老化細胞は、急性的には創傷治癒を促進し、腫瘍形成を防ぐが、炎症促進作用もあるため、慢性的には組織の衰えを悪化させることが知られていることから、抗老化療法のターゲットとして注目されている。しかし、なぜ生体内で老化細胞が形成されるのか、老化細胞が組織の老化にどのような影響を及ぼすのか、老化細胞を除去することでどのような効果が得られるのかについては、いまだ不明であった。本論文では、老化したショウジョウバエの脳で自然に発生する老化グリアを用いてアクチベータープロテイン1(AP1)活性にてスクリーニングし、神経細胞のミトコンドリア機能障害に応答して老化グリアが出現することを明らかにした。老化グリアにおけるAP1活性を標的とすることで、老化バイオマーカーを緩和し、ハエの寿命を延ばし、脂質の蓄積を防ぐことができるが、神経細胞のミトコンドリア機能は低下したままになることを明らかとした。 |
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Senescent glia link mitochondrial dysfunction and lipid accumulation |
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注目ポイント ・老化したショウジョウバエの脳の老化グリアは、神経細胞のミトコンドリア機能不全に由来し、老化に関連する転写因子であるAP1を発現している ・AP1+老化グリアは、非老化グリアに脂質を蓄積させ、老化マーカーを増加させる ・老化グリアのAP1を標的とするとハエの寿命は延びるが、脳の酸化的損傷が増加し、神経細胞のミトコンドリア機能は低下したままになる |
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関連製品 | |||
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アプリケーションデータ | |||
固定化細胞を用いた脂肪滴染色と細胞老化アッセイ(イメージング) |
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Doxorubicin処理により老化誘導したA549細胞と通常細胞を用いて、老化細胞における脂肪滴蓄積のイメージング解析を行った。老化マーカーとしてSA-β-GalをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue, 脂肪滴をLipi-Deep Redで検出した。 [検出条件] SPiDER Blue 検出波長: 405 nm (Ex), 400–550 nm (Em), 1.0%, 600V Lipi-Deep Red 検出波長: 633 nm (Ex), 650–700 nm (Em), 1.0%, 650V
*事前に、通常培地で培養した細胞 と、DOX 処理 (0.2 μM DOX 3 days → 通常培地 3 days) した細胞を準備 1. A549 細胞をμ-slide 8 well plate (ibidi 社) に播種し、37℃ CO2 インキュベーターで一晩培養した。(1 x 105 cells/ml の細胞懸濁液を200 µl 入れた) 2. 上澄みを取り除き、PBS で1回洗浄後、4% パラホルムアルデヒド (PFA) / PBS 溶液を添加し、室温で30 分間固定化した。 3. 上澄みを取り除き、細胞をPBS で1 回洗浄した。 4. Assya bufferで調製した15 μM SPiDER Blue + 0.1 µM Lipi-Deep Red を添加し、 37℃で30 分間インキュベートした。 *5% CO2 インキュベーターは使用しない 5. 上澄みを取り除き、PBS で1 回洗浄後、PBS を200 µl添加し共焦点レーザー顕微鏡 (60 倍率) で観察した。
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Doxorubicin誘導老化細胞を用いた酸化ストレス関連マーカーとの多重染色解析(フローサイトメトリー) |
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Doxorubicin処理により老化誘導したA549細胞(DOX)と通常細胞(CTRL)を用いて、老化細胞の酸化ストレス関連マーカーの変化をフローサイトメトリーで多重染色解析を行った。老化マーカーとしてSA-β-GalをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue, 酸化ストレスマーカーとしてtotal ROSの検出をROS Assay Kit -Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-, DNAダメージマーカーとしてγH2AXをDNA Damage Detection Kit - γH2AX – Redで検出した。 <実験手順> |