Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit

アポトーシス(Annexin V)プレートアッセイキット
- 他試薬との併用により細胞死経路を簡便に判別
- 同一プレートで複数指標を併用測定できる
- 洗浄不要で正確なプレートアッセイを実現
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製品コードAD12 Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit
容 量 | メーカー希望 小売価格 |
富士フイルム 和光純薬 |
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100 tests | ¥29,800 | 345-10231 |
【注意点】
測定にはクリアボトムのプレートと下方励起・下方蛍光測定が可能なプレートリーダーをご使用下さい。
100 tests | Annexin V - FITC Quenching Buffer |
×1 11 ml×1 |
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細胞死をより詳細にみる
細胞死は様々な疾患の病因に関わっているため、長年研究の対象とされています。これまで、その状況や誘導のトリガーとなる刺激によってアポトーシスとネクローシスの2 種類に分けられていましたが、近年フェロトーシスやオートファジー性細胞死などアポトーシスやネクローシスと異なる経路をたどる細胞死が発見されています。その細胞死を詳細に解析し種類を見分けることは、疾患の治療方法を確立するためのアプローチとして研究されています。
性質
正常な細胞では、細胞内に存在するホスファチジルセリン(PS)がアポトーシスの初期の段階で膜構造が変化し、細胞外へ露出します。本キットでは、ホスファチジルセリンと結合する Annexin V に蛍光色素である FITC を標識した試薬と Quenching Buffer を使用することで、洗浄操作が不要です。これまでプレートリーダーでの測定では、細胞死が誘導されるにつれ細胞が剥がれやすくなるため、洗浄操作によってバラつきや蛍光強度が低下する問題がありましたが、本キットではアポトーシス誘導に比例した結果を得ることができます。
また、本製品では細胞サンプルを細胞と上清に分け、それぞれを異なる指標(試薬の併用)で測定することで、細胞死のより詳細な解析が実現します。
細胞死関連製品
指標 | 製品名 | 測定対象 | 装置 / 検出波長 |
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細胞生存能力 | Cell Counting Kit-8 | 細胞内脱水素 酵素活性 |
プレートリーダー 吸光度 λ= 450nm |
ネクローシス (細胞毒性) |
Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST |
遊離LDH | プレートリーダー 吸光度 λ= 490nm |
アポトーシス | Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit |
ホスファチジルセリン | プレートリーダー 蛍光 Ex: 488 nm / Em: 525 nm |
フェロトーシス | FerroOrange | 細胞内 鉄イオン(Fe2+) |
蛍光顕微鏡, FCM, プレートリーダー 蛍光 Ex: 543 nm / Em: 580 nm |
フェロトーシス | Mito-FerroGreen | ミトコンドリア内 鉄イオン(Fe2+) |
蛍光顕微鏡 蛍光 Ex: 505 nm / Em: 535 nm |
フェロトーシス | Liperfluo | 脂質過酸化 | 蛍光顕微鏡, FCM 蛍光 Ex: 488 nm / Em: 500-550 nm |
マニュアル
技術情報
原理
アポトーシスは、細胞のプログラムされた死の一つであり、植物や動物のホメオスタシスや発生過程の維持に重要な役割を果たしています。その一つの例として、細胞生成過程で発生した異常な細胞はアポトーシスによって除去されます。アポトーシスの初期段階において、細胞膜の内側に存在するホスファチジルセリン (PS) が細胞膜の外側に移行することが知られています。この特異な変化により、アポトーシス細胞を識別することが可能です。
Annexin Vは、カルシウムイオンの存在下でホスファチジルセリンに特異的に結合するタンパク質です。この特性を利用し、蛍光標識されたAnnexin Vを用いることで、アポトーシス細胞を蛍光検出することが可能となります。一般的に、フローサイトメトリーや蛍光顕微鏡を用いてアポトーシス細胞の検出が行われておりますが、多検体処理に時間を要します。
本キットには、蛍光標識Annexin V とPSに結合していない蛍光標識Annexin Vの蛍光を消去する試薬 (Quenching Buffer) が同梱されており、洗浄操作不要でプレートリーダーで迅速に多検体検出が可能です。
フローサイトメトリー法との比較
HeLa細胞をStaurosporineで処理し、アポトーシスを誘導しました。一方は、市販のFITC標識Annexin Vで染色後にフローサイトメーターで蛍光検出し、もう一方はAnnexin V Apoptosis Plate Assay Kitを用いてプレートリーダーで蛍光検出しました。その結果、フローサイトメーターとプレートリーダー両方でアポトーシスの進行に伴い蛍光強度の増加を確認しました。

<実験条件>
細胞種:HeLa細胞
Staurosporine濃度:5 µmol/l
時間:0~6時間
<検出条件>
プレートリーダー
TECAN社製 Infinite M200 PRO, ボトムリーディング
フローサイトメーター
SONY社製 SA3800
実験例:Staurosporine による各種指標の変化
