BNIP3を介したマイトファジー誘導が老化を遅らせる

ミトコンドリアの機能不全は脳老化の顕著な特徴ですが、ミトコンドリアの品質管理、神経細胞の老化、健康状態に対するミトコンドリアと老化の相互関係については十分に解明されていない。本論文では、ショウジョウバエの脳において、老化に伴いミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)が低下し、同時にミトコンドリア含量も増加することを示した。また、成体神経系において、ミトコンドリア外膜タンパク質であるBCL2 interacting protein 3(BNIP3)がマイトファジーを誘導し、老化脳における機能不全ミトコンドリアの蓄積を防ぐことを明らかにした。さらに、BNIP3を介したマイトファジーの誘導は、生物の寿命と健康寿命を延ばし、老齢ハエの筋肉と腸管の恒常性を改善することから、全身性の非自律的効果が示唆された。これらの結果は、BNIP3が脳の老化を抑制し、加齢に伴う生物全体の健康状態を延長させる治療標的となる可能性を示唆している。

Neuronal induction of BNIP3-mediated mitophagy slows systemic aging in Drosophila

論文へのアクセスはこちら:  Schmid, E.T., et al, Nat Aging, (2022)

注目ポイント

・ショウジョウバエの脳では、加齢とともにマイトファジーが減少し、ミトコンドリアの量が増加することが明らかになった

・成体の神経系において、BNIP3を誘導すると、マイトファジーが促進され、老化した脳における機能不全ミトコンドリアの蓄積を防ぐ

・神経系におけるBNIP3を介したマイトファジーの誘導は、ショウジョウバエの寿命と健康寿命を延ばすだけでなく、老化したハエの筋肉や腸の恒常性を改善し全身性の非自律的効果が示唆された

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アプリケーションデータ

リソソーム機能とミトコンドリアROS


 CCCPとAntimycin(AN)は、ミトコンドリアのROSを誘導し、ミトコンドリア膜電位の低下につながることが知られている。最近の研究では、CCCPはミトコンドリア活性酸素だけでなく、リソソーム機能障害も誘導することが示されている。ミトコンドリアのROSを観察するために、HeLa細胞をミトコンドリアスーパーオキシド検出用のMitoBright ROS Deep Redで標識し、リソソーム量とpHをLysoPrime GreenとpHLys Redでそれぞれ検出した。MitoBright ROSとリソソーム色素による共染色から、CCCPはAntimycinとは異なり、リソソームの中和とミトコンドリアのROS誘導を同時に引き起こすことが示された。

参考文献: Padman, B. S., et. al., Autophagy (2013)

使用製品
   - LysoPrime Green
   - pHLys Red
   - Lysosomal Acidic pH Detection Kit
   - MitoBright ROS - Mitochondrial Superoxide Detection

 


リソソームとマイトファジーの共染色

    

Mitophagy Detection KitとLysoPrime Greenまたは既存のリソソーム染色試薬で染色したSH-SY5Y細胞に、マイトファジー誘導の刺激を与え蛍光イメージングを行いました。既存品では蛍光シグナルが低下し、マイトファジー誘導後のリソソーム局在を確認できませんが、LysoPrime Greenの蛍光シグナルは低下せず経時的なリソソームの局在が確認された。このことより、Mtphagy Dyeの蛍光輝点が既存品よりも共局在率が高くなるため、より正確なマイトファジー解析をすることが可能です。


<検出条件>
LysoPrime Green: Ex= 488 nm, Em= 500-570 nm
Mtphagy Dye: Ex= 561 nm, Em= 560-650 nm

使用製品
   - LysoPrime Green
   - Mitophagy Detection Kit

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