肝細胞老化はTGFβを介して多臓器の老化と機能不全を引き起こす

細胞老化は老化に関連するだけでなく、胚発生や創傷治癒などの生理的・病理的過程にも影響を及ぼすことが知られている。急性重症肝疾患は肝細胞の老化と関連しており、しばしば多臓器不全に進行するが、詳細は未だ解明されていない。本論文では、肝障害モデルと肝細胞特異的老化の遺伝学的モデルを用いて、肝老化に伴う肝外臓器における老化の進展と関連臓器の機能障害を示した。さらに重症急性肝不全患者において、肝細胞老化の程度が、疾患の転帰、肝移植の必要性、および肝外臓器不全の発生を予測することを示した。また、TGFβ経路が老化の全身的広がりの重要なメディエーターであることを同定し、生体内でTGFβを阻害することにより、他の臓器への老化の伝達が遮断され、肝老化による腎機能障害が予防されることを明らかにした。

Hepatocellular senescence induces multi-organ senescence and dysfunction via TGFβ
論文へのアクセスはこちら:  Kiourtis, C. et al., Nature Cell Biology, (2024)

注目ポイント

・細胞老化は老化だけでなく、胎児の発達、創傷治癒、肝疾患における多臓器機能不全にも影響を及ぼす

・肝細胞の老化はTGFβシグナル伝達経路の全身的影響によって引き起こされる

・肝細胞の老化の程度が臓器不全を含む急性肝不全の転帰を予測する

・TGFβを阻害すると老化の広がりが抑制され、肝臓誘発性の腎機能障害が予防されたことから、多臓器機能障害における老化の役割が強調された

関連製品
細胞老化検出試薬
SPiDER-βGal for 生細胞イメージング または フローサイトメトリー / マイクロプレートリーダー / 組織サンプル
 新製品 SPiDER-βGal Blue (固定化細胞や免疫染色との多重染色に最適な色素)
トータルROS検出キット
ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA- / Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-
DNAダメージ検出抗体
DNA Damage Detection Kit - γH2AX - Green / Red / Deep Red
酸素消費速度プレートアッセイキット
Extracellular OCR Plate Assay Kit
解糖系/酸化的リン酸化測定キット
Glycolysis/OXPHOS Assay Kit
細胞増殖 / 細胞毒性アッセイ
Cell Counting Kit-8 / Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST
アプリケーションデータ

老化誘導によるA549細胞の代謝シフト

細胞老化が誘導されると、SA-β-galの発現亢進や不可逆的な細胞増殖停止といった現象が見られる他、DNAダメージが蓄積した老化細胞では、ミトコンドリア機能の低下によりエネルギー産生を解糖系にシフトします。そこで、A549細胞をDoxorubicinで処理し老化誘導した際のSA-β-gal発現亢進およびエネルギー産生経路(NAD量、ミトコンドリア膜電位、ATP量、Lactate放出量)のシフトを確認しました。
その結果、DNA損傷が認められましたが、SA-β-gal(Senescence Assosiated -β- Galactosidase)産生量が増加し、細胞内 NAD+ 量が低下したことからミトコンドリア膜電位が低下し、エネルギー生産経路が酸化的リン酸化から解糖系へシフトしたことが確認されました。

*S. Imai, et al., Trends Cell Biol, 2014, 24, 464-471


使用製品
① DNA Damage Detection Kit - γH2AX
② Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGal
 NAD/NADH Assay Kit-WST
④ JC-1 MitoMP Detection Kit
⑤ Glycolysis/OXPHOS Assay KitLactate Assay Kit-WST

Doxorubicin誘導老化細胞を用いた酸化ストレス関連マーカーとの多重染色解析(フローサイトメトリー)

 

Doxorubicin処理により老化誘導したA549細胞(DOX)と通常細胞(CTRL)を用いて、老化細胞の酸化ストレス関連マーカーの変化をフローサイトメトリーで多重染色解析を行った。老化マーカーとしてSA-β-GalをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue, 酸化ストレスマーカーとしてtotal ROSの検出をROS Assay Kit -Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-, DNAダメージマーカーとしてγH2AXをDNA Damage Detection Kit - γH2AX – Redで検出した。
その結果、 SA-β-Gal陽性の老化細胞において、total ROS, γH2AXが増大する結果が得られた。


【検出条件】

使用装置:SONY SA3800
  SPiDER Blue: PacificBlue  
    ROS Assay Kit: FITC
    γH2AX - Red: Cy3

<実験手順>
 *事前に、通常培地で培養した細胞 (CTRL) と、DOX 処理 (0.2 μM DOX 3 days → 通常培地 3 days) した細胞 (DOX) を準備
 実験の詳細については、 SPiDER Blueの製品ページをご確認ください。

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