伝播性フェロトーシスを制御する抗酸化能とリソソーム損傷

 本研究は、細胞死の一種であるフェロトーシスが連鎖的に広がっていく現象(伝播型フェロトーシス)のメカニズムを追究している。研究者らは、抗フェロトーシス酵素GPX4を阻害した細胞にてネクローシス(壊死)とアポトーシスといった多様な細胞死が並行して発生し、特に分裂由来の姉妹細胞は同様の細胞死タイプを示す傾向が見られることを明らかにした。アポトーシスは周囲へ伝播しにくい一方、壊死は伝播性を持つことから、細胞死の不均一性がフェロトーシス伝播の制限要因となる可能性が示唆された。さらに、アミノ酸欠乏によりグルタチオンが枯渇し抗酸化能が低下すると、壊死が促進されることも確認された。加えて、フェロトーシスの特徴である脂質の過酸化が進行した細胞では、細胞質に存在するリソソームの膜が破裂して壊死が進行していた。一方で、アポトーシス細胞では大規模なリソソームの破裂には至らなかった。
 研究者らは、細胞ごとの抗酸化能やリソソーム特性の違いが「破裂しやすさ」を規定し、細胞死様式の違いにつながっている可能性が高いと結論付けた。これらの知見は、細胞死伝播をコントロールすることで、組織傷害やがんなどの治療効果の向上といった応用に繋がる可能性を示している。

Ferroptosis induces heterogeneous death profiles that are controlled by lysosome rupture

論文へのアクセスはこちら:  Jyotirekha, D., et al, Developmental Cell , (2026)

注目ポイント

・GPX4を阻害して誘導したフェロトーシス細胞では、壊死とアポトーシスが並行して発生した。
・脂質過酸化がリソソーム膜の破裂を招き、高い伝播性を示す壊死を進行させる。
・アミノ酸欠乏によるグルタチオンの枯渇は、リソソームの脆弱性を高め、フェロトーシスの伝播を促進する。

関連製品
グルタチオン定量キット
GSSG/GSH Quantification Kit II
脂質過酸化検出試薬
Lipid Peroxidation Probe -BDP 581/591 C11-
リソソームpH検出キット
Lysosomal Acidic pH Detection Kit-Green/Red, Green/Deep Red
鉄イオン(Fe2+)検出試薬
細胞内:FerroOrange / ミトコンドリア:Mito-FerroGreen
細胞増殖/細胞毒性アッセイキット
Cell Counting Kit-8 , Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST
アポトーシス(Annexin V)プレートアッセイキット
Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit
アプリケーションデータ

フェロトーシス誘導剤とリソソーム阻害剤の併用による各指標の変化

 これまでがん細胞株間ではフェロトーシス感受性が異なることが示唆されており、フェロトーシス抵抗性のがん細胞においてリソソームのストレスを増加させることでフェロトーシスを促進できることが報告されている*。フェロトーシス抵抗性を示すがん細胞、A549細胞を用いてフェロトーシス誘導剤であるRSL3またはRSL3とリソソーム阻害剤であるChloroquine(CQ)を24時間処理し、細胞生存率、リソソーム内Fe2+、リソソーム量の変化を解析した。その結果、RSL3単独で処理した場合では細胞生存率、リソソーム内Fe2+に大きな変化はみられなかったが、一部リソソームが集積している様子(LysoPrime Deep Redの強い輝点)が観察された。一方、RSL3に加えてCQを同時に処理した細胞では、リソソーム内Fe2+の増加とリソソームの肥大化、細胞生存率が低下する既報と同様の結果が得られ、フェロトーシス促進にリソソーム内Fe2+の増加が関与している可能性が示唆された。
*Y. Saimoto, et al., Nature Communications, 2025, 16, 3554.

 

 

<使用製品>
リソソーム内Fe2+ Lyso-FerroRed (製品コード:L270)
リソソーム量:LysoPrime Deep Red (製品コード:L264)
細胞生存率: Cell Counting Kit-8 (製品コード:CK04)

エラスチンによるフェロトーシスの誘導:細胞内取り込みと酸化還元バランスの評価

 

 エラスチンは、シスチン・トランスポーター(xCT)を阻害することにより、GSHの原料であるシスチンの取り込みを阻害する。このGSH量の減少によって、ROSが除去されず過酸化脂質が蓄積し、フェロトーシスが誘導されることが知られている。エラスチンで処理したA549細胞を用いて、細胞内Fe2+、ROS、過酸化脂質、グルタチオン、細胞外へのグルタミン酸放出、シスチン取り込みを測定した。その結果、エラスチンによるxCTの抑制が観察され、シスチンの取り込みとグルタミン酸の放出が減少した。さらに、エラスチン処理により細胞内のグルタチオンが減少し、細胞内のFe2+、ROS、過酸化脂質が増加した。

 

①シスチン取り込み
 
 

Cystine Uptake Assay Kit

②グルタミン酸放出量
 
 

Glutamate Assay Kit-WST

③細胞内グルタチオン量
 
 

GSSG/GSH Quantification Kit

④細胞内鉄(Fe2+)
 
 

FerroOrange

⑤細胞内ROS
 
 

ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA

⑥細胞内過酸化脂質
 
 

Liperfluo

 

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