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癌細胞は環境に適応して成長するために脂質組成を動的に再構成しているが、脂質代謝は膜生理学やシグナル伝達、エネルギー産生において極めて重要な機能であるにも関わらず、特定の脂質が腫瘍形成にどのように寄与しているのかは完全には明らかになっていない。
そこで、本研究にて機能ゲノミクスや脂質組成解析を行った結果、スフィンゴ脂質の産生は、培養下または免疫不全マウスにおける癌細胞の増殖には不要であるが、免疫機能が正常な同系モデルでの腫瘍の増殖には必須であることが示された。また、スフィンゴ脂質産生の欠損により、インターフェロンガンマ(IFNγ)受容体サブユニット1(Ifngr1)の細胞膜局在レベルが増加し、IFNγのシグナルが増強されることで癌細胞の免疫回避機能が低下することが示唆された。さらに、IFNGR1は近年、IFNγ刺激を受けてスフィンゴ脂質と直接相互作用する可能性が示唆されており、この脂質-タンパク質相互作用が細胞膜におけるIFNGR1の安定性を制御する可能性が考えられる。
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Glycosphingolipid synthesis mediates immune evasion in KRAS-driven cancer
論文へのアクセスはこちら: M. Soula, et al, Nature, (2024)
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注目ポイント
・スフィンゴ脂質の産生は、がん細胞が免疫システムによる攻撃から逃れる仕組みに対して重要な役割をもつことが明らかとなった
・スフィンゴ脂質の産生を阻害すると、細胞表面の免疫受容体であるIfngr1の細胞膜局在レベルが増加し、IFNγシグナルの増強により免疫回避機能が低下する可能性が示唆された
・スフィンゴ脂質の産生を標的とすることが、 がん細胞の成長抑制に対する新しい治療法となる可能性が示された
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ハイコンテントイメージングによる、薬物誘発性脂質症の肝毒性試験
ヒト肝がん細胞株(HepG2細胞) にプロプラノロール(交感神経β受容体遮断薬)を添加し、脂肪滴の変化を蛍光顕微鏡にて観察しました。さらに、取得した顕微鏡画像から脂肪滴の数・面積・蛍光強度を計測することにより、脂肪滴の蓄積を解析しました。
脂肪滴のイメージング
HepG2細胞にプロプラノロール0, 10, 30 μmol/lを処理し、脂肪滴をLipi-Green、核をHoechst33342で染色し蛍光顕微鏡(Ti2-E倒立顕微鏡)を用いて観察しました。その結果、プロプラノロールの濃度依存的に脂肪滴が増加している様子が確認されました。

- < Ti2-E顕微鏡 撮影条件>
核(青:Hoechst33342 ):Ex 385 nm, Em 460nm
脂肪滴(緑:Lipi-Green):Ex 475 nm, Em 535nm
薬剤処理濃度に対する脂肪滴の蓄積を解析
得られた蛍光画像より、核から細胞数を、脂肪滴から面積、数、蛍光強度を計測し、細胞あたりの脂肪滴の蓄積を解析しました。その結果、プロプラノロールの濃度依存的に脂肪滴の数と面積が増加し、20 μmol/l以上の濃度条件において、脂肪滴が顕著に形成される結果が得られました。撮影には、ワンショットで広範囲の細胞領域を捉えることができるDS-Qi2カメラを使用し、解析にはすべての脂肪滴に焦点のあった画像を取得できるNIS-ElementsソフトウェアのEDFモジュールを使用することで、信頼性の高い統計データによる定量解析が可能となりました。
 
<使用装置>
ハイコンテンツアナリシス(HCA)顕微鏡システム
(株式会社ニコン https://www.microscope.healthcare.nikon.com/ja_JP/ )
※染色操作と解析法の詳細は、株式会社ニコン「APPLICATION NOTE :ハイコンテントイメージングによる、薬物誘発性脂質症の肝毒性試験」よりご覧いただけます。
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