これからはじめるリソソーム検出

リソソームとは

Lysosome リソソームは、生体分子を分解・再利用し、オルガネラの品質管理を行うだけでなく、細胞内シグナル伝達にも関与し、細胞の恒常性を維持する必要不可欠なオルガネラです。リソソームの機能は、ゴルジ体、小胞体、ミトコンドリア、核と密接に関連し、細胞の代謝とストレス応答を調整しています。リソソーム機能が損なわれると、損傷したタンパク質やオルガネラが蓄積し、代謝過程が阻害され、細胞膜の完全性が損なわれ、様々な疾病につながります。例えば、神経変性疾患では、リソソームの機能不全が有毒な凝集体の蓄積を引き起こし、神経細胞の損傷や認知機能の低下をもたらします。リソソームの制御と他のオルガネラとの相互作用を理解することは、疾患の進行を遅らせ、細胞の長寿を促進する治療法を開発する上で極めて重要です。

なぜリソソーム機能を検出することが重要か

 

リソソームは細胞内小器官の一つで生体膜に囲まれた酸性小胞であり、 様々な分解酵素を内包しています。リソソー ムの役割は不要な物質を分解することであり、生体内恒常性の維持に寄与しています。 リソソームの機能不全は神経変性疾患等の発症 ・ 進展に深く関与していることから、リソソームを詳細に解析することは病態の解明や治療薬の開発に非常に重要です。既存の色素を使用し機能を解析した場合、単一の色素の蛍光輝度のみで議論するため、リソソームの量が変動したのか、機能(pH)が変動したのかを判別するが困難でした。
弊社ではリソソームpHに依存的な蛍光の変動を示すpHLys Red/GreenとpH変化に抵抗性なLysoPrime Green/Deep Redの2種類の色素を準備しております。これらを組み合わせてリソソーム量とpHを同時解析することで、リソソーム機能の詳細な解析が可能です。

 

 

リソソーム染色色素とキット

 

同仁化学ではリソソーム染色試薬、pH検出試薬・キットをランナップしております。ご自身の実験系に合わせてお選びください。

検出対象:リソソーム
(蛍光色)
製品名(品コード) 対応装置 蛍光特性 容量・使用回数の目安
蛍光顕微鏡 FCM プレート
リーダー
pH

Lysosomal Acidic pH Detection Kit-Green/Deep Red (L268)

×

(緑) pHLys Green
:Ex. 488/Em. 490-550

(紫) LysoPrime Deep Red
:Ex. 633/Em. 640-700

1 set

35 mm dish 10 枚
μ-Slide 8 well 10 枚
96-well Plate 2 枚

pH

Lysosomal Acidic pH Detection Kit  (L266)

G/Y
レーザーが
必要
G:532 nm
Y:561 nm

(赤) pHLys Red
:Ex. 561/Em. 560-650

(緑) LysoPrime Green
:Ex. 488/Em. 500-600

1 set

pH

pHLys Red- Lysosomal Acidic pH Detection  (L265)

(赤) pHLys Red
:Ex. 561/Em. 560-650

1 tube

3 tubes

1 tube あたり、
35 mm dish 10 枚、
μ-Slide 8 well 10 枚、
96-well Plate 2 枚

LysoPrime Deep Red - High Specificity and pH Resistance  (L264)

(紫) LysoPrime Deep Red
:Ex. 633/Em. 640-700

1 tube

3 tubes

LysoPrime Green- High Specificity and pH Resistance  (L261)

(緑) LysoPrime Green
:Ex. 488/Em. 500-600

10μl x 1

10μl x 3

10 μl あたり、
35 mm dish 10 枚、
μ-Slide 8 well 10 枚
96-well Plate 2 枚

 

実験例: リソソーム酸性化阻害剤のエンドソーム小胞とリソソームの融合への影響

 

 

エンドサイトーシス小胞はECGreenで標識し、リソソーム量とpHはLysoPrime Deep RedpHLys Redで別々に検出した。ECGreenとリソソーム色素の共染色により、リソソーム酸性化阻害剤バフィロマイシンA1はエンドサイトーシス小胞とリソソームとの融合を阻害することが観察できた。

 

実験例: ミトコンドリア阻害剤のリソソーム機能への影響

 

 

CCCPとアンチマイシン(AN)は、ミトコンドリアの活性酸素(ROS)の増加、ミトコンドリア膜電位の低下を起こすことが知られている。近年の報告では、CCCPはミトコンドリアROSだけでなく、リソソーム機能障害も誘導することが示されています*。ミトコンドリアROSを観察するために、HeLa細胞をミトコンドリアスーパーオキシド検出用のMitoBright ROS Deep Redで標識し、リソソーム量とpHをLysoPrime GreenpHLys Redでそれぞれ検出した。MitoBright ROSとリソソーム色素による共染色から、CCCPはANとは異なり、リソソームの中和とミトコンドリアROSの誘導を同時に引き起こすことが明らかになった。

 

*参考文献: Benjamin S Padman, et. al., Autophagy (2013)

 

使用製品
   - LysoPrime Green
   - pHLys Red
   - Lysosomal Acidic pH Detection Kit
   - MitoBright ROS Deep Red - Mitochondrial Superoxide Detection

 

関連製品
   - Mitophagy Detection Kit and Mtphagy Dye

実験例: 細胞内鉄の変化とリソソームpH変化の同時測定

 

神経変性疾患では、リソソーム機能と鉄との関係が注目されており、リソソームが中性化することで貯蔵鉄 (Transferrin or Ferritin) が分解されず、細胞内の鉄が減少することが報告されています*。リソソーム酸性化阻害剤(Bafilomycin A1(Baf. A1))もしくは鉄キレート剤 (Deferipron (DFP))を添加したSH-SY5Y細胞を用いて、同一サンプル内のリソソームpH変化と細胞内鉄の変化を検出しました。(リソソームpH: Lysosomal Acidic pH Detection Kit - Green/Deep Red、細胞内鉄: FerroOrange) その結果、Baf. A1の添加によりFerroOrangeの蛍光が低下したことから細胞内鉄の減少が確認されました。また、LysoPrime Deep Redの蛍光は殆ど変わらず、リソソームの中性化によりpHLys Greenの蛍光が低下しました。以上より、細胞内鉄の変化とリソソームの機能に関連性があることが示唆されました。

*Mol Cell., 202077(3), 645-655.

         

 

<検出条件>
pHLys Green (Green) : Ex=488 nm, Em=486-574 nm
FerroOrange (Red) : Ex=561 nm, Em=550-650 nm
LysoPrime Deep Red (Violet) : Ex=633 nm, Em=599-700 nm

 

 


 
 


 

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