ヒト神経細胞におけるリソソーム障害とフェロトーシスの関連性

本論文では、リソソームタンパク質であるプロサポシン(PSAP)の欠損によって脂質代謝とスフィンゴ糖脂質分解が阻害されると、老化の特徴であるリポフスチンが形成されることを明らかにした。これにより鉄の蓄積が引き起され活性酸素種(ROS)の発生に繋がり、フェロトーシスが誘発される。興味深いことに、PSAP欠損は神経細胞でのみこのような劇的な表現型を引き起こし、他の細胞種では起こらないことがわかった。

Genome-wide CRISPRi/a screens in human neurons link lysosomal failure to ferroptosis
論文へのアクセスはこちら: Ruilin Tian, et. al., Nature Neuroscience, (2021)

注目ポイント
・この研究によって、神経変性疾患の要因である慢性酸化ストレスに対する神経細胞の反応を支配する経路が明らかとなった
・PSAPを欠損させると神経細胞は酸化ストレスに非常に弱くなる 
・これは鉄を隔離するリポフスチンの形成を誘導することによって起こる
・鉄の蓄積は、ROSと脂質の過酸化を引き起こし、神経細胞においてフェロトーシスを誘発する

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アプリケーションデータ

ミトコンドリアのROSと細胞内Fe2+によるリソソーム機能の同時検出 

リソソーム機能とミトコンドリアのROS

 

 最近、リソソームの中性化が鉄の枯渇を引き起こし、その結果、細胞の生存能力の破壊につながることが示唆されている。これを確認するため、HeLa細胞のFe2+を検出するためFerroOrangeで染色し、リソソーム量とpHをLysoPrime Deep RedとpHLys Greenでそれぞれ検出した。FerroOrangeとリソソーム色素の共染色では、リソソーム酸性化阻害剤であるBaf.A1(Bafilomycin A1)が論文で報告された知見と一致する鉄の枯渇を引き起こすことが示された。興味深いことに、鉄キレート剤であるDFP(Deferiprone)は、リソソームのpHには影響を与えなかったことから、リソソーム機能が鉄の恒常性を管理する重要な役割を果たしていることが示唆された。

参考文献:Ross A Weber, et. al., Mol Cell, (2020)

 

使用製品
   - FerroOrange
   - pHLys Green*
   - LysoPrime Deep Red

*pHLys Greenは、Lysosomal Acidic pH Detection Kit-Green/Deep Redとして購入可能です。

 CCCPとAntimycinは、ミトコンドリアのROSを誘導し、ミトコンドリア膜電位を低下させる作用が知られている。最近の研究では、CCCPはミトコンドリアのROSだけでなく、リソソーム機能障害も誘導することが示されている。ミトコンドリアのROSを観察するために、HeLa細胞をミトコンドリアスーパーオキシド検出用のMitoBright ROS Deep Redで染色し、リソソーム量とpHをLysoPrime GreenとpHLys Redで別々に検出した。MitoBright ROSとリソソーム色素による共染色から、CCCPはAntimycinとは異なり、リソソームの中性化とミトコンドリアのROS産生を同時に引き起こすことが明らかになった。

参考文献: Benjamin S Padman, et. al., Autophagy, (2013)

 

使用製品
   - LysoPrime Green
   - pHLys Red
   - Lysosomal Acidic pH Detection Kit
   - MitoBright ROS Deep Red - Mitochondrial Superoxide Detection

エラスチンによるフェロトーシスの誘導

 エラスチンは、シスチン・トランスポーター(xCT)を阻害することにより、GSHの原料であるシスチンの取り込みを阻害する。このGSH量の減少によって、ROSが除去されず過酸化脂質が蓄積し、フェロトーシスが誘導されることが知られている。エラスチンで処理したA549細胞を用いて、細胞内Fe2+、ROS、過酸化脂質、グルタチオン、細胞外へのグルタミン酸放出、シスチン取り込みを測定した。その結果、エラスチンによるxCTの抑制が観察され、シスチンの取り込みとグルタミン酸の放出が減少した。さらに、エラスチン処理により細胞内のグルタチオンが減少し、細胞内のFe2+、ROS、過酸化脂質が増加した。

①シスチン取り込み

Cystine Uptake Assay Kit

②グルタミン酸放出量

Glutamate Assay Kit-WST

③細胞内グルタチオン量

GSSG/GSH Quantification Kit

④細胞内鉄(Fe2+)

FerroOrange

⑤細胞内ROS

 

 

ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA

⑥細胞内過酸化脂質

Liperfluo

 

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