生量が増加しています7)
老化によるミトコンドリア機能低下の要因の一つとして、DNA損傷が挙げられます。DNAへのダメージが蓄積するとDNA修復機構が活性化し、NAD+消費量が増加します。
NAD+量の減少はミトコンドリア機能維持に重要な因子であるSIRT1活性を下げ、ミトコンドリア機能低下(電子伝達系阻害→ATP産生・NAD+量の低下)を招きます3), 8)

 


グルタミン代謝と細胞老化

腫瘍抑制メニンは、mTORC1 依存性代謝活性化を標的とすることにより、エフェクター CD8T 細胞機能障害を防止する9)

メニンは、老化や疲労などのT 細胞機能障害の予防に重要な役割を果たす腫瘍抑制因子である。メニンが欠乏すると、mTORC1 が活性化され、解糖系やグルタミン分解を介した酸化的リン酸化が亢進、CD8T 細胞の機能障害を引き起こす。また、グルタミン代謝中間産物である α Ketoglutarate は、mTORC1の活性化を維持、細胞老化の促進に寄与する (SA β gal 活性の亢進) 。グルタミン-α Ketoglutarate 経路が、CD8T 細胞機能障害の誘導に重要な役割を果たし、メニンがT細胞の老化を阻害する可能性が示唆されている。

 

参考文献

1)

J. Yoshino, K. F. Mills, M. J. Yoon and S. Imai, “Nicotinamide mononucleotide, a key NAD+ intermediate, treats the pathophysiology of diet- and age-induced diabetes in mice”, Cell Metab.201114(4), 528.

2)

L. R. Stein and S. Imai, “Specific ablation of Nampt in adult neural stem cells recapitulates their functional defects during aging”, EMBO J.201433(12), 1321.

3)

J. Wu, Z. Jin, H. Zheng and L. Yan, “Sources and implications of NADH/NAD+ redox imbalance in diabetes and its complications”, Diabetes Metab. Syndr. Obes.2016, 9, 145.

4)

A. Bratic and N. Larsson, “The role of mitochondria in aging”, J Clin Invest. 2013, 123(3), 951.

5)

I. San-Millancorresponding and G. A. Brooks, “Reexamining cancer metabolism: lactate production for carcinogenesis could be the purpose and explanation of the Warburg Effect”, Carcinogenesis201738(2), 119.

6)

Y. Wu, Y. Dong, M. Atefi, Y. Liu, Y. Elshimali, and J. V. Vadgama, “Lactate, a Neglected Factor for Diabetes and Cancer Interaction”, Mediators Inflamm.2016. DOI: 10.1155/2016/6456018

7)

Z. Feng, R. W. Hanson, N. A. Berger and A. Trubitsyn, “Reprogramming of energy metabolism as a driver of aging”, Oncotarget., 20167(13), 15410.

8)

S. Imai and L. Guarente, “NAD+ and sirtuins in aging and disease”, Trends in Cell Biology201424(8), 464.

9)

J. Suzuki, et al, “The tumor suppressor menin prevents effector CD8 T-cell dysfunction by targeting mTORC1-dependent metabolic activation.”, Commun  Nat Commun2018, 9(1), 3296.

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
細胞老化検出キット(蛍光顕微鏡・フローサイトメーター用) Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal SG03
細胞老化検出キット(マイクロプレートリーダー用) Cellular Senescence Plate Assay Kit - SPiDER-βGal SG05
ミトコンドリア膜電位検出キット JC-1 MitoMP Detection Kit MT09


その他

グルタミン代謝とオートファジー

BAG3によるグルタミナーゼの安定化を介したオートファジーとグルタミノリシスの促進

BAG3は、アポトーシスや細胞分化、マクロオートファジー等の様々な細胞機能の制御に関与するタンパク質である。BAG3 が過剰発現した細胞では、グルタミナーゼ (GLS)のスクシニル化が促進されることにより、ユビキチン化とそれに続くプロテアソーム分解が防がれ、GLS タンパク質が安定化する。GLSが安定化することで、グルタミン分解が促進されるため、グルタミン消費が亢進し、細胞内グルタミン酸およびグルタミン代謝中間産物であるα Ketoglutarate が増加する。グルタミン分解の促進により生じる培養液中のアンモニアは、オートファジーの活性化に寄与する。グルタミノリシスが亢進しているがん細胞では、このBAG3 ががん治療の標的になる可能性が示唆されている。

※ BAG3:ヒトの組織全般に普遍的任分布するタンパク質であり、種々のストレスにより誘導される。アポトーシス、細胞分化、マクロオートファジー等の様々な細胞機能の制御に関与する、さらに、がんや加齢に伴う神経変性疾患に関連する、近年注目されているタンパク質。

 


参考文献

S. Zhao, et al, “BAG3 promotes autophagy and glutaminolysis via stabilizing glutaminase”, Cell Death & Disease2019, 284(10).

 

関連製品

製品用途 製品名 コード
オートリソソーム検出キット DALGreen - Autophagy Detection D675
オートファゴソーム検出キット DAPGreen - Autophagy Detection D676
DAPRed - Autophagy Detection D677

 


参考資料

学会発表 ポスター -WSTを用いた細胞の代謝解析-(PDFリンク)

 

製品分類一覧

分類一覧から探す