ミトコンドリアDNA (mtDNA) は、酸化リン酸化と代謝恒常性維持に不可欠な機構をコード化しており、特に腫瘍由来 mtDNA は、がんゲノムの中で最も体細胞変異を起こしやすい領域の 1 つであるが、これらの変異が腫瘍生物学に影響を及ぼすかどうかは解明されていない。本論文では、mtDNAコード化複合体 I 遺伝子 Mt-Nd5 の切断変異をいくつか組み込んだ悪性黒色腫マウスモデルを用いた研究から、これらの変異がマウスとヒトの両方で腫瘍微小環境を再形成するWarburg様代謝シフトを促進し、常在好中球の減少を特徴とする抗腫瘍免疫応答を一貫して誘発することを明らかにした。mtDNAの変異を有する腫瘍は、好中球依存的にチェックポイント阻害に対して感受性となり、mtDNA野生型腫瘍では、酸化還元不均衡状態の再現によりこの効果を誘発することができた。 mtDNA変異異質性が 50% を超える患者病変では、チェックポイント阻害に対する反応率が mtDNA野生型癌の約 2.5 倍に改善された。これらの結果から、mtDNA 変異が癌代謝と腫瘍生物学の機能的調節因子であり、治療活用への可能性を示している。 |
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Mitochondrial DNA mutations drive aerobic glycolysis to enhance checkpoint blockade response in melanoma |
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注目ポイント ・mtDNAコード化複合体Ⅰ遺伝子Mt-Nd5の切断変異を組み込んだ悪性黒色腫マウスモデルでは、細胞内の酸化還元不均衡が誘導される ・これにより、Warburg効果様代謝シフトが促進され、腫瘍微小環境が再形成される ・mtDNAの変異は、腫瘍微小環境中の好中球の数を減少させ、抗腫瘍免疫応答を誘導する ・mtDNAの変異を持つ悪性黒色腫は、免疫チェックポイント阻害薬に対する感受性が高まる |
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アプリケーションデータ | |||
2種類のがん細胞における代謝経路の比較<Lactate生成量とATP量による評価>
<OCR値による評価>
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