選択的オートファジーの鍵は相分離にあり

細胞が不要になった構成要素を分解・再利用する仕組みとして知られるオートファジー。なかでも、特定の対象を識別して選別的に分解する「選択的オートファジー」は、細胞内恒常性の維持に不可欠な役割を果たしている。近年、この選択的オートファジーの開始に重要な役割を果たす「相分離」のメカニズムに注目が集まっている。本論文では、酵母を用いて、オートファジー受容体と標的カーゴの間の低親和性・多価な相互作用が、カーゴ表面に「イニシエーションハブ」と呼ばれる相分離構造を形成することを明らかにした。これが、オートファジー開始部位(PAS)の形成へとつながる鍵であることが示唆された。さらに、カーゴと受容体の高親和性な結合は逆に進行を妨げること、さらには人為的に相分離を誘導することで「分解されなかったタンパク質」を分解可能にする技術応用の可能性も示された。ヒト細胞でも同様の相分離現象が観察され、進化的に保存された基本原理であることも確認されている。これらの結果は選択的オートファジーの工学的制御や、新たな創薬標的開発の糸口として、基礎・応用の両面で大きな意義を持つといえる。

Phase separation of initiation hubs on cargo is a trigger switch for selective autophagy

論文へのアクセスはこちら:  Licheva, M., et al, Nat Cell Biol, (2025)

注目ポイント

・選択的オートファジーの開始はカーゴ表面での相分離が鍵となる

・オートファジー受容体との高親和性結合は、選択的オートファジーの進行を阻害する

・非分解性だったウイルスタンパク質をネオカーゴ化し、選択的オートファジーでの分解を可能にした

関連製品
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アプリケーションデータ

Bafilomycin A1 によるオートリソソームの形成阻害の解析

 

 DALGreenおよびDAPRedで染色したHeLa細胞を用いて、リソソーム酸性化阻害剤バフィロマイシンA1(Baf.A1)により誘導されるオートファジーによる一連の流れの変化を評価した。飢餓状態と比較して、Baf.A1の添加によるオートリソソーム形成阻害条件下では、DALGreenの蛍光シグナルは減少した。一方、DAPRedの蛍光シグナルは同条件下で増加したことから、Baf. A1はオートファゴソームの蓄積を誘導した。

 

実験データ

 

<実験条件>
CTRL: 通常培養条件、Stv.: 飢餓誘導条件、Baf. A1: オートリソソーム形成阻害条件
DALGreen検出条件: 488 nm (Ex), 490–550 nm (Em)
DAPRed検出条件: 561 nm (Ex), 565–700 nm (Em)


<使用製品>
Autophagic Flux Assay Kit

Tauタンパク質液滴の性質に与えるクラウディング剤の影響    

LLPS Characterization-dye Setを用いてTauタンパク質液滴の性質の検討を行った。Tauタンパク質に足場となるヘパリンを添加すると、Tauタンパク質液滴が観察され、アミロイド染色色素であるThioflavin T及びCongo Red両色素で陽性を示した。
また、疎水場環境で蛍光を発するANS、SepaFluoいずれの色素でも本液滴は陽性となり、アミロイド様の凝集構造を示すことが示唆されました。
一方、クラウディング剤PEG8000を添加した系においては、 Tauタンパク質液滴の肥大化が認められ、すべての色素で蛍光シグナルの減弱が認められました。
これらの結果からクラウディング剤による相分離液滴形成の促進が、Tauタンパク質液滴の性質に影響を与える可能性が示唆されました。

 

<実験条件>
Tau 441(WT):10 μmol/l    
Heparin:20%    
PEG8000:10 %      
Buffer: 10 mmol/l HEPES (pH 7.4), 150 mmol/l NaCl
Dye:10 μmol/l Thioflavin T, Congo Red, ANS, 100 nmol/l SepaFluor      
Incubate (37℃):7 days
Fluorescence microscope :Zeiss LSM800

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