リソソームは生体分子の分解を担う細胞小器官であり、特にリソソームの機能不全が老化と寿命の短縮に関与している。リソソームは頻繁に損傷を受けるが、その詳細な修復機構は明らかにされていない。本論文では、損傷したリソソーム膜はミクロオートファジー(「ミクロリソファジー」と呼ばれる過程)によって修復されることを明らかにした。AGCキナーゼSTK38が新規のミクロオートファジー制御因子であることを明らかにし、STK38は足場タンパク質DOK1のリン酸化を介して、AAA+ ATPase VPS4のリソソームへのリクルートに特異的に必要であり、ESCRT構成因子の分解を促進することにより、ミクロリソファジーを終結させる。対照的に、ミクロリソファジーの開始にはATG8、特にGABARAPサブファミリーの非正規的な脂質化が関与しており、これはALIXとの相互作用を通してESCRTの組み立てに必要である。STK38とGABARAPsの枯渇は、それぞれヒト細胞ではDNA損傷による細胞老化を促進し、線虫では寿命を縮める。これらの結果から、ミクロリソファジーはSTK38とGABARAPsによって制御されており、リソソームの完全性を維持し、老化を防ぐために不可欠であることが示唆された。
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Microautophagy regulated by STK38 and GABARAPs is essential to repair lysosomes and prevent aging
論文へのアクセスはこちら: Ogura, M., et al. EMBO rep.(2023)
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注目ポイント
・損傷したリソソームを修復するミクロオートファジーは老化を防ぐ
・STK38とGABARAPsはこのプロセスの重要な調節因子である
・STK38はVSP4のリソソームへのリクルートに必要であり、GABARAPsはESCRTの組み立てに関与している
・これらの調節因子が枯渇すると、細胞老化が加速し、寿命は短くなる
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関連製品 |
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アプリケーションデータ |
老化誘導細胞におけるリソソーム量とpH変化の解析

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目的:ドキソルビシン(DOX, Doxorubicin )処理によって老化を誘導したA549細胞でのリソソーム量とpH変化を調査した。
手法:老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-βGal, Senescence-associated β-galactosidase)活性は、Cellular Senescence Detection Kit - SPiDER-βGalを使用し検出した。リソソーム量はLysoPrime Deep Redを使用し、リソソーム内pHはpHLys Redを使用しそれぞれ検出した。蛍光イメージングを用いて、老化細胞におけるリソソーム量とpHの変化を、非老化細胞と比較して観察した。補正されたリソソーム量とpHの蛍光強度の変化もプレートリーダーで測定した。
結果:我々の発見は、DOXによって誘導された老化は、非老化細胞と比較してリソソーム量の増加とpHの酸性化したことを示している。得られた結果は、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブによって誘導された老化細胞におけるリソソーム活性の亢進を示した過去の報告*と一致している。蛍光イメージングとプレートリーダーのデータは、いずれもそれらの知見を裏付けている。
*Miguel Rovira, et. al., Aging Cell (2022)
<蛍光顕微鏡の観察条件>
SA-βGal(Green):Ex = 488 nm, Em = 490 – 550 nm
リソソームpH (Red):Ex = 561 nm, Em = 560 – 620 nm
リソソーム量 (Deep Red):Ex = 633 nm, Em = 640 – 700 nm
<プレートリーダーの測定条件>
SA-βGal: Ex = 525 – 535 nm, Em = 550 – 570 nm
リソソームpH: Ex = 555 – 565 nm, Em = 590 – 610 nm
リソソーム量: Ex = 645 – 655 nm, Em = 690 – 710 nm
<使用製品>
- Cellular Senescence Detection Kit
- pHLys Red - Lysosomal Acidic pH Detection
- LysoPrime Deep Red - High Specificity and pH Resistance
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