乳酸の恒常性に寄与するインスリンとセルフブレーキ機能の解明

本論文は、マウスを用いて乳酸の濃度がどのようにしてバランスよく保たれているかを特定した研究である 。循環代謝物の中でも変動の大きい乳酸の産生と消費の仕組みの理解は医学的に非常に重要だが、乳酸の恒常性を調節するメカニズムは十分に解明されていなかった。研究者はさまざまな条件下でマウスをモニタリングし、インスリンが乳酸の産生と消費の両方を促進することを突き止めた。インスリンは糖から乳酸を作りつつ、脂肪組織の脂肪酸の放出を抑制して血液中の脂肪酸濃度を低下させ、ミトコンドリアでの乳酸の消費が優先的に進むように影響を与える。また、乳酸は脂肪細胞に存在する受容体であるHCAR1を介して脂肪分解を抑制し、自身の消費を促進する調節機能を持つことがわかった。さらに、乳酸が増えすぎると筋肉のインスリンの働きを妨げ、産生にブレーキをかける機能も備えていた。
このように、乳酸はインスリンや脂肪細胞の受容体など複数の要素が連携して、解糖系と脂肪分解を調節し、安定性を保っていると結論付けた。

Lactate homeostasis is maintained through regulation of glycolysis and lipolysis
論文へのアクセスはこちら:  Won Dong Lee, et al, Cell Metabolism, (2025)

注目ポイント

・インスリンは乳酸の産生とともに、脂肪組織の脂肪酸の放出を抑制して乳酸のミトコンドリアでの消費が優先的に進むように影響を与える。
・乳酸は過剰になると、筋肉のインスリンの働きを妨げて産生にブレーキをかけるセルフブレーキ機能を持つ。
・乳酸の恒常性は、インスリンや脂肪細胞に存在する受容体など複数の要素が連携して動的なバランスを保ち、維持されている。

関連製品
乳酸測定キット
Lactate Assay Kit-WST
脂肪酸取り込み検出キット
Fatty Acid Uptake Assay Kit
グルコース取り込み検出キット
Glucose Uptake Assay Kit-Blue, Green, Red
グルコース測定キット
Glucose Assay Kit-WST
NAD/NADH 測定キット
NAD/NADH Assay Kit-WST
ATP測定キット
ATP Assay Kit-Luminescence
アプリケーションデータ

脂肪酸トランスポーター阻害剤によるHeLa細胞の細胞内代謝の変化

 

脂肪酸は膜の合成などに重要であり、細胞の増殖には欠かせません。そこで、HeLa細胞を脂肪酸トランスポーター阻害剤で処理し、脂肪酸取り込みを阻害した際の細胞増殖能および細胞内代謝(グルコース消費量、Lactate放出量、NAD/NADH比率)の変化を確認しました。
その結果、細胞増殖能の低下が認められましたが、グルコース消費量とLactate放出量が増加し、細胞内 NAD+/NADH 比率が低下したことから代謝経路が解糖系へシフトしたことが確認されました。
 

 

<使用製品>
脂肪酸取り込み:Fatty Acid Uptake Assay Kit (製品コード:UP07)
細胞増殖:Cell Counting Kit-8 (製品コード:CK04)
グルコース消費量:Glucose Assay Kit-WST (製品コード:G264)
細胞内NAD/NADH比率:NAD/NADH Assay Kit-WST (製品コード:N509)
 

Sulfasalazine (SSZ)による細胞内代謝の変化


シスチン / グルタミン酸トランスポーター (xCT) を阻害することが知られているSulfasalazine (SSZ)を A549細胞へ添加後、細胞内のATP、α-ケトグルタル酸(α-KG)、 グルタチオン (GSH)、ROSの変化と、グルタミン酸放出量の変化を確認しました。
その結果、SSZ 添加により細胞内のATP、グルタチオン(GSH)ならびにグルタミン酸放出量は減少し、細胞内のα-ケトグルタル酸とROSは増加しました。

 

<使用製品>
・細胞内α-KG:α-Ketoglutarate Assay Kit-Fluorometric (製品コード:K261)  
・細胞内GSH:GSSG/GSH Quantification Kit II (製品コード:G263)      
・細胞内ROS:ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA- (製品コード:R252) 
・グルタミン酸放出量:Glutamate Assay Kit-WST (製品コード:G269)    

<実験条件>
 細胞:A549細胞 (1 x 106 cells)  暴露時間:48時間


(スケールバー:50 µm)

参考文献) Shogo Okazaki et al., "Glutaminolysis-related genes determine sensitivity to xCT-targeted therapy in head and neck squamous cell carcinoma". Cancer Sci.2019, doi:10.1111/cas.14182

 

Science Noteのバックナンバーはこちらから!

 

技術情報を探す

3分野

これからはじめる 細胞死検出

これからはじめる オートファジー検出

これからはじめるリソソーム検出

これからはじめる細胞内Ca2+検出

これからはじめる 細胞膜動態研究

これからはじめる 細胞内代謝測定

細胞の栄養素取込み
これからはじめる フェロトーシス検出
細胞内ROS
これからはじめる 細胞増殖/細胞毒性測定
これからはじめる ミトコンドリア研究
これからはじめる 老化細胞検出
これからはじめるELISA・免疫染色
抗体標識キット 製品の選び方
これからはじめる微生物実験
これからはじめる バイオフィルム研究
これからはじめる バイオセンサー
CLAMP法
脂肪滴検出

製品分類一覧

分類一覧から探す