脂肪代謝に関与する遺伝子はアルツハイマー病(AD)の危険因子であり、グリア細胞で高度に発現している。本論文では、ADの遺伝的危険因子であるAPOE 4/4 がグリア細胞の一種であるミクログリアの脂肪代謝異常を介し、神経変性を誘発する可能性を明らかにした。APOE 4/4 をもつ細胞が脂肪滴を大量に蓄え、脂肪の蓄積によりミクログリアがストレス状態になり、炎症性サイトカインの分泌が増加する状態を観察した。特に、APOE4/4型のミクログリアは、ADの脳内に溜まりやすいアミロイドβに反応すると脂肪の蓄積と炎症反応が顕著となった。さらに、 APOE4/4 型ミクログリアの培養上清をニューロンに加えると、リン酸化タウ (pTau)が検出され、ニューロンには脂肪滴が現れて細胞死が誘導された。このように、APOE 4/4 やアミロイドβによって引き起こされたミクログリアの脂肪代謝異常は、リン酸化タウや神経毒性因子の分泌を介してADに関与する可能性がある。これらの知見は、ミクログリアの脂肪代謝へのアプローチがADの新たな治療戦略となる可能性を示唆している。 |
|||
APOE4/4 is linked to damaging lipid droplets in Alzheimer’s disease microglia |
|||
注目ポイント ・ミクログリアの脂肪代謝異常はリン酸化タウや神経毒性因子の分泌を介し、アルツハイマー病の神経変性に関与している ・APOE4/4はミクログリアの脂肪代謝異常を引き起こし、APOE4/4型のミクログリアではアミロイドβとの反応により脂肪の蓄積と炎症反応が顕著となった ・ミクログリアの脂肪代謝異常の抑制は、アルツハイマー病治療や予防の戦略に繋がる可能性がある |
|||
関連製品 | |||
|
|||
|
|||
|
|||
|
|||
|
|||
|
|||
アプリケーションデータ | |||
イメージサイトメーターを用いた脂肪滴の定量解析HepG2細胞にOleic acidまたはTriacsin C(アシル-CoA合成酵素阻害剤)を添加し、脂肪滴の変化を比較しました。解析には、共焦点定量イメージサイトメーター(横河電機株式会社 CQ1)を使用し、細胞あたりの脂肪滴の数と面積でデータを取得しました。
<使用製品> |
|||
AcidSensor 標識アポトーシス細胞を用いたファゴサイトーシス活性評価AcidSensor 標識体がマクロファージ等の細胞に取り込まれ、酸性環境下に到達することで Deep Red 蛍光が増大します。AcidSensor で Jurkat 細胞を標識後にアポトーシスを誘導し、さらに Calcein-AM で染色した THP-1 細胞由来マクロファージと共培養することで、アポトーシス細胞に対するファゴサイトーシスを評価しました。
近年の研究では、貪食細胞のミトコンドリア機能が阻害されることで細胞のエネルギー代謝が解糖系へシフトし、さらに貪食機能が低下することがわかっています*。実際に FCCP 存在下でファゴサイトーシスを評価したところ、 THP-1 細胞由来マクロファージのミトコンドリア膜電位 (MT-1, Red) 低下と (図2) 貪食作用の低下 (図3) が同時に観察されました。
<使用製品> |