これからはじめる微生物実験

 

目次 (各項目に移動します)

1.微生物とは

1-1.微生物ってなんだ?

微生物とは肉眼では見えず、光学顕微鏡などで観察できるような生物の総称で、カビ、酵母、細菌、ウイルスなど多くの種類が含まれます。
微生物はウイルスなどの例外を除き「細胞」からできていますが、遺伝情報である核酸を包む核膜の有無によって、「真核生物」と「原核生物」の2種類におおきく分類されます。

1-2.微生物の大きさは?

微生物は非常に小さく個々の形態を肉眼で見ることはできません。
そのため、微生物を観察する場合は、培養液や寒天培地で大量に増殖させて濁りやコロニー(集合体)として観察したり、顕微鏡を用いることが一般的です。

 

<参考文献・ウェブサイト>
・文部科学省 ウェブサイト, "カビ対策マニュアル" 
・農林水産省 ウェブサイト "動物に使用する抗菌性物質について" 
・山口正視, "原核生物と真核生物の中間の細胞構造をもつ生物の発見", 2013, 顕微鏡, Vol48, No.2 

2.微生物に関連した注目の話題

2-1.バイオフィルム

バイオフィルムは、微生物とその代謝物である細胞外多糖(菌体外多糖 Exopolysaccharides: EPS)から構成される集合体で、歯の表面、台所や洗面台のヌメリなど、身近な環境に存在しています。
バイオフィルムは菌にとって、環境から自らを守る非常に有用な構造体とされていますが、我々人間にとっては疾病に関わる厄介な構造物です。

素材評価を簡便に測定する 製品ラインナップ
試験片用バイオフィルム形成能測定キット Biofilm TestPiece Assay Kit

バイオフィルムが形成されるとその中の菌に対しては抗生物質が効きにくくなることが知られており、近年、バイオフィルムに対する薬剤の開発や、抗バイオフィルム活性を示す食品成分の探索などが行われています。

 バイオフィルムを簡便に測定する 製品ラインナップ
バイオフィルム形成量・形成阻害測定キット Biofilm Formation Assay Kit
バイオフィルム薬剤効果測定キット Biofilm Viability Assay Kit

2-2.損傷菌

損傷菌とは、物理的・化学的なストレスにさらされて細胞の構造や機能に何らかの傷害を負った微生物細胞のことを指します。
損傷菌は、生きてはいるものの増殖能を損なっている場合があり、例えば培養法によって生死を判定すると、増殖能が低下していることから損傷菌が死菌として判定されることがあります。
また、損傷の程度にもよりますが、損傷菌はその後の環境次第で増殖能を復活させることがあり、例えば損傷菌が殺菌処理後に残ると、その後の保存中にその増殖能を復活させて食中毒の発生や腐敗をもたらす可能性があることから、特に食品業界において問題視されています。

2-3.HACCP(ハサップ)

2020年6月1日から、原則としてすべての食品事業者がHACCPに沿った衛生管理を義務化されています。
HACCPとは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、『原材料の受入から最終製品までの各工程ごとに、微生物汚染や異物混入などの危害を予測した上で、防止につながる特に重要な工程を連続的かつ継続的に監視し、記録することで製品の安全性を確保する衛生管理手法』です。
これまで一般的に行われてきた最終製品の抜き取り検査に比べて、より効果的に安全性に問題のある製品の出荷を防止する仕組みとして期待されています。

各工程における微生物検査については、これまで培養法による試験が一般的に行われてきましたが、微生物の検出までに多くの培養時間を要することから、微生物の迅速化に対しても関心が高まっています。
 

<参考文献・ウェブサイト>
・森川正章, "バイオフィルム 微生物だってひとりじゃ生きてゆけない?", 2003, 化学と生物, Vol.41, No.1
・日本バイオフィルム学会 ウェブサイト "微生物たちのお城~バイオフィルム" 
・損傷菌研究会 ウェブサイト, "損傷菌とは" 
・朝田良子ら, "生死の間をさまよう損傷菌その微生物学と動態評価—新HACCP時代における食品殺菌のダークマター?—", 2021, 化学と生物, 59(2), 64-74.
・厚生労働省 ウェブサイト, "HACCPに沿った衛生管理の制度化" 

 

3.微生物を用いた実験例

3-1.細菌の培養(培養法)

微生物の検査では培養法が一般的に用いられます。培養法とは、目的とする微生物に必要とする栄養を与えて、適切な環境で人為的に微生物を増殖させる手法です。
微生物の培養に用いる培地は性状や成分で以下のように分類され、微生物の種類や使用目的によって使い分けられています。

