化学療法は腫瘍内の老化がん細胞を生成することが多く、これが腫瘍微小環境を強く変化させ、免疫抑制と腫瘍増殖を促進している。本論文では、プロテオミクススクリーニングにより、さまざまな種類のがん細胞で老化が誘導されると、PD-L2(Programmed death 1 ligand 2)が大幅にアップレギュレーションされることを明らかにした。PD-L2は細胞の老化に必須ではないが、老化細胞が免疫系を回避して腫瘍内に存続するためには不可欠である。実際に、化学療法後、PD-L2欠損老化がん細胞は急速に排除され、腫瘍は老化関連ケモカインCXCL1およびCXCL2を産生しなかった。さらに、抗体による PD-L2 の阻害は化学療法と強力な相乗効果を発揮し、マウスの乳腺腫瘍の寛解を引き起こした。これらの結果は、化学療法と抗 PD-L2 を組み合わせることで、治療誘発性老化から生じる脆弱性を利用した治療戦力の可能性を示唆している。 |
The efficacy of chemotherapy is limited by intratumoral senescent cells expressing PD-L2 |
注目ポイント ・化学療法は度々老化したがん細胞を発生させ、この細胞がPD-L2の発現を増加させ、免疫回避と腫瘍の成長を助ける ・PD-L2は老化には必要ではないが、老化細胞による免疫回避には重要であり、化学療法後の腫瘍の持続を促進する ・抗体を介したPD-L2阻害は化学療法と相乗効果を示し、老化がん細胞を標的とした治療戦略の可能性を示唆している |
関連製品 |
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アプリケーションデータ |
老化誘導によるA549細胞の代謝シフト
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Doxorubicin誘導老化細胞を用いた酸化ストレス関連マーカーとの多重染色解析(フローサイトメトリー)
Doxorubicin処理により老化誘導したA549細胞(DOX)と通常細胞(CTRL)を用いて、老化細胞の酸化ストレス関連マーカーの変化をフローサイトメトリーで多重染色解析を行った。老化マーカーとしてSA-β-GalをCellular Senescence Detection Kit - SPiDER Blue, 酸化ストレスマーカーとしてtotal ROSの検出をROS Assay Kit -Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-, DNAダメージマーカーとしてγH2AXをDNA Damage Detection Kit - γH2AX – Redで検出した。 <実験手順> |