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本研究は、細胞外のATPを感知する受容体P2RX7がCD8+ T細胞ががん細胞を排除する働きにどのように影響するのかを実証している。
マウスのメラノーマモデルを用いた実験において、P2RX7を欠損したCD8+ T細胞はがん細胞を排除する働きが著しく低下した。その原因を探ると、P2RX7を欠損したCD8+ T細胞はミトコンドリアの機能障害、アポトーシス増加の兆候を示していた。研究を進め、ミトコンドリアの機能障害・代謝変化は、低酸素・栄養不足といったがん細胞の周辺環境によるものでなく、P2RX7を欠損したCD8+ T細胞固有のものであるとわかった。一方で、P2RX7作動薬であるBzATPを用いた実験では、CD8+ T細胞のミトコンドリア機能が向上し、がん細胞の増殖が抑制された。
本研究では、P2RX7がCD8+ T細胞のミトコンドリアの機能と生存をサポートする重要な役割を持つことを示した。これらの結果は、CD8+ T細胞のエネルギー代謝や生存を促進するP2RX7シグナル伝達経路へのアプローチが新たな免疫療法の戦略となる可能性を示唆している。
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P2RX7 Enhances Tumor Control by CD8+ T Cells in Adoptive Cell Therapy
論文へのアクセスはこちら: Kelsey M. W, et al, Cancer Immunol Res, (2022)
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注目ポイント
・P2RX7はCD8+ T細胞のミトコンドリアの機能と生存をサポートする。
・P2RX7作動薬によりCD8+ T細胞のミトコンドリアの機能と抗腫瘍作用が向上する。
・P2RX7シグナル伝達経路へのアプローチは今後のがんの免疫療法に役立つ可能性がある。
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2種類のがん細胞における代謝経路の比較
<Lactate生成量とATP量による評価>

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Oligomycin刺激により酸化的リン酸化でのATP合成を阻害、また2-Deoxy-D-glucose(2-DG)により解糖系でのATP合成を阻害した際のATP量とLactate生成量の変化を確認したところ、HeLa細胞は解糖系に依存し、HepG2細胞は酸化的リン酸化に依存してATP合成している結果が得られた。
HeLa細胞は酸化的リン酸化を阻害した際、ATP量は変わらず(①)、Lactate生成量が増加する(②)ことから、酸化的リン酸化が阻害されても解糖系をさらに活性化することができ、逆に解糖系を阻害するとATP量が大きく減少することから(③)、エネルギー産生を解糖系に依存していることが示唆された。一方、HepG2細胞は、酸化的リン酸化を阻害した際、Lactate生成量が増加していることから(④)、解糖系の亢進によりエネルギー産生を補おうとしているがATP量は減少している(⑤)、すなわち解糖系を亢進させてもATP産生を補えていないことを意味する。さらに解糖系を阻害した場合よりもATP量が減少する(⑥)ことから、エネルギー産生を解糖系よりも酸化的リン酸化に依存しているということが示唆された。
使用製品
Glycolysis/OXPHOS Assay Kit
<OCR値による評価>
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同じ細胞数にてミトコンドリア脱共役剤であるFCCP刺激により、細胞の酸素消費を促進した際のOCRを測定した。その結果、HepG2細胞はHeLa細胞よりもOCR値が高く酸化的リン酸化への依存度が大きいことが示唆され、ATP量やLactate量を指標に評価した場合と相関する結果が得られた。
使用製品
Extracellular OCR Plate Assay Kit
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ミトコンドリア電子伝達系の阻害

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Jurkat細胞にAntimycin刺激を行い、ミトコンドリア電子伝達系を阻害した際の細胞の状態変化を、様々な指標から評価した。
その結果、電子伝達系の阻害により①ミトコンドリア膜電位の低下および②OCRが低下した。また、③解糖系を強制的に維持するために、ピルビン酸から乳酸への代謝が亢進することで、④解糖系全体のNAD+/NADH比が低下し、さらに活性酸素種(ROS)増加に伴う⑤GSH枯渇、グルタチオン生合成に必要なNADPHの減少に伴う⑥NADP+/NADPH比の増加を確認した。
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