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本論文では、ヒト皮膚線維芽細胞から直接分化させたトランス分化ニューロン(tニューロン)を用いてアルツハイマー病(AD)のメカニズムを探求した。
筆者らは、老化とADの特徴を保持したtニューロン内のタンパク質が正常な状態に保たれず、ADに関連するタンパク質が蓄積する現象を突き止めた。加えて、老化とADの影響を受けたtニューロンにおけるリソソームの機能低下と細胞内のカルシウムを調整する機能の破綻が認められた。さらに観察を続けると、老化とADの特徴を保持したtニューロンは、細胞内の不要物を分解するリソソームが損傷し、修復システムが十分に機能しない状態となっていた。そのうえ、リソソームの損傷はミトコンドリアの機能障害やアミロイドβの蓄積、炎症性因子の分泌など複数の異常につながることが明らかになった。一方、ADの特徴を保持したtニューロンにリソソームの機能を改善する物質を投与した実験では、ニューロン内のアミロイドβの沈着が減少した。
本研究は、ニューロンのリソソーム機能低下とニューロン内のアミロイドβの蓄積の因果関係を裏付けている。また、リソソームの機能回復がADニューロンにおけるアミロイドβの蓄積を軽減することを示した。
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Proteostasis and lysosomal repair deficits in transdifferentiated neurons of Alzheimer’s disease
論文へのアクセスはこちら: C.-C. Chou, el al., Nature Cell Biology (2025)
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注目ポイント
・老化の特性が保持できるトランス分化ニューロン(tニューロン)を活用し、アルツハイマー病(AD)のメカニズムを探求した
・老化とADの特徴を保持したtニューロンでは、タンパク質の恒常性が維持されず、リソソームの機能が低下していた
・老化とADの特徴を保持したtニューロンにリソソームの修復を促進する物質を投与するとアミロイドβの蓄積が減少した
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| 関連製品 |
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| アプリケーションデータ |
細胞内Fe2+とリソソーム機能の同時検出
リソソーム機能と鉄の恒常性
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ヒトミクログリア細胞の老化とミトコンドリア膜電位の同時検出

老化細胞検出色素SPiDER Blue(SG07)とミトコンドリア膜電位(MMP)色素MT-1(MT13)を用いてヒトミクログリア細胞を染色した。顕微鏡観察の結果、コントロール細胞と比較して、老化誘導細胞ではMMPが減少し、SPiDER Blueの蛍光が増加し、SA-β-Gal活性の上昇を反映していることが明らかになった。
*本データは、Dr. Supriya D. Mahajan( Department of Medicine, Jacobs School of Medicine & Biomedical Sciences)のご厚意によりご提供いただきました。
<操作>
1. ヒトミクログリア細胞をシャーレに播種し、37 °C、5% CO₂/95% 空気の条件下に設定したインキュベーターで培養した。
2. MT-1 Dyeを細胞培養培地で希釈(1:1000)しMT-1 working solutionを調製した。
3. MT-1 working solutionを細胞に添加した。
4. 細胞を 37 °C、5% CO₂/95% 空気条件下にて 30 分間インキュベートした。
5. 上清を除去し、HBSSで細胞を2回洗浄した。
6. 4% PFA/PBS溶液を細胞に加え、室温で30分間インキュベートした。
7. 4% PFA/PBS溶液を除去し、PBSで細胞を洗浄した。
8. 15 µmol/l Spider Blue working solutionを加え、37℃で30分間インキュベートした。
9. working solutionを除去し、PBSで細胞を洗浄した。
10. Imaging Buffer を加え、蛍光顕微鏡で細胞を観察した。
<使用製品>
老化細胞検出色素:Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue (製品コード:SG07)
ミトコンドリア膜電位(MMP)色素:MT-1 MitoMP Detection Kit (製品コード:MT13)
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