カルノシンの作用がリソソーム依存的ながん細胞の免疫逃避を促進する

腫瘍細胞は、大量のグルコースを消費して乳酸を生成するため腫瘍微小環境を酸性化することがよく知られているが、腫瘍細胞がこの酸性化のストレスにどのように適応しているのか詳細は不明であった。本論文では、カルノシンが細胞質のプロトンの移動と放出を促進する移動性プロトンキャリアとして機能することで細胞内pH(pHi)の恒常性を維持し、その結果リソソームの細胞内分布、酸性化、活性を制御することを明らかにした。さらに、リソソーム活性を維持することで、カルノシンは核転写因子X-box binding 1(NFX1)の分解を促進し、ガレクチン-9とT細胞を介した免疫逃避と腫瘍形成を引き起こすことを示した。

Carnosine regulation of intracellular pH homeostasis promotes lysosome-dependent tumor immunoevasion
論文へのアクセスはこちら:  Ronghui Yan, et. al., Nature Immunology, 2024.

注目ポイント
・カルノシン合成酵素CARNS2は低酸素下でカルノシン合成を促進する
・カルノシンは、pHiの恒常性を維持することにより、リソソームの細胞内分布、酸性化、活性を制御している
・リソソーム活性を維持することで、カルノシンはNFX1の分解を促進し、ガレクチン-9とT細胞を介した免疫逃避と腫瘍化を引き起こす

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アプリケーションデータ

試薬の添加だけでオートファジー経路(flux)を解析できる

検出原理

 DALGreenおよびDAPRedで染色したHeLa細胞を用いて、リソソーム酸性化阻害剤バフィロマイシンA1(Baf.A1)により誘導されるオートファジーによる一連の流れの変化を評価した。飢餓状態と比較して、Baf.A1の添加によるオートリソソーム形成阻害条件下では、DALGreenの蛍光シグナルは減少した。一方、DAPRedの蛍光シグナルは同条件下で増加したことから、Baf. A1はオートファゴソームの蓄積を誘導した。

 

実験データ

 

実験条件
CTRL: 通常培養条件、Stv.: 飢餓誘導条件、Baf. A1: オートリソソーム形成阻害条件
DALGreen検出条件: 488 nm (Ex), 490–550 nm (Em)
DAPRed検出条件: 561 nm (Ex), 565–700 nm (Em)

 

操作
1. μ-slide 8 well plate (ibidi社) に HeLa 細胞 (1.0 x 104 cells/well) を播種し、5% CO2 存在下、37℃ で一晩培養した。
2. 10% FBS 含有 MEM 培地で2回洗浄後、DALGreen/DAPRed working solution (DALGreen: 1 µM、DAPRed: 0.2 µM) を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で30分インキュベートした。
3. 上澄みを取り除き、細胞を 10% FBS 含有 MEM 培地で2回洗浄した。
4. 以下の条件でサンプルを準備した。
  ・10% FBS含有 MEM 培地を well に200 μl加え、 5% CO2 存在下、 37℃ で2時間20分インキュベートした。(コントロール条件)
  ・アミノ酸不含培地 (富士フイルム和光純薬、製品コード: 048-33575) を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で2時間20分インキュベートした。(飢餓誘導条件) 
  ・アミノ酸不含培地を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で2時間インキュベートした。上澄みを取り除き、Bafilomycin A1 working solution (リソソーム酸性化阻害剤)    (2000 倍希釈)を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で20分インキュベートした。(オートリソソーム形成阻害条件)
5. 共焦点蛍光顕微鏡で観察した。

使用製品
Autophagic Flux Assay Kit

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