腫瘍細胞死が誘導するがん細胞の mTOR 依存性:P2X4 を介したパラクリン刺激の役割

 本研究では、腫瘍の細胞死が周囲の生存がん細胞にどのような影響を与えるのかを調査している。抗がん剤の一種である5-FUを処理することにより腫瘍細胞死が誘導されると、死滅細胞からATPが放出され、プリン作動性受容体P2X4を介してmTORC1シグナルが活性化されることが示された。この過程では、活性酸素種(ROS)の増加とDNA損傷が誘導され、残存腫瘍細胞はmTORシグナルへの依存度を高める適応状態へ移行することが明らかとなった。さらに、mTOR阻害剤ラパマイシンまたはP2X4阻害剤を化学療法と併用すると、単独治療では生じない顕著なROS誘導性細胞死と腫瘍退縮が誘導された。
 これは、細胞死が周囲の腫瘍細胞に新たな生存依存性を形成する一方で、同時に標的可能な脆弱性を生み出すことを示しており、P2X4–mTOR軸を標的とした併用療法が治療抵抗性克服の有望な戦略となる可能性が示唆されている。

Colon tumor cell death causes mTOR dependence by paracrine P2X4 stimulation
論文へのアクセスはこちら:  M. Schmitt, et al, Nature, (2023)

注目ポイント

・細胞死により放出されたATPが、P2X4を介して隣接腫瘍細胞のmTORC1活性化を誘導する

・細胞死に伴うROS増加とDNA損傷が、生存細胞にmTOR依存性という新たな適応機構を形成させる

・P2X4またはmTOR阻害と化学療法の併用が、腫瘍への治療戦略となる可能性が示された

関連製品
細胞増殖測定キット
Cell Counting Kit-8
細胞毒性測定キット
Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST
アポトーシス(Annexin V)プレートアッセイキット
Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit
ADP/ATP比測定キット
ADP/ATP Ratio Assay Kit-Luminescence
ATP測定キット
ATP Assay Kit-Luminescence
細胞外ATP測定キット
Extracellular ATP Assay Kit-Luminescence
細胞外酸素消費プレートアッセイキット
Extracellular OCR Plate Assay Kit
トータルROS検出キット
ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA-
DNAダメージ検出抗体
DNA Damage Detection Kit -γH2AX - Green / Red / Deep Red

Sulfasalazine (SSZ)による細胞内代謝の変化


シスチン / グルタミン酸トランスポーター (xCT) を阻害することが知られているSulfasalazine (SSZ)を A549細胞へ添加後、細胞内のATP、α-ケトグルタル酸(α-KG)、 グルタチオン (GSH)、ROSの変化と、グルタミン酸放出量の変化を確認しました。
その結果、SSZ 添加により細胞内のATP、グルタチオン(GSH)ならびにグルタミン酸放出量は減少し、細胞内のα-ケトグルタル酸とROSは増加しました。

 

<使用製品>
・細胞内α-KG:α-Ketoglutarate Assay Kit-Fluorometric (製品コード:K261)  
・細胞内GSH:GSSG/GSH Quantification Kit (製品コード:G257)      
・細胞内ROS:ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA- (製品コード:R252) 
・グルタミン酸放出量:Glutamate Assay Kit-WST (製品コード:G269)    

<実験条件>
 細胞:A549細胞 (1 x 106 cells)  暴露時間:48時間


(スケールバー:50 µm)

参考文献) Shogo Okazaki et al., "Glutaminolysis-related genes determine sensitivity to xCT-targeted therapy in head and neck squamous cell carcinoma". Cancer Sci.2019, doi:10.1111/cas.14182

 

老化誘導によるA549細胞の代謝シフト

細胞老化が誘導されると、SA-β-galの発現亢進や不可逆的な細胞増殖停止といった現象が見られる他、DNAダメージが蓄積した老化細胞では、ミトコンドリア機能の低下によりエネルギー産生を解糖系にシフトします。そこで、A549細胞をDoxorubicinで処理し老化誘導した際のSA-β-gal発現亢進およびエネルギー産生経路(NAD量、ミトコンドリア膜電位、ATP量、Lactate放出量)のシフトを確認しました。
その結果、DNA損傷が認められましたが、SA-β-gal(Senescence Assosiated -β- Galactosidase)産生量が増加し、細胞内 NAD+ 量が低下したことからミトコンドリア膜電位が低下し、エネルギー生産経路が酸化的リン酸化から解糖系へシフトしたことが確認されました。

*S. Imai, et al., Trends Cell Biol, 2014, 24, 464-471


使用製品
① DNA Damage Detection Kit - γH2AX
② Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal
 NAD/NADH Assay Kit-WST
④ JC-1 MitoMP Detection Kit
⑤ Glycolysis/OXPHOS Assay KitLactate Assay Kit-WST

Science Noteのバックナンバーはこちらから!

 

技術情報を探す

3分野

これからはじめる 細胞死検出

これからはじめる オートファジー検出

これからはじめるリソソーム検出

これからはじめる細胞内Ca2+検出

これからはじめる 細胞膜動態研究

これからはじめる 細胞内代謝測定

細胞の栄養素取込み
これからはじめる フェロトーシス検出
細胞内ROS
これからはじめる 細胞増殖/細胞毒性測定
これからはじめる ミトコンドリア研究
これからはじめる 老化細胞検出
これからはじめるELISA・免疫染色
抗体標識キット 製品の選び方
これからはじめる微生物実験
これからはじめる バイオフィルム研究
これからはじめる バイオセンサー
CLAMP法
脂肪滴検出

製品分類一覧

分類一覧から探す