エンドソームGLP-1RによるミトコンドリアERMCS局在PKAシグナルの新機構

 GLP-1受容体(GLP-1R)作動薬は、cAMP産生を刺激し、プロテインキナーゼA (PKA)及びサイクリックAMP活性化タンパク質交換酵素2 (Epac2)の活性化に繋がることが知られているが、GLP-1Rシグナルがどのようにミトコンドリアやβ細胞の機能適応と結びつくのかといった分子メカニズムは未解明であった。本研究では、作動薬の結合および内部移行に続いて、GLP-1Rがエンドソーム上に存在したまま、小胞体-ミトコンドリア膜接触部位(ERMCS)において組織化因子VAPB、PKA-RIα特異的Aキナーゼアンカータンパク質(AKAP)であるSPHKAPと複合体を形成することを明らかにした。
 この複合体は、ERMCS局在型cAMP/PKAのシグナル伝達ハブを形成し、ミトコンドリア接触部位ならびにクリステ組織化システム (MICOS)複合体のPKA依存的なリン酸化、ミトコンドリアのリモデリング、β細胞の機能的適応の変化をもたらし、β細胞のインスリン分泌の調整とGLP-1R作用の下流で起こるERストレスに対する生存に寄与する。 これは、ミトコンドリアへのERMCS局在Gタンパク質共役型受容体(GPCR)シグナルの経路の解明やGLP-1R以外への他GPCRsにも適用できる可能性を示しただけでなく、ミトコンドリアの脂質代謝の調節におけるGLP-1Rの役割やMICOS複合体の活動によって制御されるミトコンドリア形態の変化に対する密接な関連性を示唆している。

GLP-1R associates with VAPB and SPHKAP at ERMCSs to regulate β-cell mitochondrial remodelling and function
論文へのアクセスはこちら:  A. Gregory, et al, Nature communications, (2025)

注目ポイント

・GLP‑1R陽性エンドソームがER–ミトコンドリア接触部位(ERMCSs)へ移動し、 そこで PKA‑RIを中心とする局所的cAMP/PKAシグナル複合体を形成する

・ER膜タンパク質のVAPBとAKAPであるSPHKAPはGLP‑1R陽性エンドソームとミトコンドリアを結びつける足場として機能し、β細胞機能の適応とミトコンドリア構造の再構築を誘導する

・GLP-1Rの作用機序を、エンドソーム-ERMCS間の特異的なGPCRシグナルとして再解釈した

関連製品
ミトコンドリア膜電位検出キット
JC-1 MitoMP Detection Kit / MT-1 MitoMP Detection Kit
ミトコンドリア染色用色素
MitoBright LT Green / Red / Deep Red
ミトコンドリア スーパーオキシド検出用蛍光色素
MitoBright ROS - Mitochondrial Superoxide Detection
解糖系/ミトコンドリア膜電位測定キット
Glycolysis/JC-1 MitoMP Assay Kit
細胞内カルシウムイオン検出キット
Wash Type: Calcium Kit-Fluo 4, Fura 2 / Non-Wash Type: Calcium Kit II-Fluo 4, Fura 2, iCellux
アプリケーションデータ

ミトコンドリアスーパーオキシドと膜電位の同時測定

HeLa細胞をHBSSにて洗浄後、MitoBright ROS Deep Red(製品コードMT16)とJC-1 MitoMP Detection Kit(製品コードMT09)を用いて共染色し、発生したミトコンドリアROSと膜電位を同時に観察しました。その結果、いずれの条件でもミトコンドリアROSの発生に伴うミトコンドリア膜電位の低下を同時に観察することが出来ました。

<検出条件(共焦点レーザー蛍光顕微鏡)>
JC-1 :緑 Ex = 488, Em = 490-520 nm, 赤 Ex = 561, Em = 560-600 nm
MitoBright ROS :Ex = 633 nm, Em = 640-700 nm
スケールバー:10 µm

 

<検出条件(マイクロプレートリーダー)>
装置:Tecan, Infinite M200 Pro
JC-1 :緑 Ex = 480-490 nm, Em = 525-545 nm, 赤 Ex = 530-540 nm, Em = 585-605 nm
MitoBright ROS :Ex = 545-555 nm, Em = 665-685 nm

リソソーム機能とミトコンドリアROS


 CCCPとAntimycin(AN)は、ミトコンドリアのROSを誘導し、ミトコンドリア膜電位の低下につながることが知られている。最近の研究では、CCCPはミトコンドリア活性酸素だけでなく、リソソーム機能障害も誘導することが示されている。ミトコンドリアのROSを観察するために、HeLa細胞をミトコンドリアスーパーオキシド検出用のMitoBright ROS Deep Redで標識し、リソソーム量とpHをLysoPrime GreenとpHLys Redでそれぞれ検出した。MitoBright ROSとリソソーム色素による共染色から、CCCPはAntimycinとは異なり、リソソームの中和とミトコンドリアのROS誘導を同時に引き起こすことが示された。

参考文献: Padman, B. S., et. al., Autophagy (2013)

使用製品
   - LysoPrime Green
   - pHLys Red
   - Lysosomal Acidic pH Detection Kit
   - MitoBright ROS - Mitochondrial Superoxide Detection

 

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