 寒天培地法や微量液体希釈法に比べ 短時間で検出が可能
微生物増殖アッセイキット Microbial Viability Assay Kit-WST

3-2.染色法

細菌は色素を持たないためにそのままでは顕微鏡でも観察が難しく、多くの場合は色素で染色した後に観察されます。
以下では微生物の染色に用いられているものを紹介します。

 

①グラム染色

グラム染色は細胞表層構造の違いにより細菌を二種類に大別する染色法で、微生物の形態などと組み合わせて、細菌分類の指標として広く用いられています。
本染色法ではグラム染色で染まるものを『グラム陽性』、染まらないものを『グラム陰性』と分類します。
なお、細菌の中には培養条件等によりグラム陽性となったり陰性となったりするものがあり、その場合は『グラム不定』とされます。

 

グラム陽性菌の細胞表層には厚いペプチドグリカン層が露出しており、前染色で使用するクリスタルバイオレットで青紫色に染まりますが、グラム陰性菌には細胞表層に細胞外膜が存在するため、脱色工程で使用するエタノールによって色素が抜けることで染め分けが可能となります。

②蛍光染色法

細菌や真菌の生存率を確認する場合は、寒天培地を用いたコロニー形成能によって評価されるのが一般的です。
しかし、この手法は非常に長い時間を要することに加えて、環境中に存在する微生物のほとんどは未だ最適な培養条件がわかっていないことから、培養を必ずしも必要としない蛍光染色試薬を用いた蛍光染色も用いられます。


蛍光染色法は検出までの迅速性に加えて、微生物の膜損傷の有無や、酵素活性の有無などで染め分けられることが特徴です。

 

蛍光染色色素はその特徴を活かし、複数の色素を組み合わせた微生物の生死判定や、代謝活性の変化などを簡便に評価する手段として用いられています。
また、近年では蛍光顕微鏡で取得した画像を簡単に数値化できる装置や、ソフトウェアが普及していることもあり、創薬や食品など、幅広い分野での活用が広がっています。

 

<微生物検出に利用される蛍光色素の例>

蛍光色素 励起波長(nm) 蛍光波長(nm 染色対象・指標 用途例
DAPI 358 461 DNA 全菌の検出、マイコプラズマ否定試験
Hoechst 33342 352 461 DNA 全菌の検出、マイコプラズマ否定試験
AO(Acridine orange) 490 526/650 1本鎖、2本鎖の核酸 核酸染色、全菌の検出
SYBR Green 497 520 DNA 全菌の検出
EB(Ethidiumbromide) 518 605 DNA 全菌の検出
PI(Propidium iodide) 530 615 DNA 死菌の検出
CTC 430 480/630 呼吸活性 生菌の検出
CFDA 493 515 エステラーゼ活性 生菌の検出
2-NBDG 465 540 グルコースの取込み 生菌の検出

<蛍光二重染色の実験例>
CTC(呼吸活性で発色)とDAPI(全菌を染色)を組み合わせ、黄色ブドウ球菌 (S. aureus) の生死を判定する場合の実験例を以下に示します。

上記の手順で染色をすると、以下のような染色画像が得られます。
呼吸活性がない細菌を死菌とする場合、重ね合わせた画像で赤く染まっている細菌を生菌、青のみで染まっている菌を死菌としてカウントします。
 

◎蛍光イメージング・・・黄色ブドウ球菌 (S. aureus) を染色した例

 

◎応用編・・・画像解析ツールを用いた蛍光イメージング画像の数値化例
蛍光色素で染色して取得した画像データは、装置に付属した解析ソフトやweb上のフリーソフトを用いることで、以下のように評価結果を数値化することも可能です。
 

 「菌」を二重染色する 製品ラインナップ
DAPI(全菌)/ PI(膜損傷) -Bacstain- Bacterial Viability Detection Kit - DAPI/PI
CTC(呼吸活性)/ DAPI(全菌) -Bacstain- Bacterial Viability Detection Kit - CTC/DAPI
CFDA(酵素活性)PI(膜損傷) -Bacstain- Bacterial Viability Detection Kit - CFDA/PI

<参考文献・ウェブサイト>
・森 勝美, "技術用語解説 グラム陽性菌・陰性菌", 1984, 化学と生物, Vol.31, No.11, 759-760.
・中村 聡ら, "新版ビギナーのための微生物実験ガイド", 講談社
・国立医薬品食品衛生研究所 医薬品部 ウェブサイト, "微生物試験とリアルモニタリング"


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