SKA2が制御する分泌型オートファジーの亢進が神経炎症誘発性神経変性を促進する

高濃度の炎症性サイトカインは神経毒性を誘発し、炎症に起因する神経変性を触媒するが、ミクログリアからの放出機構は未だ解明されていない。本論文では、分泌型オートファジー(Secretory Autophagy: SA)が、SKA2とFKBP5のシグナル伝達を介して、神経炎症が介在する神経変性を制御していることを明らかにした。また、SKA2をノックダウンすると、SAが亢進し、神経炎症が起こり、その後神経変性が起こり、海馬が完全に萎縮することが確認された。SAの亢進はIL-1βの放出を増加させ、NLRP3-インフラマソームの活性化とガスダーミンDを介した神経毒性を含む炎症性フィードフォワード悪循環の一因となり、最終的に神経変性を引き起こすことが示された。さらに、死後ヒト脳のタンパク質解析から、アルツハイマー病ではSAが亢進していることが明らかにされた。これらの結果は、SKA2が制御するSAの亢進が神経炎症を促進し、アルツハイマー病と関連していることを示唆している。

SKA2 regulated hyperactive secretory autophagy drives neuroinflammation-induced neurodegeneration
論文へのアクセスはこちら:  Jakob Hartmann, et. al., Nature Communications, (2024)

注目ポイント

・SKA2はFKBP5の機能を阻害することでSA依存性のIL-1β放出を抑制する

・雄のマウスで海馬のSKA2をノックダウンすると、SAが亢進し、神経炎症とそれに続く神経変性が引き起こされる

・SAが亢進するとIL-1βの放出が増加し、NLRP3インフラマソームの活性化やガスダーミンDを介した神経毒性など、炎症によるフィードフォワード悪循環に寄与する

・死後のヒト脳のタンパク質解析から、アルツハイマー病ではSAが亢進していることが示された

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アプリケーションデータ

試薬の添加だけでオートファジー経路(flux)を解析できる

検出原理

 DALGreenおよびDAPRedで染色したHeLa細胞を用いて、リソソーム酸性化阻害剤バフィロマイシンA1(Baf.A1)により誘導されるオートファジーによる一連の流れの変化を評価した。飢餓状態と比較して、Baf.A1の添加によるオートリソソーム形成阻害条件下では、DALGreenの蛍光シグナルは減少した。一方、DAPRedの蛍光シグナルは同条件下で増加したことから、Baf. A1はオートファゴソームの蓄積を誘導した。

 

実験データ

 

実験条件
CTRL: 通常培養条件、Stv.: 飢餓誘導条件、Baf. A1: オートリソソーム形成阻害条件
DALGreen検出条件: 488 nm (Ex), 490–550 nm (Em)
DAPRed検出条件: 561 nm (Ex), 565–700 nm (Em)

 

操作
1. μ-slide 8 well plate (ibidi社) に HeLa 細胞 (1.0 x 104 cells/well) を播種し、5% CO2 存在下、37℃ で一晩培養した。
2. 10% FBS 含有 MEM 培地で2回洗浄後、DALGreen/DAPRed working solution (DALGreen: 1 µM、DAPRed: 0.2 µM) を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で30分インキュベートした。
3. 上澄みを取り除き、細胞を 10% FBS 含有 MEM 培地で2回洗浄した。
4. 以下の条件でサンプルを準備した。
  ・10% FBS含有 MEM 培地を well に200 μl加え、 5% CO2 存在下、 37℃ で2時間20分インキュベートした。(コントロール条件)
  ・アミノ酸不含培地 (富士フイルム和光純薬、製品コード: 048-33575) を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で2時間20分インキュベートした。(飢餓誘導条件) 
  ・アミノ酸不含培地を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で2時間インキュベートした。上澄みを取り除き、Bafilomycin A1 working solution (リソソーム酸性化阻害剤)    (2000 倍希釈)を well に 200 μl 加え、 5% CO2 存在下、 37℃で20分インキュベートした。(オートリソソーム形成阻害条件)
5. 共焦点蛍光顕微鏡で観察した。

使用製品
Autophagic Flux Assay Kit

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