線維形成は、組織傷害に対する正常な防御反応の一部であるが、過剰な線維形成は致命的な疾患(線維性疾患)につながることが知られている。鉄の蓄積と線維性疾患の発症の関連性が研究されているが、詳細な原因は未だ明確ではない。本論文では、鉄の蓄積が老化と線維症において中心的な役割を果たしていることを示唆し、鉄代謝が老化関連疾患の潜在的治療標的であることを明らかとしている。
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Iron accumulation drives fibrosis, senescence and the senescence-associated secretory phenotype
論文へのアクセスはこちら: Maus,M. et al. Nat. Metab.(2023)
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注目ポイント
・血管障害、溶血性障害が引き金となり鉄が蓄積することで、老化を誘導し線維化が促進される
・老化細胞は、細胞外鉄の増加が収まった後も持続的に鉄を蓄積する
・様々な種類の老化を誘発する障害にさらされた細胞は、主にリソソーム内にフェリチンと結合した鉄を豊富に蓄積する
・高レベルの不安定鉄は活性酸素種(ROS, reactive oxygenspecies)とSASP(senescence-associated secretory phenotype)の発生を促進する
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関連製品 |
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- DNAダメージ(γH2AX)検出抗体
- DNA Damage Detection Kit - γH2AX - Green / Red / DeepRed
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アプリケーションデータ |
老化誘導細胞におけるリソソーム量とpH変化の解析

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目的:ドキソルビシン(DOX, Doxorubicin )処理によって老化を誘導したA549細胞でのリソソーム量とpH変化を調査した。
手法:老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-βGal, Senescence-associated β-galactosidase)活性は、Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGalを使用し検出した。リソソーム量はLysoPrime Deep Redを使用し、リソソーム内pHはpHLys Redを使用しそれぞれ検出した。蛍光イメージングを用いて、老化細胞におけるリソソーム量とpHの変化を、非老化細胞と比較して観察した。補正されたリソソーム量とpHの蛍光強度の変化もプレートリーダーで測定した。
結果:我々の発見は、DOXによって誘導された老化は、非老化細胞と比較してリソソーム量の増加とpHの酸性化したことを示している。得られた結果は、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブによって誘導された老化細胞におけるリソソーム活性の亢進を示した過去の報告*と一致している。蛍光イメージングとプレートリーダーのデータは、いずれもそれらの知見を裏付けている。
*Miguel Rovira, et. al., Aging Cell (2022)
<蛍光顕微鏡の観察条件>
SA-βGal(Green):Ex = 488 nm, Em = 490 – 550 nm
リソソームpH (Red):Ex = 561 nm, Em = 560 – 620 nm
リソソーム量 (Deep Red):Ex = 633 nm, Em = 640 – 700 nm
<プレートリーダーの測定条件>
SA-βGal: Ex = 525 – 535 nm, Em = 550 – 570 nm
リソソームpH: Ex = 555 – 565 nm, Em = 590 – 610 nm
リソソーム量: Ex = 645 – 655 nm, Em = 690 – 710 nm
<使用製品>
- Cellular Senescence Detection Kit
- pHLys Red - Lysosomal Acidic pH Detection
- LysoPrime Deep Red - High Specificity and pH Resistance
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