リソソーム局在型LRRC8Aはオートファジーフラックスやインスリンシグナル伝達の鍵となる

 本研究は、リソソームに内在するLRRC8A (Leucine-rich repeat–containing 8A)チャネル複合体が、リソソーム機能にどのように寄与しているのかを検証している。LRRC8Aが枯渇すると、リソソーム内pHの充分な酸性化を抑制する一方で、リソソームのサイズや形態に異常が生じ、LC3Bやp62、LAMP2といったオートファジーおよびリソソーム関連マーカータンパク質の蓄積が認められた。これらの結果から、筆者らはLRRC8AはリソソームのpH恒常性に関与しており、機能不全が生じた場合にはオートファジーフラックスが低下する可能性を指摘した。リソソームpHが最適域から逸脱することで、オートファゴソームとリソソームの融合や形成過程が影響を受け、オートファジーフラックスの低下につながると考察している。
 さらに、LRRC8Aのリソソーム局在性を失わせたLL:AAノックインマウスにおいては、脂肪蓄積の増大、グルコース取り込み不全、インスリン感受性低下がみられた。これらの個体では、リソソーム局在が失われた状態でも細胞膜でのLRRC8チャネル機能は維持されていたが、骨格筋を中心としたインスリン依存的PI3K–AKT–mTORシグナル伝達が著しく阻害されていた。また、過度に酸性化されたリソソームを薬理的に補正することでインスリンによるPI3K-AKTシグナルが回復することが示され、LRRC8Aはリソソームへの局在を介してインスリン作用および全身代謝調節に重要な役割を果たしていることが強く支持された。

Lysosomal LRRC8 complex impacts lysosomal pH, morphology, and systemic glucose metabolism
論文へのアクセスはこちら:  K. Ashutosh, et al, Sci. Advances., (2025)

注目ポイント

・LRRC8Aは、リソソームのpH恒常性に関与しており、オートファジーフラックスにも影響を与えている可能性が示唆された

・LRRC8Aは、骨格筋において特にロイシン刺激に応答してAKT-mTORシグナルを活性化しており、栄養素選択的な調整因子である可能性が示唆された

・LRRC8Aを介したリソソームpH恒常性の維持が、インスリンシグナル伝達、インスリン感受性、並びに全身の血糖恒常性の調節に重要であることが示唆された

関連製品
リソソームpH検出キット
Lysosomal Acidic pH Detection Kit-Green/RedGreen/Deep Red
オートファジー検出試薬
DALGreen (オートリソソーム) / DAPGreenDAPRed (オートファゴソーム)
オートファジー経路測定キット
Autophagic Flux Assay Kit
解糖系/酸化的リン酸化測定キット
Glycolysis/OXPHOS Assay Kit
ミトコンドリア膜電位検出キット
JC-1 MitoMP Detection Kit / MT-1 MitoMP Detection Kit
グルコース測定キット
Glucose Assay Kit-WST
グルコース取り込み検出キット
Glucose Uptake Assay Kit-Blue / Green / Red
グルコース取り込みプレート検出キット
Glucose Uptake Plate Assay Kit
細胞内カルシウムイオン検出キット
Wash Type: Calcium Kit-Fluo 4, Fura 2 / Non-Wash Type: Calcium Kit II-Fluo 4, Fura 2, iCellux
アプリケーションデータ

Bafilomycin A1 によるオートリソソームの形成阻害の解析

 

 DALGreenおよびDAPRedで染色したHeLa細胞を用いて、リソソーム酸性化阻害剤バフィロマイシンA1(Baf.A1)により誘導されるオートファジーによる一連の流れの変化を評価した。飢餓状態と比較して、Baf.A1の添加によるオートリソソーム形成阻害条件下では、DALGreenの蛍光シグナルは減少した。一方、DAPRedの蛍光シグナルは同条件下で増加したことから、Baf. A1はオートファゴソームの蓄積を誘導した。

 

実験データ

 

<実験条件>
CTRL: 通常培養条件、Stv.: 飢餓誘導条件、Baf. A1: オートリソソーム形成阻害条件
DALGreen検出条件: 488 nm (Ex), 490–550 nm (Em)
DAPRed検出条件: 561 nm (Ex), 565–700 nm (Em)


<使用製品>
Autophagic Flux Assay Kit

飢餓培養によるオートファジーとグルコース取り込み変化

HeLa細胞をオートファゴソーム染色試薬DAPRed (製品コード:D677)とオートリソソーム染色試薬DALGreen (製品コード:D675)で染色した後、アミノ酸不含培地による飢餓培養を3時間行いオートファジーを誘導しました。DAPRedおよびDALGreenの蛍光強度が増大したことでオートファジーを確認し、また、Glucose Uptake Probe-Blue (製品コード:UP01)を用いて細胞のグルコース取り込み能力の上昇も観察されました。

<検出条件>
落射型蛍光顕微鏡
Blue (Glucose Uptake Probe-Blue): Ex = 340-380 nm, Em = 435-485 nm
Green (DALGreen): Ex = 450-490 nm, Em = 500-550 nm
Red (DAPRed): Ex = 533-557 nm, Em = 570-640 nm
スケールバー: 50 μm

Science Noteのバックナンバーはこちらから!

 

技術情報を探す

3分野

これからはじめる 細胞死検出

これからはじめる オートファジー検出

これからはじめるリソソーム検出

これからはじめる 細胞膜動態研究

これからはじめる 細胞内代謝測定

細胞の栄養素取込み
これからはじめる フェロトーシス検出
これからはじめる 細胞増殖/細胞毒性測定
これからはじめる ミトコンドリア研究
これからはじめる 老化細胞検出
これからはじめるELISA・免疫染色
抗体標識キット 製品の選び方
これからはじめる微生物実験
これからはじめる バイオフィルム研究
これからはじめる バイオセンサー
CLAMP法

製品分類一覧

分類一覧から探す