Kir2.1を介した膜電位は、栄養輸送体の調節を通じて栄養素の獲得と炎症を促進する

免疫代謝は炎症に寄与するが、活性化マクロファージが細胞外栄養素を獲得して炎症を促進する仕組みはほとんど解明されていない。本論文では、内向き整流性K+チャネルであるKir2.1を介したマクロファージの細胞膜電位(Vm)が、栄養素獲得を確実にすることで、炎症の代謝およびエピジェネティックプログラムに寄与していることを示している。Kir2.1活性がない場合、マクロファージVmが脱分極し栄養素の取り込みが制限され、それに伴いオートファジー、AMPK(AMP-activated protein kinase)、およびGCN2(General control nonderepressible 2)を誘導し、栄養素保全に適応する。その後、代謝応答性の炎症遺伝子のクラスターの遺伝子座でヒストンのメチル化を促進するエピジェネティック基質を枯渇させ、それにより転写が抑制された。Kir2.1 が介在する Vm では、細胞膜リン脂質の動態を調節することで、4F2hc や GLUT1 などの栄養素取り込むトランスポーターの細胞表面での保持を促進し、栄養素の吸収をサポートしている。Kir2.1 の薬理学的ターゲティングにより、敗血症モデルにおける LPS や細菌感染によって引き起こされる炎症と、ヒトサンプルにおける無菌性炎症が緩和された。これらの結果は、マクロファージのVmを安定化させることによって、炎症におけるKir2.1のイオン制御を示し、抗炎症療法への潜在的なアプローチとなること示している。

Kir2.1-mediated membrane potential promotes nutrient acquisition and inflammation through regulation of nutrient transporters
論文へのアクセスはこちら:  Yu, W. et al., Nature Communications, (2022)

注目ポイント

・Kir2.1は細胞膜リン脂質の動態を調整することで栄養輸送体の細胞表面保持を促進する

・Kir2.1を介したV mは栄養獲得に必須であり、マクロファージに炎症の代謝特性を与える

・Kir2.1を介した膜電位の変化が、SAM (S-adenosylmethionine) 生成のための栄養素取り込みをサポートし、代謝応答性炎症プログラムを誘導する

関連製品
細胞膜染色用色素
PlasMem Bright Green / Red
グルコース取り込み検出キット
Glucose Uptake Assay Kit-Blue / Green / Red
アミノ酸取り込み検出キット
Amino Acid Uptake Assay Kit
エンドサイトーシス検出試薬
ECGreen-Endocytosis Detection
pHセンサーラベル化キット
AcidSensor Labeling Kit - Endocytic Internalization Assay
アプリケーションデータ

飢餓培養によるオートファジーとグルコース取り込み変化

HeLa細胞をオートファゴソーム染色試薬DAPRed (製品コード:D677)とオートリソソーム染色試薬DALGreen (製品コード:D675)で染色した後、アミノ酸不含培地による飢餓培養を3時間行いオートファジーを誘導しました。DAPRedおよびDALGreenの蛍光強度が増大したことでオートファジーを確認し、また、Glucose Uptake Probe-Blue (製品コード:UP01)を用いて細胞のグルコース取り込み能力の上昇も観察されました。

<検出条件>
落射型蛍光顕微鏡
Blue (Glucose Uptake Probe-Blue): Ex = 340-380 nm, Em = 435-485 nm
Green (DALGreen): Ex = 450-490 nm, Em = 500-550 nm
Red (DAPRed): Ex = 533-557 nm, Em = 570-640 nm
スケールバー: 50 μm


温度依存的なエンドサイトーシス変化の観察

Jurkat細胞の温度依存的なエンドサイトーシスの変化をECGreen (製品コード:E296)PlasMem Bright Red (製品コード: P505)を用いて可視化しました。

<測定条件>
エンドソーム(ECGreen、緑): Ex. 405 nm / Em. 500 - 560 nm
細胞膜(PlasMem Bright Red、赤):Ex. 561 nm / Em. 560 - 700 nm
スケールバー: 10 µm

 

<実験操作>
(1) Jurkat 細胞の懸濁液(10% FBS, RPMI)をサンプルチューブに入れ、4 ℃もしくは37 ℃にて30 分間インキュベート
(2) (1) の懸濁液を用いてECGreen 溶液 を1000 倍希釈
(3) 4 ℃もしくは 37 ℃にて30 分間インキュベート
(4) HBSSを用いて、細胞を2回洗浄
(5) PlasMem Bright Red (100倍希釈濃度)を含む培地を添加し、細胞を懸濁
(6) 懸濁液をイメージングプレートに移し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞を観察

Science Noteのバックナンバーはこちらから!

 

技術情報を探す

3分野

これからはじめる 細胞死検出

これからはじめる オートファジー検出

これからはじめるリソソーム検出

これからはじめる 細胞膜動態研究

これからはじめる 細胞内代謝測定

細胞の栄養素取込み
これからはじめる フェロトーシス検出
これからはじめる 細胞増殖/細胞毒性測定
これからはじめる ミトコンドリア研究
これからはじめる 老化細胞検出
これからはじめるELISA・免疫染色
抗体標識キット 製品の選び方
これからはじめる微生物実験
これからはじめる バイオフィルム研究
これからはじめる バイオセンサー
CLAMP法

製品分類一覧

分類一覧から探す