全3回 細胞代謝学術セミナー​

同仁化学研究所では 細胞代謝研究をテーマに専門の先生方をお招きし、全3 回にわたるセミナーを予定しています。​
研究を専門としていない研究者様や学生様にとっても大変有意義なセミナーになると考えています。​

日程 講演タイトル
第1回 2023年12月11日(月)
腫瘍浸潤リンパ球におけるミトコンドリア代謝異常の解明
講師:冨樫 庸介 先生
第2回 2023年12月13日(水)
細胞老化・個体老化に伴う代謝レジリエンス変容機構とその応用
講師:近藤 祥司 先生​
第3回 2024年1月24日(水)
転写・エピゲノムから見た代謝制御
講師:松村 欣宏 先生

過日開催したセミナーのアーカイブを公開しています。

講演内容

第1回 2023年12月11日(月) 16:00-17:00

腫瘍浸潤リンパ球におけるミトコンドリア代謝異常の解明

講師:冨樫 庸介 先生

職位​:岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医学系)教授​
千葉大学大学院 医学研究院 客員教授​
千葉県がんセンター研究所 客員研究員

講演者より:
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に代表されるがん免疫療法の効果が証明されましたが、その効果は不十分でまだ課題の多い治療です。ICIはT細胞を活性化し治療効果を発揮しているため、我々はその本態解明のために腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の解析を行ってきました。その過程で、TILに特徴的なミトコンドリア異常を同定し、抗腫瘍免疫応答に影響することを明らかにしつつあります。本セミナーではその過程で用いた様々な技術や実際のデータを交え、がん免疫研究の分野における免疫代謝研究の一部を紹介をしたいと思います。​

第2回 2023年12月13日(水) 16:00-17:00

細胞老化・個体老化に伴う代謝レジリエンス変容機構とその応用​


講師:近藤 祥司 先生

職位​:京都大学医学部付属病院 高齢者医療ユニット長
地域ネットワーク医療部 准教授

講演者より:
「ヘイフリックの成長限界」の発見は、テロメア・テロメラーゼ研究に発展した。さらに、テロメア非依存性細胞老化としてストレス細胞老化(SIS)が報告された。細胞老化は、「発癌に対する生体バリアー」という正の側面と、「慢性炎症惹起(SASP)」という負の効果を備え、個体老化における重要性が再認識された。後者は、老化細胞除去(セノリシス)の概念で、注目される。一方、「カロリー制限仮説(CR)」の知見より、サーチュイン、AMPK、TORC、FOXO転写因子などの調節低分子物質の生理活性が報告された。最近、これら代謝調節物質に、慢性炎症除去作用が報告された(セノモーフィック)。これら2つを合わせ、Senotherapyと総称する。​
我々のラボでは、「老化と代謝」をテーマに取り組んでいる。解糖系代謝亢進は多くのがん細胞で観察され、ワールブルグ効果で知られる。我々は解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼPGAMの生物学的多面性を報告してきた。PGAMは細胞老化ストレスにより、Mdm2依存性のユビキチン化修飾を受け、分解される。逆に、PGAMタンパクの安定化は、腫瘍形成やワールブルグ効果を促進する。特に発癌Ras変異シグナルを持つ細胞では、PGAMとチェックポイント遺伝子Chk1キナーゼが結合し、ワールブルグ効果を維持する。PGAMの新規「非酵素活性」と呼べる。一方、我々は全血メタボローム技術を開発し、ヒト血液の老化関連マーカー(老化、飢餓、フレイル、サルコペニア、認知症など)の同定に成功、ヒト老化疾患におけるメタボライトの重要性を示唆する。我々の知見とともに、老化研究の現状を紹介する。​

第3回 2024年1月24日(水) 16:00-17:00

転写・エピゲノムから見た代謝制御​


講師:松村 欣宏 先生

職位​:秋田大学大学院医学系研究科 病態制御医学系
分子機能学・代謝機能学講座 教授​

講演者より:
我々の体内には大きく分けて約200種類の細胞が存在し、それぞれの細胞は特徴的な代謝プロファイルを持ちます。発生過程あるいは外からの刺激を受けることで細胞は転写やエピゲノムを変化させ、細胞固有の代謝プロファイルを獲得し、個体の恒常性維持に働きます。本セミナーでは細胞の代謝制御および転写・エピゲノムの概要をはじめにお話しします。次に全身のエネルギー代謝を司る脂肪細胞を例に、転写およびエピゲノムを介した代謝制御の研究についてご紹介したいと思います。​

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