オートファジーがミクログリアの老化を防ぐ

オートファジーは、傷害を受けたオルガネラ、ミスフォールドしたタンパク質、その他の細胞の残骸を分解・再利用することで細胞内恒常性を維持する重要なプロセスです。オートファジー機能不全はアルツハイマー病(AD)の病因に関与していることが知られているが、ミクログリアにおけるオートファジー不全の作用機序は未だ解明されていない。本論文では、疾患関連ミクログリアがオートファジー機能不全により、老化様の表現型を示し神経病理を悪化させることから、ミクログリアの老化とオートファジーを標的とすることが、ADの有望な治療戦略であることを示した。

Autophagy enables microglia to engage amyloid plaques and prevents microglial senescence

論文へのアクセスはこちら: Insup Choi, et. al., Nature Cell Biology, (2023).

注目ポイント

・ミクログリアのオートファジーを阻害すると、ミクログリアがアミロイド斑から離脱し、アルツハイマー病(AD)マウスの神経病理を悪化させる

・オートファジーの欠損によりミクログリアの老化が促進する

・この老化ミクログリアを除去すると、ADマウスの神経病理が緩和される

関連製品
オートファジー経路測定キット
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アプリケーションデータ

試薬の添加だけでオートファジー経路(flux)を解析できる

検出原理

 DALGreenおよびDAPRedで染色したHeLa細胞を用いて、リソソーム酸性化阻害剤バフィロマイシンA1(Baf.A1)により誘導されるオートファジーによる一連の流れの変化を評価した。飢餓状態と比較して、Baf.A1の添加によるオートリソソーム形成阻害条件下では、DALGreenの蛍光シグナルは減少した。一方、DAPRedの蛍光シグナルは同条件下で増加したことから、Baf. A1はオートファゴソームの蓄積を誘導した。

 

実験データ

 

実験条件
CTRL: 通常培養条件、Stv.: 飢餓誘導条件、Baf. A1: オートリソソーム形成阻害条件
DALGreen検出条件: 488 nm (Ex), 490–550 nm (Em)
DAPRed検出条件: 561 nm (Ex), 565–700 nm (Em)

 

操作
1. μ-slide 8 well plate (ibidi社) に HeLa 細胞 (1.0 x 104 cells/well) を播種し、5% CO2 存在下、37℃ で一晩培養した。
2. 10% FBS 含有 MEM 培地で2回洗浄後、DALGreen/DAPRed working solution (DALGreen: 1 µM、DAPRed: 0.2 µM) を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で30分インキュベートした。
3. 上澄みを取り除き、細胞を 10% FBS 含有 MEM 培地で2回洗浄した。
4. 以下の条件でサンプルを準備した。
  ・10% FBS含有 MEM 培地を well に200 μl加え、 5% CO2 存在下、 37℃ で2時間20分インキュベートした。(コントロール条件)
  ・アミノ酸不含培地 (富士フイルム和光純薬、製品コード: 048-33575) を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で2時間20分インキュベートした。(飢餓誘導条件) 
  ・アミノ酸不含培地を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で2時間インキュベートした。上澄みを取り除き、Bafilomycin A1 working solution (リソソーム酸性化阻害剤)    (2000 倍希釈)を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で20分インキュベートした。(オートリソソーム形成阻害条件)
5. 共焦点蛍光顕微鏡で観察した。

使用製品
Autophagic Flux Assay Kit

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