近年、細胞内での小器官間ネットワークの重要性が注目される中、ミトコンドリアと小胞体(ER)の接触部位「MERC(ミトコンドリア小胞体接触部)」の新たな役割が明らかになった。これまで、MERCは脂質代謝やカルシウム輸送の場とされてきたが、今回の研究では、ミトコンドリア酸化ストレスを抑える新機構が発見された。本論文では、NanoBiT技術を応用した「MERBiTシステム」により、生きた細胞内でMERCの動態を可視化。活性酸素種(ROS)の増加により、RMDN3(PTPIP51)というタンパク質のリン酸化が進み、MERC形成が促進されることが分かった。この過程で、RMDN3は脂質ラジカルをミトコンドリアから小胞体へ移送し、ミトコンドリア内の酸化ストレスを軽減。逆に、この接触が阻害されると、脂質ラジカルが蓄積し、細胞死が誘導されることも示された。特に、RMDN3のTPRドメインが脂質ラジカルを運搬する機能を持つ点は、新しい発見である。これらの結果は、ミトコンドリア損傷時に細胞が自らの生存を守る巧妙な仕組みを解明し、細胞生存におけるMERCの重要性を示している。 |
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ER-mitochondria contacts mediate lipid radical transfer via RMDN3/PTPIP51 phosphorylation to reduce mitochondrial oxidative stress
論文へのアクセスはこちら: Shiiba, I., et al, Nature Communications, (2025) |
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注目ポイント ・NanoBiT技術で生きた細胞内のMERC動態をリアルタイム可視化する新手法を確立 ・ミトコンドリア酸化ストレス軽減の新メカニズム「脂質ラジカルの移送」を発見 ・RMDN3のリン酸化によるER-ミトコンドリア接触促進が細胞死を防ぐ鍵に |
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関連製品 | |||
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アプリケーションデータ | |||
ミトコンドリアスーパーオキシドと膜電位の同時測定HeLa細胞をHBSSにて洗浄後、MitoBright ROS Deep Red(製品コードMT16)とJC-1 MitoMP Detection Kit(製品コードMT09)を用いて共染色し、発生したミトコンドリアROSと膜電位を同時に観察しました。その結果、いずれの条件でもミトコンドリアROSの発生に伴うミトコンドリア膜電位の低下を同時に観察することが出来ました。 <検出条件(共焦点レーザー蛍光顕微鏡)>
<検出条件(マイクロプレートリーダー)> |