ALS発症に関与?ミクログリアとフェロトーシスの驚くべき関係

神経変性疾患の進行に、意外な犯人が関与している可能性が浮上した。本論文では、ミクログリアが「フェロトーシス(鉄依存性の脂質過酸化による細胞死)」によって活性化されると、アストロサイトに信号を送り、これを神経毒性型に変容させ、最終的にニューロンの死を引き起こすことを明らかにした。このメカニズムは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の脊髄組織や初代培養細胞、ALSモデルマウスを用いた解析で、ALS脊髄には鉄の蓄積、脂質過酸化の亢進、グルタチオンの枯渇といったフェロトーシスの特徴が明確に確認された。特に注目されるのは、ミクログリアがアストロサイトに信号を送り、炎症性カスケードを形成して神経毒性を発揮する点だ。このプロセスは「非細胞自律的」であり、病態が単一細胞内で完結しないことを意味する。また、フェロトーシス阻害剤CuII(atsm)をALSモデルマウスに投与すると、神経細胞の生存率が向上し、症状進行も抑制された。これまで細胞内の終末的死と考えられていたフェロトーシスに、他細胞を巻き込む新たな役割があることを示している。ミクログリア制御は、次世代の創薬戦略における突破口になるかもしれない。

Microglial ferroptotic stress causes non-cell autonomous neuronal death

論文へのアクセスはこちら:  Liddell, J.R., et al, Mol Neurodegeneration , (2024)

注目ポイント

・ミクログリアがフェロトーシスによる鉄依存性ストレスに反応し、アストロサイトを介して間接的にニューロンを死に至らせるメカニズムを世界で初めて解明

・ALS患者の脊髄およびモデルマウスにおいて、フェロトーシスと神経毒性アストロサイトの分子相関が明確に確認され、臨床的意義を裏付け

関連製品
グルタチオン定量キット
GSSG/GSH Quantification Kit
脂質過酸化検出試薬
Lipid Peroxidation Probe -BDP 581/591 C11-
過酸化脂質検出試薬
Liperfluo
細胞内鉄イオン測定試薬
FerroOrange
細胞増殖/細胞毒性アッセイキット
Cell Counting Kit-8 , Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST
アプリケーションデータ

エラスチンによるフェロトーシスの誘導:細胞内取り込みと酸化還元バランスの評価

 

 エラスチンは、シスチン・トランスポーター(xCT)を阻害することにより、GSHの原料であるシスチンの取り込みを阻害する。このGSH量の減少によって、ROSが除去されず過酸化脂質が蓄積し、フェロトーシスが誘導されることが知られている。エラスチンで処理したA549細胞を用いて、細胞内Fe2+、ROS、過酸化脂質、グルタチオン、細胞外へのグルタミン酸放出、シスチン取り込みを測定した。その結果、エラスチンによるxCTの抑制が観察され、シスチンの取り込みとグルタミン酸の放出が減少した。さらに、エラスチン処理により細胞内のグルタチオンが減少し、細胞内のFe2+、ROS、過酸化脂質が増加した。

 

①シスチン取り込み
 
 

Cystine Uptake Assay Kit

②グルタミン酸放出量
 
 

Glutamate Assay Kit-WST

③細胞内グルタチオン量
 
 

GSSG/GSH Quantification Kit

④細胞内鉄(Fe2+)
 
 

FerroOrange

⑤細胞内ROS
 
 

ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA

⑥細胞内過酸化脂質
 
 

Liperfluo

 

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