Staurosporine 処理によりアポトーシス誘導した HepG2 細胞と通常細胞 (Control) のホスファチジルセリン、細胞外 LDH、細胞増殖の変化を解析しました。アポトーシスのマーカーとしてホスファチジルセリンを Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit、死細胞の指標として細胞外の LDH を Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST、細胞増殖を Cell Counting Kit-8で測定しました。
その結果、Staurosporine 処理によってホスファチジルセリン、細胞外 LDH は増加し、細胞増殖は低下する結果が得られました。
<実験操作>
1. HepG2細胞(2×104cell/well)を96 well Black Plate (クリアボトム) に播種し、インキュベーター(37 ℃、5% CO2存在下)で一晩培養した。
2. 培地を除去し、MEM培地(Control)またはMEM培地で調製した5 μmol/l staurosporine 200 μlを添加し、インキュベーター(37 ℃、5% CO2存在下)で24時間インキュベートした。
3. ①ホスファチジルセリン測定用ウェルから上清100 µlを96 well Clear Plateに移し、②細胞外LDHをCytotoxicity LDH Assay Kitの取扱説明書(ノンホモジニアスアッセイ)に従い測定した。
4. 96 well Black Plateの①ホスファチジルセリン測定用ウェルにworking solutionを60 μl添加し遮光下室温で15分間静置した後、プレートリーダー(ボトムリーディング)で蛍光強度(Ex/Em = 488/525 nm)を測定し、得られた値からそれぞれブランクを差し引いてAnnexin V - FITC由来の蛍光強度を算出した。
5. 96 well Black Plateの③細胞増殖測定用ウェルから上清100 μlを除いた後、Cell Counting Kit-8の取扱説明書に従い測定した(2時間呈色反応し吸光度を測定)。
<測定装置>
TECAN社製 Infinite M200 PRO
実験例:薬剤誘導による細胞死の各指標の変化
アポトーシス誘導剤であるStaurosporinまたはフェロトーシス誘導剤であるErastin、RSL3で処理したHepG2細胞の細胞外LDH、ホスファチジルセリン、細胞生存率、細胞内Fe2+、脂質過酸化の変化を解析しました。
その結果、Staurosporinで処理したアポトーシス誘導細胞ではホスファチジルセリンの増加、細胞生存率の低下並びに細胞外LDHが増加し細胞死が起きていることが確認できました。一方でフェロトーシス指標である細胞内Fe2+は変化がありませんでした。フェロトーシス誘導剤であるErastinで処理した細胞では細胞内Fe2+の増加と細胞生存率の低下が確認されましたが、細胞外LDHと脂質過酸化(脂質過酸化:赤色蛍光の減少と緑色蛍光の増加)は増加しませんでした。Erastinに加えてRSL3を同時に処理し、より強力にフェロトーシスを誘導した細胞では、フェロトーシスの指標である細胞内Fe2+と脂質過酸化の増加並びに細胞生存率の低下が確認され、死細胞が増加しました。一方で、ホスファチジルセリンはアポトーシス誘導細胞と比較し、フェロトーシス誘導時には増加率が低い結果となりました。これらの結果から、細胞死の指標を組み合わせて評価することで細胞死を見分けられることがわかりました。
<使用製品>
細胞外LDH :Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST(製品コード:CK12)
ホスファチジルセリン:Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit(製品コード:AD12)
細胞生存率 :Cell Counting Kit-8(製品コード:CK04)
細胞内Fe2+ :FerroOrange(製品コード:F374) *Hoechst 33342の蛍光強度で補正
脂質過酸化 :Lipid Peroxidation Probe -BDP 581/591 C11-(製品コード:L267)
<実験条件>
細胞:HepG2細胞(2×104 cells/well)
薬剤:Staurosporin(5 μmol/l), Erastin(25 µmol/l), Erastin+RSL3(どちらも25 µmol/l)
*無血清培地に希釈して添加
よくある質問
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Q
キットあたり測定可能なサンプル数を教えてください。
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A
サンプルの測定をそれぞれn=3で行った場合、最大31サンプルを測定可能です。
ただし、培地の異なるサンプルがある場合は、培地ごとにブランクの測定が必要となります。
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Q
ブランクが高いのですが問題ないですか?
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A
試薬の特性により、アポトーシスを誘導していないコントロールと比較してブランクが同じくらいの蛍光強度となる場合があります。
試薬に問題はありませんので、取扱説明書に記載の通りブランクの蛍光強度を差し引いて算出してください。
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Q
サンプル間の蛍光強度差が小さいのですが、何を確認したらいいですか?
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A
以下2点をご確認ください。
1.細胞数
細胞数によって蛍光強度差が異なることが確認されております。
1-5 × 104 cells/wellを目安に細胞数をご検討ください。細胞数(×104 cells/well) 0.3125 0.625 1.25 2.5 5.0 S/N ー 3.9 3.0 2.2 1.7 2.薬剤処理時間
細胞種ごとにホスファチジルセリンが陽性となるまでに必要な薬剤処理時間が異なっております。
最適な薬剤処理時間をご検討ください。
取扱条件
保存条件 : 冷蔵, 取扱条件 : 窒素置換, 吸湿注意, 毒劇物 : 医薬用外毒物 |