T細胞活性を制御するEZH2とCa²⁺シグナルの相互作用

 本論文は、T細胞が強く活性化した際に、クロマチン修飾酵素EZH2と細胞内Ca²⁺シグナルがどのように関わり、T細胞の生存や機能を制御するかを示した研究である。造血幹細胞移植では、ドナー由来の免疫細胞が患者側の組織を異物として認識し、炎症や組織傷害を引き起こすことがある。この病態は移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれ、主にドナー由来T細胞の過剰な免疫反応によって生じる。本研究では、こうした宿主組織に反応するT細胞において、EZH2がCa²⁺シグナルの過剰な上昇を抑える制御因子として働くことが示された。EZH2を欠損したT細胞ではCa²⁺応答が増強し、活性化T細胞の大量死が誘導された。一方、Ca²⁺流入に関与するSTIM1を同時に欠損させると、この細胞死が抑えられ、T細胞の生存とGVHDを引き起こす能力が回復した。さらに、EZH2はCa²⁺流入因子STIM1ではなく、ERからのCa²⁺放出に関わるInsP₃R2(遺伝子名:Itpr2)の発現を抑制することで、過剰なCa²⁺シグナルを防いでいた。また、CAR-T細胞でも、過剰または持続的なCa²⁺シグナルがEZH2依存的な遺伝子制御の低下やT細胞疲弊と関連する可能性が示された。Ca²⁺/calcineurin/NFAT経路を一時的に抑制すると、EZH2依存的な制御が回復し、CAR-T細胞の抗腫瘍効果が改善したことから、Ca²⁺シグナルの適切な調整がCAR-T細胞の機能維持につながる可能性が示唆された。

EZH2 and intracellular Ca2+ signals interdependently coordinate alloreactive and CAR-T-cell responses
論文へのアクセスはこちら: Y. Wang et al.,  Cell. Mol. Immunol., (2026)

注目ポイント

・クロマチン修飾酵素であるEZH2は、ERからのCa²⁺放出に関わるInsP₃R2/Itpr2を抑制し、過剰なCa²⁺シグナルを防ぐ。 
・EZH2欠損ではCa²⁺応答が過剰になり、T細胞死が増加する。 
・CAR-T細胞では、ex vivoでCa²⁺/calcineurin/NFAT経路を一時的に抑えることでEZH2機能が高まり、抗腫瘍効果が改善する可能性が示された。 

関連製品
細胞内カルシウムイオン検出キット
Wash Type: Calcium Kit-Fluo 4Fura 2 / Non-Wash Type: Calcium Kit II-Fluo 4Fura 2iCellux
細胞増殖/細胞毒性アッセイキット
生細胞測定:Cell Counting Kit-8® (比色),  Cell Counting Kit-F(蛍光)/
死細胞測定:Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST(比色)
アポトーシス(Annexin V)プレートアッセイキット
Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit
細胞外ATP測定キット
Extracellular ATP Assay Kit-Luminescence
ADP/ATP比測定キット
ADP/ATP Ratio Assay Kit-Luminescence
遺伝子導入試薬 
HilyMax
細胞老化検出試薬
SPiDER-βGal for 生細胞イメージング または フローサイトメトリー / マイクロプレートリーダー / 組織サンプル
  SPiDER-βGal Blue (固定化細胞や免疫染色との多重染色に最適な色素)
アプリケーションデータ

Jurkat 細胞を用いた異なる薬剤処理における細胞増殖・毒性・細胞外ATP放出の評価
 

アポトーシス誘導剤である Staurosporine またはDoxorubicin で処理した Jurkat 細胞の細胞外 ATP 放出(E299:Extracellular ATP Assay Kit-Luminescence)、細胞増殖(CK04:Cell Counting Kit-8)、細胞外 LDH (CK12:Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST)の時間変化を評価しました。その結果、Staurosporine を処理した細胞では 4 時間後に細胞外へのATP の放出が最大になり、Doxorubicin で処理した細胞では 24 時間後に最大となりました。これらの結果から、薬剤の違いにより挙動に差があることが確認されました。
 

スフェロイドの細胞老化検出

Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal (製品コード: SG03)で染色したiPS細胞由来分化細胞を、フローサイトメトリーにて陽性および陰性細胞群に選別し分取しました。次に分取後の細胞を96ウェルプレートで5日間培養し、スフェロイドを形成させました。これらのスフェロイドをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue (製品コード: SG07)で染色したところ、SPiDER-βGal(Green)陽性細胞はSPiDER Blueでも陽性を示し、SPiDER Blueは3D培養細胞においても老化細胞検出に使用可能であることが示されました。

     

データ提供:京都大学iPS細胞研究所(CiRA)増殖分化機構研究部門 長船研究室 木村 東先生



T細胞の細胞老化検出
 

愛媛大学大学院医学系研究科 山下政克教授らの研究グループでは、メニン(Menin)というタンパク質が、T細胞の疲弊や老化を制御し、免疫機能を正常に保っていることを明らかにしています。このメニンをノックアウトしたナイーブCD8 陽性T細胞に、インターロイキン2(IL-2)存在下でTCR(T細胞受容体)を刺激することにより、細胞老化が誘導されることを、老化細胞検出キット:Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal® (製品コード:SG03)を用いて確認しました。
 

①SPiDER-βGal法による検出



②X-Gal法による検出

<老化誘導条件>


データ提供:愛媛大学大学院医学系研究科  山下政克先生

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