これからはじめる オートファジー検出

オートファジーとは?

オートファジーは、細胞質内で機能不全に陥ったタンパク質や小器官の分解プロセスのことです。この過程では、細胞質に二重膜からなる隔離膜が出現し、徐々に膨張して凝集したタンパク質や損傷した小器官を包み込み、オートファゴソームが形成されます。オートファゴソームはリソソームと融合し、酸性環境のオートリソソームを形成し、リソソーム内の消化酵素によってオートリソソーム内の内容物が分解されます。このような細胞機能は、老化やパーキンソン病などの神経変性疾患にも関係していると言われており、簡便なオートファジーの検出法が求められています。

 

オートファジー試薬選択ガイド

小社では、オートファジーの評価方法および評価目的に応じて選択できるよう3 種類の蛍光低分子試薬およびキットをご用意しております。

検出目的から選ぶ

  蛍光低分子 蛍光タンパク質
 DAPGreen   DAPRed   DALGreen  Autophagic Flux
Assay Kit
 GFP-LC3   RFP-LC3  mRFP-GFP-LC3
検出
フェーズ
オートファゴソーム - オートファゴソームと
オートリソソームを
染め分けできる
オートファゴソームと
オートリソソームを
染め分けできる
オートリソソーム -
トランスフェクション 不要 必要

Autophagic Flux Assay Kit: このキットには、オートファゴソームおよびオートリソソーム検出色素(DAPRed)、オートリソソーム検出色素(DALGreen)、およびリソソーム酸性化阻害剤(bafilomycin A1)が含まれています。Autophagic Flux Assay Kitは、オートファゴソームの形成、リソソームの融合、内容物の消化をモニターすることで、オートファジックフラックスを正確に評価することができます。
 

検出装置・蛍光特性から選ぶ

 

オートファジー関連製品がいくつかあるけど、どれを選んだらいい?

例えば薬剤のオートファジー活性をスクリーングしたい場合:

まずDAPGreenを使って
オートファジー活性をプレートリーダーで
多検体測定し、候補を絞る

 

 
 

オートファジー活性が変化する候補が見つかったら
Autophagic Flux Assay Kitを使って阻害もしくは活性化されているか詳細を確認

 

 


 

オートファジー試薬検出原理

DALGreen / DAPGreenはホスファチジルエタノールアミンのような膜内リン脂質と類似の構造を持つため、疎水性の脂質二重膜内に取り込まれます。


 

リポソーム膜形成時にDALGreenとDAPGreenをそれぞれ取り込ませ、共焦点顕微鏡で観察した。DAPGreenは脂質二重膜に取り込まれた時点で強い蛍光を発したが、DALGreenでは弱い蛍光が観察された。Scale bar: 20 μm


DAPGreen:脂質二重膜内の疎水場環境に応答して蛍光強度が上がる(AutophagosomeとAutolysosome両方検出する)



DALGreen :脂質二重膜内に取り込まれ、酸性環境になることで蛍光強度が上がる(Autolysosomeを検出する)

オートファジー特異性などの詳細な実験結果はこちらの原著論文をご参照ください

DAPGreen/DALGreen: H. Iwashita, et al., "Small fluorescent molecules for monitoring autophagic flux", FEBS Letters., 2018592, (4), 559–567.
DAPRed:H. Sakurai, et al"Development of small fluorescent probes for the analysis of autophagy kineticsiScience​, 202326, 107218.
 

代表的な論文使用例

題名 Discovery and Structure-Based Optimization of Novel Atg4B Inhibitors for the Treatment of Castration-Resistant Prostate Cancer
Kudo, Y. et al., Journal of Medical Chemistry2022, 65(6)
使用用途 オートファジー活性を指標にATG4B阻害剤を評価

使用製品/
検出法

DAPGreen/蛍光顕微鏡

 

題名 S-Nitrosylation of p62 Inhibits Autophagic Flux to Promote α-Synuclein Secretion and Spread in Parkinson's Disease and Lewy Body Dementia
Oh, C. et al., Journal of Neuroscience2022, 41(14), 3011-3024
使用用途 p62(C331A) knock-in mutant がオートファジー阻害(オートリソソームの減少)を起こすことを確認
使用製品/
検出法

DALGreen&DAPRed (Autophagic Flux Assay Kit)/蛍光顕微鏡

 

題名 Scd1 and monounsaturated lipids are required for autophagy and survival of adipocytes
Mori, H. et al., Molecular Metabolism2024, 83, 101916
使用用途 SCD1KOによりオートファジー阻害(オートリソソームの減少)を起こすことを確認
使用製品/
検出法

DALGreen&DAPRed (Autophagic Flux Assay Kit)/蛍光顕微鏡

 

 

実験例:共焦点蛍光顕微鏡を用いた Bafilomycin A1 によるオートリソソームの形成阻害の解析

HeLa 細胞にて、リソソーム酸性化阻害剤 Bafilomycin A1 (Baf. A1) で処理した際のDALGreenとDAPRedの変化を検出しました。DALGreen は、Baf. A1 添加に伴うオートリソソームの形成阻害により、飢餓誘導細胞と比較して蛍光の低下が確認されましたが、 DAPRedの蛍光は、 Baf. A1 添加に伴うオートファゴソームの蓄積により、飢餓誘導細胞と比較して蛍光の増加が確認されました。実験条件の詳細は、製品ページ(使用製品:A562 Autophagic Flux Assay Kit)からご確認ください。

※Baf. A1 の希釈倍率、処理時間、添加のタイミングにより、イメージング解析に影響を及ぼす恐れがあります。詳細はこちらから「よくある質問」をご参照ください。

 

実験例:共焦点蛍光顕微鏡を用いた E64d/Pepstatin A によるリソソーム内分解阻害の解析

HeLa 細胞にて、リソソームプロテアーゼ阻害剤 E64d/Pepstatin A (Pep A) で処理した際の DALGreen と DAPRed の変化を検出しました。E64d/pepstatin A 添加に伴うリソソーム内分解阻害によりオートリソソームが蓄積し、飢餓誘導単独と比較して DALGreen、DAPRed 共に蛍光の増加が確認されました。実験条件の詳細は、製品ページ(使用製品:A562 Autophagic Flux Assay Kit)からご確認ください。

 

 


 
 


 

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