腫瘍由来微粒子の取り込みが転移初期の肺におけるマクロファージの代謝リプログラムを誘導する

前転移ニッチ形成は、癌の転移伝播における重要なステップである。原発性腫瘍が転移部位に宿主細胞を誘導する方法として、血管のせん断流の結果、腫瘍由来の微粒子が排出されることがあるが、このような微粒子を常在の免疫細胞が取り込むことで、その表現型や機能にどのような影響を及ぼすかは不明であった。本論文では、マクロファージによる腫瘍由来微粒子の取り込みが、急速な代謝と表現型の転換を引き起こすことを示した。この転換はミトコンドリアの量と機能の増強、酸化的リン酸化の増加、接着分子のアップレギュレーションによって特徴づけられ、その結果、転移初期の肺では運動性が低下することを明らかにした。さらに、このリプログラミング現象は、mTORC2ではなくmTORC1を介したシグナル伝達に依存しており、腫瘍由来の微小粒子の取り込みによって誘導されることを示した。これら結果は、腫瘍由来微粒子の取り込みが、マクロファージの再プログラミングを誘導し、初期転移肺におけるマクロファージの運命と機能を形成するというメカニズムを支持している。

Uptake of tumor-derived microparticles induces metabolic reprogramming of macrophages in the early metastatic lung
論文へのアクセスはこちら:  Kelly Kersten, et al., Cell Reports, (2023)

注目ポイント

・腫瘍由来の物質を取り込むと、マクロファージの表現型が再プログラミングされる

・マクロファージのリプログラミングは、腫瘍細胞に対するパトロール行動に影響する

・ZsGreenマクロファージは、酸化的リン酸化を特徴とするミトコンドリア代謝の上昇を示す

・mTORC1は、ZsGreenマクロファージにおける酸化的リン酸化とATP生産の増進に必須である

関連製品
エンドサイトーシス検出試薬
ECGreen-Endocytosis Detection
pHセンサーラベル化キット
AcidSensor Labeling Kit - Endocytic Internalization Assay
エクソソーム膜 蛍光染色キット
ExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Green / Red / Deep Red
細胞膜染色用色素
PlasMem Bright Green / Red
解糖系/酸化的リン酸化測定キット
Glycolysis/OXPHOS Assay Kit
酸素消費速度プレートアッセイキット
Extracellular OCR Plate Assay Kit
アプリケーションデータ

エンドサイトーシス経路を介したエクソソーム取り込みの可視化

時間依存的なエンドサイトーシスによるエクソソーム取り込みの様子を可視化しました。結果、ECGreen(製品コード:E296)ExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Deep Red(製品コード:EX03)で染色したエクソソームの時間依存的な集積による蛍光強度の増加が確認でき、共局在を示す白色輝点が増加していることが確認出来ました。この結果より、エクソソームはエンドサイトーシスを介して細胞内に取り込まれることが示唆され、エクソソーム本来の挙動を示していることが確認できました。

 

<観察条件>
エンドソーム(ECGreen、緑): Ex. 405 nm / Em. 500 - 560 nm
エクソソーム(ExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Deep Red、紫):Ex 640 nm / Em 640-760 nm
スケールバー:10 µm

 

<実験操作>
(1) HeLa細胞に10% FBS含有MEM培地で希釈した10 µmol/l ECGreenを加え30分インキュベーション
(2) 洗浄せずに、ExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Deep Redで染色したエクソソーム(10 µgタンパク質相当量)をHeLa細胞に添加
(3) 各サンプルをインキュベーション (30分、120分)
(4) 各時間毎サンプルを洗浄し、細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察

 


温度依存的なエンドサイトーシス変化の観察

Jurkat細胞の温度依存的なエンドサイトーシスの変化をECGreen (製品コード:E296)PlasMem Bright Red (製品コード: P505)を用いて可視化しました。

<測定条件>
エンドソーム(ECGreen、緑): Ex. 405 nm / Em. 500 - 560 nm
細胞膜(PlasMem Bright Red、赤):Ex. 561 nm / Em. 560 - 700 nm
スケールバー: 10 µm

 

<実験操作>
(1) Jurkat 細胞の懸濁液(10% FBS, RPMI)をサンプルチューブに入れ、4 ℃もしくは37 ℃にて30 分間インキュベート
(2) (1) の懸濁液を用いてECGreen 溶液 を1000 倍希釈
(3) 4 ℃もしくは 37 ℃にて30 分間インキュベート
(4) HBSSを用いて、細胞を2回洗浄
(5) PlasMem Bright Red (100倍希釈濃度)を含む培地を添加し、細胞を懸濁
(6) 懸濁液をイメージングプレートに移し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞を観察

 

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