本論文では、MYTHO( macroautophagy and youth optimizer)というタンパク質が細胞の老化や健康維持に重要な役割を果たすことを示している。
著者らは老化や健康維持に寄与する遺伝子の存在を仮定し、さまざまなスクリーニングを行った結果、ヒトDNA配列C16ORF70のMYTHOが候補となった。そこで、マウスやヒトの組織でMYTHOの発現を分析したところ、加齢とともに筋肉中の発現量が増加していることがわかった。次にC. elegams(線虫)を用いてMYTHOを遺伝的に欠損させる実験を行った。MYTHOを欠損させたC. elegams(線虫)では、不要な細胞成分を分解して再利用するオートファジーの働きが低下し、ストレス耐性の低下や寿命の短縮が確認された。
哺乳類細胞においてもMYTHOの役割は保存されており、MYTHOの欠如によるオートファジーの低下や細胞の機能障害がみられた。また、MYTHOはタンパク質の一種であるWIPI2と相互作用し、オートファジーの際に細胞内の不要なものを包み込むオートファゴソームの形成を促進することがわかった。
これらの結果から、MYTHOは健康的な老化や病気の進行予防に役立つ可能性があると考える。
|
C16ORF70/MYTHO promotes healthy aging in C.elegans and prevents cellular senescence in mammals
論文へのアクセスはこちら: Anais F-R., et al, J Clin Invest,(2024)
|
注目ポイント
・MYTHOは細胞内の不要な物質を分解するオートファジーの調節に関与し、ストレス耐性を高めて健康的な老化を促進する
・MYTHOが欠如すると、C.elegams(線虫)のストレス耐性が低下し、寿命が短くなった
・MYTHOはWIPI2と相互作用し、オートファゴソームの形成を促進する
|
関連製品 |
|
|
|
|
|
|
アプリケーションデータ |
老化誘導によるA549細胞の代謝シフト
細胞老化が誘導されると、SA-β-galの発現亢進や不可逆的な細胞増殖停止といった現象が見られる他、DNAダメージが蓄積した老化細胞では、ミトコンドリア機能の低下によりエネルギー産生を解糖系にシフトします。そこで、A549細胞をDoxorubicinで処理し老化誘導した際のSA-β-gal発現亢進およびエネルギー産生経路(NAD量、ミトコンドリア膜電位、ATP量、Lactate放出量)のシフトを確認しました。
その結果、DNA損傷が認められましたが、SA-β-gal(Senescence Assosiated -β- Galactosidase)産生量が増加し、細胞内 NAD+ 量が低下したことからミトコンドリア膜電位が低下し、エネルギー生産経路が酸化的リン酸化から解糖系へシフトしたことが確認されました。

<使用製品>
DNAの損傷:DNA Damage Detection Kit - γH2AX (製品コード:G265)
SA-β-gal発現量:Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal (製品コード:SG03)
NAD+量:NAD/NADH Assay Kit-WST (製品コード:N509)
ミトコンドリア膜電位:JC-1 MitoMP Detection Kit (製品コード:MT09)
代謝シフト(ATP量, Lactate放出量):Glycolysis/OXPHOS Assay Kit (製品コード:G270)
|
Science Noteのバックナンバーはこちらから!
